Q. 当社は創業以来、あまり大きなトラブルもなくお客様に支えられて今日に至ります。そのため、契約書と言われても今まで信頼ベースでやってきましたのであまり意識していませんでした。契約書はきちんと作った方がよいとは思うのですが、なぜ契約書を作った方がよいのでしょうか?
A. 契約書を作る意義は様々なものがありますが、大きな意義としては、トラブルが生じた際に紛争化することを予防できることと、取引先と信頼関係をより構築しやすくなることにあると考えます。
1. トラブルの紛争化予防
契約書をきちんと作成していなかった場合、例えばトラブル発生時に以下のように紛争化するおそれがあります。
- 当初の工事に加えて複数の追加工事をしましたが代金を明確に決めていなかったため、きちんとした金額を支払ってもらえません
- 買主から当初説明した商品の性能よりも高い性能等を要求されて困っています
- 当方が想定していた業務範囲を超えた業務を行うよう要求されて困っています
- 商品に不具合がありましたが相手がきちんと対応してくれません
- 途中解約をしたいのですが高額な違約金を要求されており解約できません
- 法改正に対応しておらず契約書が無効となってしまう可能性があると言われました
このように取引先との間で、発生したトラブルが紛争化してしまいますと、金銭面・時間面だけでなく精神面でも大きな負担となります。多くのトラブルで、きちんと契約書を作成し契約内容を決めておけば、トラブルが紛争化することを防げることも多いです。
2. 取引先との信頼関係構築
契約を結ぶ際には、双方ともにできれば長期間良好な関係を維持し取引を継続していきたいと思うことも多いと思います。
他方で、取引中は様々なトラブルが発生する可能性があります。取引を始める際にきちんと契約書を作るということは、①取引中にどのようなトラブル発生が想定されるのかということをきちんと考え、②トラブルが発生した際にどのように対応するかということをきちんと決めておくことにつながります。
場合によっては、契約内容を詰めていく際に、今回の契約はいったん白紙にした方がよい場合も出てくるかもしれませんが、無理な取引を始めてしまい紛争化することを防ぐことにもなります。
契約当初にきちんと契約内容を話し合って決めておかないと、トラブルが発生した際には、双方がこんなはずではなかったとして不信感が高まっていくことにもなります。
一方、契約締結時にきちんとトラブル発生時のことも詰めておくと、トラブルが発生しても円滑にそのトラブルを解消できることで、その取引先との信頼関係は強まります。
このように、契約書をきちんと締結するということは、互いに信頼関係を高める効果も見込むことができます。
3. 契約書作成の視点
(1) 契約書には、取引が開始した後に想定されることを可能な限り具体的・網羅的に検討し協議を重ねて、その話し合った結果を文字にして契約書に入れていくことが重要です。また、曖昧な内容のままにしておくと後でトラブルが発生したときに疑義が生じ紛争化するおそれもあります。
たとえば、取引対象の仕事や商品の内容についてきちんと範囲が特定されているかどうか、代金が明確かどうか、取引中において過度に自社に責任が課されていないか、途中で解約する際に違約金が高すぎないか等、契約の内容をきちんと確認していくことが重要です。また、初めての取引先の場合や相手の信用に不安がある場合は、保証をとる等の交渉をすることも場合によっては有用です。
(2) 具体的な契約書作成順序については、まずは契約書の雛形を利用する形でも構わないと思いますので、とりあえずはいったん契約書を作ってみることが大事です。そして、取引を開始したときに想定されることを具体的に想像して頂き、その解決方法を盛り込んでいく形でどんどん修正・追加をしていってください。
最後に完成したものを、第三者に読んでもらい曖昧な点がないかどうか内容が明確かどうかをみてもらうとよいかと思います。
(3) また、取引の相手方が契約書を作成してきたときには、自社にとって不利な条項がないかどうかを慎重に検討すべきです。理由は、相手方が作成してきた契約書は、一般的には相手方に有利な内容となっていることが多いからです。
自社に不利な契約書の内容となっていた場合、後で契約書をきちんとみていなかったからといっても、争うことは難しいことが多いです。そのため、特に自社に不利な義務が課されていないか、代金が妥当か等、慎重に検討する必要があります。
4. まとめ
契約書は合意内容を証拠化するものであり、細かく定めることで発生したトラブルの紛争化を予防することにつながります。
また、契約書の作成過程で相手方と協議を重ねることで、双方の取引に対する理解が深まります。今までトラブルも少なかったこともあり特に契約書をきちんと作成されていなかった場合でも、今後トラブルが生じないとは限りません。トラブルが紛争化することを避けるためにも、ひと手間かかるかもしれませんが、きちんとした契約書を作成することが有用です。
(文責:よつば総合法律事務所 弁護士 小林義和)
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