こんにちは!! よつば総合法律事務所の根來です。

弊所は以前から比較的多くの労働事件(会社と従業員の方との間のお仕事に関するトラブル)を常時扱っております。

そこで、今日は、労働時間についてお話しさせて頂こうと思います。ご参考になれば幸いです。


大手広告代理店の過労自殺事件をきっかけに、労働時間についてますます議論がなされています。また、従業員を抱える経営者の方にとって、従業員の労働時間管理は悩ましい問題であるかと思います。

そもそも、労働時間は法律上どうなっているのでしょうか。労働時間について、改めて確認をしてみたいと思います。

1. そもそも労働時間とは?

「労働時間」とはなんでしょうか。「働いている時間でしょ」と、お思いになるかもしれません。労働基準法に定義は置かれていないのですが、判例上「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」とされています(最判平成12・3・9民集54巻3号801頁)。「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」に該当するか否かは、客観的に判断されます。よって、就業規則などで労働時間外に行うように決められている作業であったとしても、客観的に指揮命令下に置かれているのであれば、労働時間と評価されることになります。

では、日々の予算や事務連絡などがなされる朝礼が始業前に行われている場合、労働時間に該当するのでしょうか。朝礼は、使用者から参加を命じられ、業務の準備行為として参加することが必要とされているので、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」であるといえます。よって、労働時間に該当するということとなります。

なお、他に問題となるのは、作業服の着脱時間、更衣室からの移動時間、準備体操の時間等です。

2. 労働時間に制限はある?

労働基準法32条1項が、1週間に40時間、1日に8時間という労働時間を定めています。
1日8時間という労働基準法の規定を見て、「残業ってどうなっているの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

残業(時間外労働)については、労働基準法36条1項が規定しています。いわゆる三六協定を締結することで、残業をさせることができるようになります(厳密には、法律に違反することがなくなるだけで、残業を命ずるには労働契約上の根拠が必要です)。

三六協定として定める内容は、残業をさせる必要があることの具体的事由、業務の種類等です(労働基準法施行規則16条1項)。

3. 休憩時間はどうなっている?

すると、「お昼休みや夕方の休み時間は、どういう扱いになるんだろう?」と思われた方もいるかもしれません。

休憩時間については、労働基準法34条1項が規定しています。労働時間が、6時間を超える場合に45分以上、8時間を超える場合に1時間以上の休憩時間を与えなければなりません。

例えば、9時15分始業、18時終業であれば、労働時間8時間、休憩時間45分となります。労働時間が8時間であれば、「8時間を超えていない」ためです。ただし、残業をしてしまうと、「8時間を超えている」ため、1時間の休憩が必要になります。

また、労働基準法上、分割して与えることは制限されていません。お昼に50分、夕方に10分という休憩にすることも可能です。

では、「今日お昼休みを全然取れなかったので、休憩時間の分だけ早く帰っていいでしょうか?」なんてこともあるかもしれません。しかし労働基準法は、休憩時間は労働時間の途中であることを要求しています。よって、法律上は認められないということになります。

4. 休憩時間と認められるためには?

仕事の指示さえしなければ、休憩時間と認められるのでしょうか。

労働基準法34条3項は、休憩時間の自由利用の原則を定めています。休憩時間と認められるためには、休息のために労働から完全に解放されることが必要なのです。

では、店内で休憩することを求められ、お客様が来店された際には即座に対応しなければならないような場合、休憩時間と認められるでしょうか。かような時間は、現実に作業に従事していなくても、実質的に作業と作業の間の待機時間です。休息のために労働から完全に解放されておらず、休憩時間とは認められないこととなります。

5. 最後に

労働基準法など、労働について規定する法律は、1つ1つの条文にたくさんの言葉が並んでおり、条文を読んでみてもなかなか分かりづらいかもしれません。分からないことがあれば、お気軽に弁護士までご相談をいただければと思います。

(文責:弁護士 根來真一郎

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