こんにちは!! よつば総合法律事務所の根來です。

弊所は以前から比較的多くの労働事件(会社と従業員の方との間のお仕事に関するトラブル)を常時扱っております。

そこで、今日は、「レジ担当者の給料減額」についてお話しさせて頂こうと思います。ご参考になれば幸いです。


クリスマスケーキやおせちの買取ノルマが話題になる今日この頃、社員の仕事に関する悩みは尽きません。今日は、レジ閉めを行ったところ、金額が合わなかったレジ担当のAさんの悩みを見てみましょう。

「今日は、1日中レジ担当の日。私くらい慣れたレジなら、年末の繁忙期でも余裕しゃくしゃくでレジを回してあげましょう。現金、クレジットカード、電子マネーなんでも来い。」ということで、一日レジを切り盛りし、絶対の自信を持って最後にレジの過不足をチェックしたら…、「よし、クレジットカードの控えOK!!現金は、…あれ…、2万5616円も現金が足りない…、どうしよう…」。

どんなにレジ周りを探しても2万5616円などという大金は見つかるはずもなく、とにもかくにもマネージャーに謝りました。しかし、マネージャーは烈火のごとき怒り狂い、「今日は、お前の他にこのレジは使っていない!現金が足りない原因はお前だ!足りない分、給料から差っ引くぞ!!」と給料減額を言い渡されてしまいました。

2万5616円なんて控除されたらとても今月の生活がピンチになるAさん。このような給料の減額は認められるのでしょうか。

1. 労働基準法24条1項

賃金の支払いについて定める労働基準法24条1項は、「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」と定めています。「賃金全額払いの原則」と呼ばれています。

このような法律が規定された理由について判例は、「生活の基盤たる賃金を労働者に確実に受領させることが全額払の原則の趣旨である」と説明しています。
よって、レジの不足金を給料から減額することは、賃金を勝手に控除することとなり、賃金全額払いの原則を定めた労働基準法24条1項に違反することとなります。よって、このような給料の減額は認められません。

2. 判例では

判例としては、関西精機事件において、「使用者は、労働者の賃金債権に対しては、損害賠償権をもつて相殺することも許されない。」(最判昭和31・11・2民集10巻11号1413頁)と判示されています。

また、日本勧業経済会事件について、「労働者の賃金債権に対しては、使用者は、労働者に対して有する不法行為を原因とする債権をもつても相殺することは許されない。」(最判昭和36・5・31民集15巻5号1482頁)とも判示されています。

よって、最高裁判所は、使用者が損害賠償請求権を有していた場合についても、相殺も控除の一種として禁止されることを示しています。

3. 源泉徴収について

ここまで読んで来られた方の中で、「あれ、源泉徴収って、給料から勝手に控除されてない?これって、その給料全額払いの原則に違反するんじゃない?」と思われた鋭い方もいらっしゃるかもしれません。

労働基準法24条1項但し書きは、「法令に別段の定めがある場合…においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。」と定められています。よって、例外的に賃金から控除できる場合を、労働基準法24条1項但し書きは認めているのです。

具体的には、給与所得税の源泉徴収だけでなく、社会保険料の控除、財形貯蓄金の控除等も該当することとなります。

4. 最後に

本件のAさんのように、ミスが金額として明らかになってしまうケースにおいては、本件のマネージャーの立場の方であったら、「給料から控除」ということが頭に浮かんでしまうかもしれません。しかし、法律で「賃金全額払いの原則」として明確に禁止されています。

レジの計算が合わなかったことは、確かにAさんにミスがあったかもしれません。しかし、ミスは、職場の全員で防ぐべきものです。マネージャーはミスが発生しないように現金を自動計算できるレジを導入したり、大きなお札を扱う際はマネージャーがチェックするなどの対策をとることができました。にもかかわらず、Aさんを雇って利益をあげているにもかかわらず、失敗した場合だけ責任を追及することは認められません。

労働法においては、このように細かくいろいろなことが定められています。困ったことや分からないことがあれば、お気軽に弁護士までご相談をいただければと思います。

(文責:弁護士 根來真一郎