Q. 取引先の会社が立て続けに倒産してしまいました。取引先の倒産で売掛金の回収ができないことから、この先、わが社でも資金ショートが生じてしまうかもしれません。今から何か対策をとっておくべきでしょうか。
A. 早いうちから倒産の可能性までも視野に入れて、適切な時期に適切な手続きをとる必要があります。対策が後手に回り、その場しのぎの対処をするのはよくありません。少しでも困ったことがあれば、一人で思いつめるのではなく、早め早めに弁護士等の専門家に相談すべきだと思います。
1. 早めの相談であれば選択肢が多い
企業の倒産には、再建型と清算型があります。銀行などの債権者から支援を受けながら事業を継続していく再建型の場合、会社の状態を十分に検討したうえで方針を決定し、金融機関や主要取引先に対する根回しをするなど、様々な作業を行うため、時間が必要となります。
そのため、事業を継続すべき企業であっても、対処が遅れれば、全従業員を解雇し、全財産を換価して弁済に充てるという清算型の倒産処理をせざるを得ない状況に追い込まれる危険性があります。
たとえば、一部の債権者に分割払いに応じてもらうことで、事業継続可能であることもあります。ご相談の時期が早ければ早いほど、対応策の選択肢が広がり、時期を見計らった適切な処理が望めます。
2. 倒産手続きに要する資金の確保
事業者の場合、倒産手続きをするためには、裁判所に納める印紙代や弁護士費用等、お金がかかります。裁判所に納める予納金だけでも、事業の規模に応じて数十万円から数百万円かかります。
事業者の場合、事業が立ち行かなくなってしまったが、お金がなくて破産もできないという場合が考えられます。破産もできずに取立てを受け続けるという悲惨な状況には陥らないようにしなければなりません。
そのためには、資金繰りが厳しい状態に陥る前から、弁護士に相談し、破産を防ぐ方法や、破産する場合にかかる費用の見込み、どのような場合に事業の継続を断念するか等について打ち合わせて準備をしておくべきです。
経営者が、会社の存続を第一に考え、資金が少しでもあれば事業継続のために資金を使い果たした結果、いざ手元の資金がすっからかんになってから弁護士等の専門家に相談するのでは遅いのです。
3. 損害を最小限に抑える
返済の見通しが立たない借入れを続けていれば、倒産処理手続きの障害となりえますし、倒産後のリスタートにも影響を与えかねません。無理を続ければ続けるほど、迷惑をかけてしまう取引先・人が増えます。
傷口が広がる前に、一人で抱え込まずに、まずは相談だけでもしてみるとよいと思います。
4. さいごに
三月末には中小企業金融円滑化法が終了することから、中小企業の資金繰りが悪化し、倒産数が増加することが心配されています。取引先の倒産、予定していた融資が得られない等、突然の出来事で自社が倒産の危機に陥る危険性がないとはいえません。
真面目な経営者の中には、会社の存続を第一に考えて、資金が全てなくなる最後の最後まで、頑張りすぎてしまう方がいます。
会社や従業員のことを想うことは大切です。しかし、真に会社や従業員のことを想うのなら、早めに弁護士等の専門家に相談しながら、適切なタイミングで適切な対応をする必要があることと思います。
(監修者:弁護士 今村公治)