Q. 会社と解雇した元社員との間でちょっとしたトラブルがあったのですが、先日、突然その元社員から残業代を請求する労働審判というものを申し立てられてしまい、裁判所から書類が届きました。いったいどういう対応をしたらよいのでしょうか。

A. 労働審判の場合は、通常の訴訟の場合よりも早急に準備をする必要がありますので、弁護士に急いで相談することをお勧めします。

1. 労働審判とは??

労働審判とは、平成18年に始まった比較的新しい制度です。労働審判官(裁判官)1名と労働関係の専門的知識を有する労働審判員(民間人)2名の合計3名により手続きが行われます。

そこでは、まず、当事者が提出した書面や証拠、審理中になされた質問をもとに事件が審理されます。

次に、その結果を踏まえて調停(話し合いによる解決)が試みられることとなります。調停が成立すれば、そこで手続きが終わりますが、調停が成立しそうにない場合には、最終的に審判が下されることになります。

審判には法的拘束力がありますので、従業員は、それをもとに差押え等の強制執行をすることもできます。

労働審判の結果に不服がある場合には、当事者は、異議を申立てることができ、その場合は、事件が通常の訴訟に移行することになります。

2. 労働審判の件数が増加しています!!

労働審判は、特別の事情がない限り、3回の期日で終了することから、訴訟と比べ、比較的短期間(全国平均で70日)で事件を終えることができますし、裁判所の費用も訴訟と比べ低額です(ただし、弁護士を頼んだ場合には別途弁護士費用が掛かります)。

また、申し立られた事件の約7割が調停で終結することから、話し合いによって両者が納得できる解決ができる可能性も高いです。

さらに、労働審判では、通常の訴訟のように市民に傍聴されることもありません。

このように労働審判は、通常の訴訟と比べ、時間・費用・労力等が低コストで済み、かつ利便性の高い柔軟な制度といえるため、近時申立て件数が増加しています。

3. 労働審判を申し立てられたら

労働審判は、申し立てから比較的早い期間(申立て後40日以内)で期日が指定され、その期日は原則変更不可能です。ただし、裁判所から書類が届いた後5日以内に連絡をすれば日程の変更が可能なこともあります。

また、事案解明のための審理は、基本的に第1回期日で終了し、第2回以降は、調停成立に向けての手続きが行われることになりますから、第1回期日までに自らの主張とそれを裏付ける証拠を一括して提出する必要があります。

労働審判にはこのような特徴があるため、申し立てられた側としては、通常の訴訟以上に早急な対応が必要となります。1回目の期日までに会社側で言いたいことは全て主張することが必要です。

そのため、労働審判は専門家の協力を受ける必要性が高いといえます(現に東京地裁では、申立て件数のうち、申立人と相手方双方に代理人(弁護士)がついている事件が72パーセントに上ります)。

4. まとめ

  1. 労働審判は、訴訟とは異なる簡易迅速な紛争解決手段である。
  2. 労働審判は、近年、申立て件数も多いことから、自分の会社がある日突然申し立てられる可能性も否定できない。
  3. 労働審判を申し立てられたら、弁護士に相談し、早急に適切な対応をとる必要がある。特に、書類が裁判所から届いたらすぐに弁護士に相談する必要がある。

(監修者:弁護士 三井伸容

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