最近、度を過ぎたクレームをしてしまった顧客が逮捕にまで至っているケースが報道されています。

消費者意識の高まりと共に、日々クレームの態様はエスカレートしてきているようです。

業務をする上で完全には避けられないクレーム対応ですが、今回は、その中でも一番肝心な初期対応について、少しお話させて頂こうと思います。


1. 事実確認の重要性

クレームへの初期対応でまず重要なのは、何といっても「どのような事実に対してクレームが起きているのかを正確に把握する。」とことです。

クレームには、話し手の感情や主観的な評価(本人の物事の捉え方・価値観)が入り混じっていますので、それらを極力排除して客観的な情報を把握する必要があります。

例えば、よくありがちな「従業員がきちんと対応してくれない。」というクレームですが、「きちんと」という言葉だけでは、話し手の主観が混じっていて、結局どのような対応にクレームを出しているのかわかりません。

事実確認の仕方ですが、顧客の感情がある程度落ち着くまでは、こちらから無闇に質問はせず、話を聴く姿勢に徹した方が良いと思います。

その後、顧客が段々と落ち着いてきたら、話の中で5W1Hが欠けている部分について、事実を一つずつ確認していくと良いでしょう。

また、このときに、出来れば相手の要求内容(謝罪、賠償、業務の改善など)についても確認しておきたいところです。

2. クレーム初期対応の基本的心構え

事実確認以外にも、以下のようなポイントがあります。

(1)複数人で対応せよ

クレームにたった一人で立ち向かうのは大変つらいものです。話を聴く人、メモする人などと役割分担をしながら、複数人で対応するのが良いと思います。

(2)やりとりを記録化せよ

クレームの内容については、状況に応じてメモや録音などで記録化しましょう。
なお、記録の仕方(特にメモした内容など)にまでクレームをつけられないよう注意しましょう。

(3)原則その場で即答しない

クレームの場面では、すぐその場で回答や対応を求められることが多いです。

しかし、本当に緊急な場合などを除いて、基本的にはその場で即答しない方がよいと思います。

また、細かい約束を求められることも多いですが、現実的に不可能なことを安易に約束しないようにしてください。

小さな約束でも、それを破ると要求がエスカレートすることが多いです。

3. 弁護士に相談すべきクレームとは

上記の初期対応を行った後、具体的にどう対応していくのかについては、会社毎に判断が分かれるところだと思います。

基本的には、顧客が主張する事実の有無を調査し、その結果に応じて、毅然とした態度をとるのか、何かしらの対応案を顧客に提案していくのかが変わってくると思います。

もっとも、中には会社としてのどのように対応するべきかわからない場合もあるでしょう。

そんなときこそ我々の出番です。私としては、特に以下のようなクレームが、弁護士に相談する必要性が高いと思っています。

(1)そのクレームについてこちらに法的な落ち度がありそうな場合

「法的な落ち度があるか」の判断自体は難しいことも多いので、「落ち度がありそうだ」と思われた時点で出来ればご相談頂きたいところです。

初動の誤りが原因で裁判を起こされたり、それが後々不利な証拠として使われることは経験上よくありますので、気を付ける必要があります。

(2)極めて悪質なクレーマーの場合(こちらに何ら落ち度がないのに不当な要求を繰り返す場合、脅迫等の犯罪行為やそれに近い言動がある場合など)

このような場合、もはや会社だけで対応するのが困難でしょう。

対応している従業員も疲弊してしまいますし、本来の業務にも支障が出てしまいます。

この場合には、早期に弁護士を依頼したり、状況によっては警察に通報することも必要だと思います。

4. 最後に

クレームには、業務をより改善するためのヒントを含むものもあれば、毅然と対応するべき不当なものもあります。

クレーム対応は奥が深く、ここで全ては書き尽くせません。

弊所では、クレーム対策のセミナー等も随時行っておりますので、ご興味があれば、是非ご参加頂けると幸いです。

(監修者:弁護士 三井伸容

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