こんにちは!! 弁護士の三井です。

弊所は以前から比較的多くの労働事件(会社と従業員の方との間のお仕事に関するトラブル)を常時扱っております。

そこで、今日は、近時の労働事件に関する傾向と労務管理の重要性について、簡単にお話しさせて頂こうと思います。ご参考になれば幸いです。

近時の労働トラブル傾向と労務管理の重要性

(1)従業員のメンタルヘルスへの配慮

皆様もお気づきだと思いますが、最近、従業員のメンタルヘルスに対する世間の関心が高まっています。書店で見かける関連書籍も、今までとは比べものにならないほど増えています。

ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、昨年に労働安全衛生法の一部改正案が衆議院で可決され、その一環として、50人以上の従業員がいる事業場について、医師などによる従業員のストレスチェックを会社が行うことを法律上義務付ける制度が本年末ころを予定に始まろうとしています(なお、今のところ、50人未満の事業所については、法律上の義務ではなく、努力義務にとどまっています。)

かかる制度が出来たことで、今後益々「仕事に関わる従業員のメンタルヘルス管理も会社の重大な責務である。」という考え方が支配的になってくるものと思われます。 メンタルヘルスへの問題は、なかなか表に出て来づらいので、会社としても対応が事後的になりがちです。

しかしながら、この問題は一度起きると非常にこじれやすく、本業への影響が懸念されます。また、労災の問題が絡むと、会社やその代表者などが高額の損害賠償を受けるおそれもあります。

そのため、問題に対応するための適切な就業規則の整備や、現に問題を抱えている従業員がいる場合の対応方法などについて、きちんと専門家に相談する必要がある分野となっています。

(2)長時間労働への対策

上記メンタルヘルスの問題とも関連して、従業員の長時間労働に対する労働基準監督署の監督も近時厳しさを増しているように感じます。

また、従業員による残業代請求なども頻発しておりますので、会社側として、より一層、正確な労働時間の把握、管理に努める必要があります。 特に最近は、従業員側が既にある程度証拠を揃えた上で、労基署への申告や会社への残業代請求をするケースが増えておりますので、会社が何ら対策を講じていない場合、証拠の上では、実際の就労状況よりも会社が不利に扱われてしまう可能性が高くなってきています。

この点についても、現在支給中の手当などについて会社に不利にならないよう就業規則を整備する、就労状況についての会社に有利な証拠を確保しておく(例:従業員が残業申請している時間中に業務外のことをしているようであればその証拠を確保しておく。)など対策が必要です。

(3)情報や秘密の管理

ベネッセでの個人情報流出問題が記憶に新しいところですが、本年度からいわゆるマイナンバー制度が開始されることとなっており、その点でも改めて個人情報管理体制を見直す必要があります。

また、情報に関するトラブルで比較的多いのが、従業員や役員などが重要な企業情報を勝手に持ち出して競合会社に就職したり、競合他社を立ち上げたりする事案です。 事業規模が比較的小さく、個々人の業務に対する影響力が大きい業種では、このトラブルが多い傾向にあります。

このような事態を避けるため、情報媒体の保管場所に鍵をかける、データベースへのアクセス制限をかける、情報の持ち出しを人・場所・時間などの単位で制限する、秘密管理や競業の禁止について事前にきちんと取決めをしておくことなどが重要です。

(4)マタハラ問題

昨年の秋頃、いわゆる「マタハラ」についての最高裁判例が出され、マスコミにも大きく取り上げられました。妊娠出産した従業員については、解雇や労働時間についての規制、不利益取り扱いの禁止(今回裁判になったのはこの事案です。)等の法律上の各種ルールがあります。

上記報道をきっかけに、この点が世間一般に広く知られましたので、会社側がルールに反した対応をうっかりとってしまわないよう注意が必要です。

(5)最後に

会社側の労働事件を扱っていると、近時の傾向として、従業員側が周到に準備した上で、弁護士に依頼をして各種請求をしてくるケースが増加していると感じます。労働トラブルが起きた場合に適用されるルールや裁判所の運用は、残念ながら、基本的に労働者に有利なものとなってしまっていますので、会社側もきちんと対策をしておかないと、いざトラブルになったときに、証拠の乏しさなどから、従業員側の言い分が通りやすくなるおそれがあります。

上記の各問題については、各種専門家へのご相談や、厚生労働省等の関係各所のHPをご参照頂くなどして早めに対策を講じて頂けると幸いです。     

(文責:弁護士 三井伸容)