法人は、日々様々な活動をしていますが、経営においては様々なリスクがあります。
今回はそのようなリスクの中でも、主なものについて概括的に触れてみたいと思います。
1. 売掛金・貸付金等の回収リスク
例えば、販売先が倒産した。お金を貸したが、何度連絡をしてもごまかされ最後には連絡がとれなくなった。契約を解除したいが残売掛金や違約金を相手が払ってくれない。
このような場合には、明確な証拠がなかったり、そもそも相手に資力がないことも多く、このような事態になってからでは回収が困難な場合が多いです。
そのような事態の発生を防ぐためには、新規取引であれば相手の資力等について十分精査したり、保証金等の担保をあらかじめ入れてもらう。後に紛争が生じないように契約書等の書面を作成して、明確に取引内容を決めておき証拠化するといった予防策が考えられます。
2. お客様からのクレームのリスク
お客様からのクレームについては、商品やサービス等の内容そのものについてのクレーム以外では、問題発生後の法人側の対応(特に初期対応)がよくなかったためにクレーム化したということもあるかと思います。
クレームへの対応を誤れば、ネット等も発達している近年では、経営上の非常に大きなリスクになりうる半面、きちんとした対応ができれば、むしろ業務改善の機会になったり、逆に評判があがることさえもあるかと思います。
そのためにも、法人の経営者のみが対応できるといった体制では不十分で、従業員の方でも適切な対応がとれるように、日ごろから情報の共有化や記録化の体制を作り、問題発生時の対応方法等を事前に決めておくことがまずは大事かと思います。
3. 労務リスク
近時は、残業代・解雇の問題だけでなく、パワハラ・セクハラ・モラハラ等が問題になることもあります。
法人内で、このようなことが問題となると、金銭面や時間面で重い負担となるだけでなく、他の従業員の士気や職場の雰囲気への悪影響も懸念されます。
この問題は、すぐにどうにかできる問題ではないかと思いますが、問題の兆候があるときはなるべく早めの対応をすることができるように法人内で相談体制等を整えるといった方法や、採用時においてそのようなリスクがありそうな人材かどうかといった視点からも検討されるとよいかと思います。
4. 事業承継リスク
例えば、株式会社においてすべての株式を保有しているオーナーが突然死亡して相続が発生してしまった。その場合、相続人間でもめてしまうと、争いのある相続人の間で株式が分散してしまい、会社としての意思決定ができず経営が立ちいかなくなるといったリスクが考えられます。
このようなことにならないためにも、日ごろから株式については可能な限り分散させず、後継者が決まっているのであれば、遺留分には配慮しつつ、生前の譲渡や遺言等を作成しておくといった対応策が考えられます。
このように、法人の経営においては様々なリスクが存在します。そして、これらのリスクは実際に顕在化してしまうと、法人経営にとってその経営を揺るがすようなものにもなる可能性があり、また、人的・物的・金銭的にも重い負担となるおそれがあります。
そのため、日ごろから予防しておくことがリスクを下げる意味で特に大事だと思います。
そして、そのためには経営者の方だけがそのような意識をもつだけでは不十分で、法人で働かれている方全員が同様の意識をもつことが大事かと思います。
(監修者:弁護士 小林義和)