こんにちは!! 弁護士の三井です。
弊所は以前から比較的多くの労働事件(会社と従業員の方との間のお仕事に関するトラブル)を常時扱っております。
そこで、今日は、本当に怖い、労災トラブルのリアルな話についてお話しさせて頂こうと思います。ご参考になれば幸いです。
弊所では、労災事故による損害賠償トラブルについて、従業員側・会社側双方からのご依頼を取り扱っているのですが、最近業務の中で、つくづく、労災の上乗せ保険の必要性を感じることが多いです。
このような保険は、従来、労災が多い一部の業種の方が加入されるイメージが強かったのですが、近年の傾向からすると、脳心臓疾患や精神疾患の労災にも備える必要があり、必ずしも事故が多いとは限らない企業も加入を検討しなければいけないと思われます。
今回は、近時の労災に関するトラブルのお話を通して、皆様が労災上乗せ保険をお客様にご提案する際に少しでもお役にたちそうな情報を提供させて頂きたいと考えております。
1. 労災トラブルの増加とその要因
世間でよく言われているように、ここ十数年の労災の申請・支給決定(=認定)件数の推移をみると、脳心臓疾患、精神疾患共に十数年前とは比べものにならないほど増加傾向です。
例えば、精神疾患の労災の申請・認定件数は、以下のように推移しています。
このような状況からすると、長時間労働等の問題が避けられないままの会社にとって、脳心臓疾患や精神疾患の労災が他人事とは言い切れないといえそうです(結果的に労災認定されなかったとしても、申請があるだけで会社は様々な対応を迫られることが多いです)。
このような状態になった背景としては、①会社と従業員との力関係の変化や、②弁護士増員やインターネットの普及による法律知識・弁護士へのアクセスの容易化などが挙げられると思います。現在の社会情勢からすると、このような傾向は今後も続くものと思われます。
2. 労災トラブルがなぜ怖いか、そしてなぜこじれるのか?
ひとたび死亡や重度の後遺障害を残すような重大な労災事故が起きれば、被害者・遺族対応や労働基準監督署からの調査対応に追われることになります。この際の会社代表者、担当社員、被害者の上司・同僚などの時間的、経済的、精神的負担は計り知れません。
典型的な現場などでの労災事故の場合と比べ、脳心臓疾患や精神疾患の労災の場合「そもそも労災かどうか」というところの判断が確定するのに時間がかかることも多く、また会社への損害賠償請求の裁判も複雑で審理が長期化しやすいため、最終的な解決までかなりの時間を要することがあります。高額の損害賠償が想定されるケースも多いのですが、保険に入っていないと、この長期間、会社代表者は「下手したら会社がつぶれるかもしれない。」というプレッシャーを常に感じながら労災のトラブル対応や会社経営をしなければならなくなります。
また、事案によっては、被害者の直属の上司や会社の役員などが裁判の相手方に加えられることもあり、会社の資力が十分でない場合の個人負担のリスクもあります。
さらに、労災での加害者側と被害者側の責任の度合いの判断も、交通事故の「過失割合」までは整理されていないため、予測が立てづらく、それもこじれる要因となっています。
3. 必要な保険とは?
まずは、万が一、労災に関する会社の責任が認められた場合にも、その損害賠償責任をカバーできる保険が必要です。トラブルの解決に当たる弁護士費用も高額になり得ますので、その分もきちんと補償されるものが良いでしょう。
また、最近は、労災の認定を待たずに一定の金額を支払う保険や、労災の認定がされるだけである程度の保険金が支払われる保険もあります。このような保険はお勧めです。
というのも、私自身、労災トラブルの対応の中で、保険がなく、会社に資力もないばかりに十分な補償を会社側が提示できずこじれてしまうケースを経験しているのですが、このような保険で比較的早期の段階でまとまった補償を提案できると、本格的な紛争まで至らずに解決できることがあると思うからです。
4. 最後に
私自身、労災トラブルのご依頼を受ける度に、会社側の立場で見ても、被害者や遺族側の立場で見ても、いずれにせよ労災上積み保険の加入の必要性を強く感じています(皆様と一緒に社長を説得しに回りたいくらいです)。そのような事情をご理解頂き、是非皆様からお客様に積極的にご提案頂けると幸いです。
(文責:弁護士 三井伸容)