Q. 知り合いから、ある会社が黒字倒産したと聞きました。赤字続きの会社が倒産するのはわかりますが、黒字でも倒産するとはどういうことなのでしょうか?また、黒字でも倒産するといった事態を避けるためには、どのような対策をとればよいのでしょうか?
A. 黒字倒産とは、損益計算書上は黒字でも、手元資金がないために支払ができず倒産してしまうことです。
売掛金回収の管理を含めて、入金・出金の見通しをきちんとたてることにより回避できます。
1. 黒字倒産とは
黒字倒産とは、利益が出ていても資金繰りがうまくいかず、支払いが滞り倒産してしまうことです。倒産する会社のうち相当数が黒字倒産であるといわれています。
例えば、500万円で仕入れた商品を800万円で売却したため、利益として300万出ました。そのため、損益計算書上は黒字となっています。
しかし、その売掛金800万円について取引先から支払がありませんでした。
その後、仕入代金500万円の支払手形の期限が到来してしまいましたが、資金がないため支払いができず、支払手形が不渡りとなってしまうという事態が生じてしまいます。
以下、このような黒字倒産を避けるための主な対策をみていきます。
2. 月毎の売掛金の管理
黒字倒産の典型例は、売掛金の回収が滞ることです。 売掛金の支払がなくても、仕入の支払、固定費の支払、税金の支払等の期限は来てしまいます。
期限に支払うことができないと、手形が不渡りとなったり、取引銀行の預金差押えをされ、預金凍結や融資がとまってしまうこととなります。
そのため、売掛金の一覧表を作り回収の状況を毎月こまめにチェックすることが有用です。また、入金の有無だけでなく、金額についても相違がないかどうか確認して、相違があれば早めに取引先に確認する必要があります。
そして、取引先の入金が遅れがちとなったり、少ない金額の入金しかしてこないようになった場合は、今後その取引先とは、取引額を下げたり、現金取引に切り替える等の対応策を検討する必要も出てきます。
3. 毎月の資金繰り表の作成
決算時だけではなく、毎月、収入・支出の収支をつけておくことも有用です。特に、どんぶり勘定ではなく可能な限り細かくつけるようにしておくことがポイントです。
どんぶり勘定だと、出金したのに計上漏れしていて手元資金が実際には少なかったという事態が生じたり、固定費や売上原価が想定以上にかさんだりすると資金ショートが起きてしまう可能性も高まります。
また、固定資産を購入する際、利息の支払い等を避けるため借り入れをせずに手元資金で購入した結果、支出の予測が甘く手元資金がショートしてしまうといったことも考えられます(このような場合、税務上費用となるのは減価償却費のみであり利益はあまり減らないため黒字となりますが、法人税額もそこまで減らず納税資金がショートしてしまう可能性もでてきます)。
毎月の資金繰り表をつけていると、このような不用意な出金による資金ショートも未然に防げる可能性が上がります。
4. まとめ
上記対策以外にも、新規に取引をする際の与信調査をしっかり行うことや、月次決算を行い試算表の提出を即時にできる状態にしておく等日々の金融機関との付き合いを良好なものとすることでいつでも借り入れをすることができるような関係を構築しておく等の対策も考えられます。
また、仕入れ代金の支払は先延ばしにして、売上金はできるだけ早く回収する仕組みを作るといったことも有用です。
このような対策を行うことで、事業自体はうまくいっているのに資金繰りに失敗して倒産するといった事態を防げるだけでなく、経営者の方においても資金繰りのために膨大な時間を割かれることなく、企業競争力を高めるための経営に注力し、適格な投資をするための時間を作ることができることにもつながるかと思います。
(監修者:弁護士 小林義和)