Q. 従来から取引のあったお客様が重大な契約違反をしていたことが発覚したので、契約に定められた違約金を請求したところ、それに対してお客様から「この違約金の定めは消費者契約法に反しているから無効だ!!」と反論をされてしまいました。お客様は当時ご納得の上で契約を結ばれていたのですが…。本当に無効になってしまうのでしょうか??
A. 契約の内容によっては、消費者契約法などの各種規制によって無効となるおそれがあります。無効な条項が入った契約書のひな形を使用し続けるとトラブルが拡大することになりますので、早急に契約内容の有効性を確認する必要があります。
1.消費者契約法とは??
消費者契約法は、消費者の利益を守る法律です。
当然、その内容は消費者に有利な内容になっています。消費者に有利な法律というと聞こえはよいですが、裏を返せば、消費者と取引する事業者にとっては不利な法律といえます。
消費者契約法には、契約を取り消したり、無効にする規制が多いので、規制を知らずに契約をすると、後になって思わぬ損害を被ることがあります。
2. 消費者契約法はどのような場合に適用があるのか??
消費者契約法は、「消費者」と「事業者」との間の契約を規制する法律です。
ここでいう「消費者」とは、「事業と関係なく契約をする個人」をいいます。
他方、「事業者」とは、「法人その他の団体」及び「事業として又は事業のためにその契約をする個人」をいいます。
要するに、こちらが事業者で相手が個人といったよくあるケースの契約では、その相手が事業と関係なく契約を締結する場合に、消費者契約法の適用があることになります。
結局、消費者契約法の適用の有無については、相手である個人が事業目的で契約をしているのか否かで結論が分かれることになりますが、その判断は容易ではありません。
事業目的の有無は、一律に判断できず、扱う商品の内容や契約の名義、当事者の知識の格差や取引の経緯などの様々な事情を考慮して判断されることになります。
3.消費者と取引する際にはどのようなことに気を付けなければならないのか??
まずは、当然ながら、契約締結に当たり説明義務をきちんと果たす必要があります。
消費者契約法は、消費者の取引に関する知識や交渉能力の欠如を補うために、事業者の説明義務を定めています。
この義務に違反したからといって消費者契約法上直ちに刑罰があるわけではありませんが、①重要な事実について虚偽を述べたり、②将来の不確実な事項について安易に確実であるかのように決めつけたり、③消費者にとってのメリットばかり述べてデメリットを述べないようなことをすると、場合によっては、後日その契約が取り消されることがあります。
ここで怖いのは、きちんと説明したにもかかわらず、後からそんな話聞いていないと言われてしまうことがよくあることです。
対策としては、重要な説明内容についてはあらかじめ書面にまとめ、契約の際にその書面を用いて説明し、最後にお客様から説明を受けた旨のサインを頂くとよいと思います(業種によっては、このような扱い自体が法律上義務付けられていることもありますのでご注意ください。)。
次に、契約内容についてですが、消費者契約法は、債務不履行があった場合に事業者の責任等を全部免除する条項や高額な違約金を定める条項など、消費者にとって極めて不利な条項を無効とする定めを置いています。
日々の業務の中で契約書のひな形を使用している場合は、後日相手から無効だと言われかねない契約がどんどん増えていくことになりかねませんので、一度きちんと契約書をチェックしておくべきでしょう。
4. 最後に
今回取り扱った消費者契約法は、消費者と事業者との取引を規制する法律のひとつに過ぎず、他にも業種や取引の態様に応じた多種多様な規制があります。
会社の設立当初は法律上許されたことでも、その後の法律の改正によって許されなくなってしまうこともよくあります。
消費者契約法だけではなく、自分の事業に関わる取引の規制法についても、その内容を今一度確認されることをお勧めします。
5. まとめ
- 消費者契約法の内容を理解していないと、思わぬところで契約が取り消されたり、無効とされたりする可能性がある。
- 契約の際には、お客様に対して重要なことをきちんと伝えるだけではなく、伝えたことが証拠に残るような工夫をする必要がある。
- 消費者契約法以外にも様々な規制があることから、規制の内容や改正の有無については、専門家への相談も含め、きちんとした対策をとる必要がある。
(監修者:弁護士 三井伸容)