よつば総合法律事務所の弁護士の辻です。
労災は、労働者の過失割合にかかわりなく給付がされるなど労働者にとってメリットが大きい制度です。
労働者の通勤中の交通事故でも労災を使える可能性があります。
そこで、今回は、通勤災害として労災の対象となる範囲について解説していきたいと思います。
労働者災害補償保険法のルール
通勤と一言で言っても、出勤のための通勤、退勤して帰宅するための通勤、通勤途中で買い物や飲食をするケースなど様々あるかと思います。
労災の補償のルールを定める労働者災害補償保険法では、基本的には、通勤として3つの場面を想定しています。
- 住居と就業の場所との間の往復
- 就業の場所から他の就業の場所への移動
例:掛け持ち勤務をしている労働者が1つ目の就業場所での勤務終了後に2つ目の就業場所へ向かう場合の移動 - ①の往復に先行し、又は後続する住居間の移動
例:単身赴任をしている労働者が、就業日の当日又は前日に、帰省先住居から赴任先住居へ移動する場合
住居と就業の場所との間の単純な往復以外も労災の通勤災害に該当する可能性があるということです。意外と通勤の範囲が広いなと思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
では、退勤後に、帰宅途中でお店によって買い物をした場合、その後の帰宅経路も通勤災害として労災の対象となるのでしょうか。
労働者災害補償保険法のルールでは以下のように規定されています(法7条3項)。
労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、…通勤としない。
ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。
つまり、経路の逸脱または中断があると、その後の災害に関しては原則として通勤災害には該当しないということになります。
しかし、「ただし」以降で例外も定められています。たとえば、日用品の購入その他これに準ずる行為は、逸脱・中断の例外となる行為とされています。
先ほどの例(帰宅途中でお店によって買い物をした場合)では、どのような目的の買い物だったかも踏まえて総合的に通勤災害に該当するかが判断されることになるかと思います。
労災に該当するのか悩まれた場合はぜひ一度弁護士にご相談いただければと思います。
(監修者:弁護士 辻悠祐)