こんにちは!! 弁護士の三井です。

突然ですが、今年はなんだかリクルートスーツを見かけないなぁと思いませんか? 実は、例年12月から解禁されていた新卒の就職活動が、2016年卒から3か月遅れることになったそうです。今後は、学生側も雇う側も、やや慌ただしいスケジュールの中での採用活動となる予感がします。

さて、就職活動といえば、いわゆる「内定」ですが、皆様は、この「内定」にどんな法律上の意味があるか調べてみたことはあるでしょうか?? 就職活動開始まで時間がある今、改めて「内定」について考えてみませんか?

1. 内定を出すときには慎重に!!

昨今、雇用情勢が変わっており、売り手市場になりつつある、なんて言われています。「最近、なかなか良い人が集まらない…。」なんて声も、経営者の方からよく聴きます。 人手不足で採用に苦戦した場合、思わずこんなことをしたくなるかもしれません。

「なかなか募集に人が集まらなくて、思わず応募してくれたAさんに内定を出してしまったけど、その後他にすごく良い人を採用できたし、よくよく考えるとやっぱりAさん採用したくなくなってきちゃったなぁ。よし。思い切って内定を取り消しちゃおう!」 

ちょっと待ってください!残念ながらそのようなことは簡単には許されません!!

単に「内定」といっても、様々な状態が考えられますが、一般的には、①入社誓約書の提出、②始業日入りの採用通知書の交付などをした段階で、始業日前であっても、既に一種の労働契約が成立したものと評価されてしまう可能性があります(もちろん、様々な事情により結論は異なり得ますので、具体的なケースについては、必ず専門家にご相談ください。)。

そして、一度そのような評価を受けてしまえば、解雇の場合にやや近い、法律上の厳しい制限を受けることになってしまいます。

そうなると、「新卒採用なのに大学を卒業できなかった」などといった事情があれば別ですが、「他にもっと良い人が採用できたから」なんて理由で内定を取り消すことは困難でしょう。

法律上許されないにもかかわらず、内定を取り消してしまうと、後日、給料相当額の請求や損害賠償の請求を受けるリスクがあります。一度行った内定を変更するなどの場合、会社が内定者に対して、個別に会社の状況等をきちんと説明するなどした上で、基本的には会社と内定者の双方が合意して問題を解決する必要があると思われます。

2. 内定辞退が許せない!!

今後加速する労働者側の売り手市場では、応募者が同時に複数の会社の選考に進むことも珍しくなく、優秀な応募者には内定が集中するのが当然です。そうすると、ときには採用選考の中で、内定を辞退されてしまうこともあるかもしれません。 そんなとき、思わず…

「せっかく内定を出したのに、他に内定が出たからといってわが社が蹴られてしまった。あいつを採用するのに時間もお金もたくさんかかっているのに許せん!!損害賠償だ!!」という気持ちにもなるかもしれません。

先ほど、状況によっては「内定」でも労働契約に近い状態になるという話をしました。 もっとも、労働者側に優しいのが日本の法律です。残念ながら、正社員として内定した応募者であっても、通常の場合、問題なく内定を辞退できてしまう可能性が高いです。

したがって、特別な場合でない限り、通常、内定辞退に対して法的責任を追及するのは難しいと思われます。

会社側としては、納得できない気持ちがあることは理解できますが、内定辞退を当然のリスクとし、①内定辞退の予防(内定者の就職活動の状況について情報を集めておく、定期的に応募者と連絡を取ってフォローするなど)や、②内定辞退された場合の対策(予備人員の確保等)をするほうがよいでしょう。

3. 最後に

「採用」というのは、事業にとって、非常に重要な問題です。 就職活動解禁が遅れている今のうちに、法的観点も含めた様々な視点で、改めて「採用活動」の見直しを行って頂けると幸いです。

(文責:弁護士 三井伸容)