こんにちは!!弁護士の三井です。

このコーナーは、産業カウンセラーの皆様が押さえておくべき法律問題を、分かり易く解説する(ことを目標にしている)コーナーです。皆様の業務に少しでもお役に立てれば幸いです。

さて今回は「管理職によるセクハラに会社はどう対応すべきか!?~近時の重要判例のご紹介~」について取り上げます。

皆様のお仕事の中でいわゆる「ハラスメント」の問題が絡むことも比較的多いかと思います。

そのため、今年度、東関東支部の皆様を対象としたハラスメントの法律知識に関する研修講座が開講予定です(実は私が講師を担当させて頂きます!)。

ハラスメントの代表格と言えば「セクハラ」ですが、実は昨年重要な最高裁の判決が出ましたので、事案と判断のポイントを今回ご紹介します。

事件の概要

某有名水族館運営会社で事件は起きました。同社は、従業員や来館者に多くの女性がいたため、セクハラ防止策に力を入れており、全従業員対象のセクハラ防止研修を毎年行ったり、セクハラ禁止文書を従業員に周知徹底するなどしていました。

そんな中、ある管理職従業員が特定の女性従業員に対してセクハラ発言(露骨で卑猥な発言、女性への侮辱や揶揄等)を執拗に繰り返す事件が起きました。

事態を重く見た同社がこの管理職従業員に出勤停止の懲戒処分などをしたところ、その処分が不服であるとして裁判で争われたのが本件です。

裁判所の判断とポイント

結論として、裁判所は処分を有効としました。

その理由の中で、①被害者心理からすれば、被害女性がセクハラ発言に明確な拒否の姿勢を示さなかったことを加害者従業員側に有利な事情とするべきでないと明言しています。

この被害者心理はよく知られるところですが、最高裁があえてこの点を明言したことで、今後この考え方がより浸透していくことになると思います。

また、②今までの裁判でセクハラに対する厳しい懲戒処分が有効とされてきたのは身体接触を伴う事案ばかりだったのですが、今回は発言のみのセクハラに対し、出勤停止という比較的重い懲戒処分を認めた点も重要です。

ここでは、本件において、ひどい発言内容のセクハラが1年余も繰り返されたことや、会社がセクハラ防止策を積極的に行っていたにも関わらず管理職の立場の人間がセクハラを行ったことなどが重視されています。

まとめ

この判決が出たことで、セクハラ対策を十分に行っている会社が加害者に厳しい処分をしやすくなったと思います。

また、近時はセクハラを認識しながら適切な対応をとらない会社が被害者から法的責任を追及されるケースも増えてきております。

このような社会の流れの中で、今後は、法廷の場に持ち込まれずとも、社内でセクハラへの適切な対応が行われるようになることが期待されます。

(監修者:弁護士 三井伸容

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