
Q. 先日、就業規則を作成していても従業員に周知しないと、就業規則の効力は発生しないよと言われました。
当社では、就業規則は棚にしまっていて特に従業員はその存在も知らないと思いますが、どうすればよいのでしょうか?
A. 就業規則には、賃金や労働時間、人事·服務規律などの従業員に対するルールや基準が記載されます。
そして、例えば、従業員に不祥事があったため懲戒処分をしようとしても、就業規則が周知されていなかった場合には、就業規則に基づく懲戒処分の効力が生じないおそれがあります。
そのため、就業規則は従業員が見ることのできる場所に備え付けるなど適切に周知する必要があります。
1 就業規則の内容とその意義
(1)就業規則は、従業員が常時10名以上の職場で作成し、所轄労働基準監督署長に届け出る義務があります。
そして、就業規則には従業員の賃金や待遇、勤務時間、休憩、休職、退職、服務規律、定年などの事項が記載されます。
また、就業規則は、作成時だけでなく変更時にも、労働基準監督署への届け出が必要です。
これらの規定に違反した場合は、30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。
(2)就業規則で従業員の賃金や勤務時間等の労働者の労働条件や待遇の基準を明確に定めることで、労使間のルールが明確になります。
そして、万が一トラブルが起こったときも就業規則に基づき解決していくことが可能となります。
また、ルールが整備されトラブル発生が予防されることで、良好な職場環境が維持され、優秀な人材が退職していくことの防止にもつながります。
(3)また、従業員の不祥事があった際に、会社が懲戒処分を行うためには、就業規則に懲戒事由を定めておく必要があります。
就業規則が整備されていないと、適切な懲戒処分を行うことが困難となります。
そして、懲戒処分の規定があることで、不祥事の抑止効果にもつながります。
(4)さらに、近年は多様な働き方の意識が高まっていることもあり、副業を希望する従業員もいます。
個人は自由に職業を選択できる権利を持ちますので副業を行うことは法律に違反しません。
しかし、副業により長時間労働となり、本業の業務に支障が出てしまっては本末転倒です。
就業規則で規定することで、一定の場合従業員の副業を禁止することが可能となります。

2 就業規則の周知
就業規則は作成するだけではなく、従業員に周知する必要があります。
具体的には常時各作業場の見やすい場所へ掲示、又は備え付けること、書面を労働者に交付すること等で適切に周知することが必要となります。
もし、従業員に周知していなかった場合は、就業規則に基づき従業員に対して懲戒処分等をすることができなくなってしまいます。
3 個別労働契約を締結する際の注意
個別の従業員と労働契約を結ぶ際には、就業規則よりも従業員に不利な条項は原則として無効となります。
そのため、個別の従業員の労働契約を締結する際には就業規則を確認した上で内容を決めていく必要があります。
4 就業規則の変更
就業規則は、事業環境の変化や法改正にあわせて変更していくべきです。
特に会社の実態にあっていない就業規則は変更する必要性が高いです。
就業規則の変更のためには、その就業規則を適用する事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことが必要となります。
そして、この意見を聴く過半数を代表する者の選定については、その代表者を会社が指名することはできず、立候補等によるものでないと要件を満たさず変更が無効となるおそれもありますので注意が必要です。
また、賃金水準を下げる等、従業員に不利益となる内容に変更する場合には、原則として各従業員の同意が必要となり、合理的な理由が認められるような特別な場合でない限り、原則として一方的な変更は認められないことにも注意が必要です。
5 まとめ
このように、企業にとって、就業規則をきちんと整備し、適宜見直していくことは有益です。
トラブル防止という観点だけでなく、良好な職場環境を維持することで、労使双方にとって働きやすく人が集まる職場を作っていくことが重要です。
(監修者:弁護士 小林義和)






