1. 民法の大改正
2020年4月1日から、民法の一部が大幅に改正されます。民法は制定以来約120年間にわたり内容面で大幅な改正はなされていませんでした。
しかし、当然、この120年間で社会情勢は大きく変化し、法律に明記されていない部分については、解釈や判例・裁判例などで補ってきました。そのため、一般の方にとって民法はわかりにくいものでした。
今回の改正では、社会経済の変化に応じた改正、不合理な部分の改正、明文化されていなかった解釈・裁判例などの明文化などが行われました。
今回の記事では、法定利率に関する改正と消滅時効に関する改正をご紹介したいと思います。
2. 法定利率に関する改正
これまでの民法では、法定利率は年5%でした。
民法が制定された当時はこの法定利率が妥当だったのかもしれません。しかし、現在の日本の経済情勢からすると、年5%の利率は高すぎます。
また、利率は、経済情勢に応じて変化するものなので、法律で固定化させると柔軟な対応ができなくなってしまいます。
そこで、下記のとおり、法定利率は年3%として、3年ごとに変動可能なように改正がなされました。
新旧の条文を比べてみると分かりやすいかと思います。
【旧】第四百四条
利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。
【新】第四百四条(一部抜粋)
- 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。
- 法定利率は、年三パーセントとする。
- 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。
3. 消滅時効に関する改正
これまでの民法では、消滅時効により債権が消滅するまでの期間は、原則10年間であるとしつつ、例外的に職業ごとに短期の消滅時効期間を設けていました。
また、商売によって発生した債権については、消滅時効の期間を5年間とするなど、消滅時効の期間が区々な状態でした。
しかし、職業や商売かなどによって消滅時効の期間に違いを設けることは適切ではありません。
そこで、改正民法では、職業や商売かなどの違いをなくして、一律的に時効期間を権利行使することができることを知った時から5年間としました。
(債権等の消滅時効)
第百六十六条 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。
(監修者:弁護士 辻悠祐)