自転車事故が急増中!! 不慮の事故に備えて万全な備えを。

1. もし自転車事故を起こしてしまったら…。

自転車事故の加害者となってしまった場合、おおまかに分けると、以下のとおり、①刑事上の責任、②民事上の責任が発生することがあります。  

① 刑事上の責任

まず、刑事上の責任としては、自転車を運転していた側に何らかの落ち度があった場合、その落ち度と相手の被害の状況に応じて、過失致死傷罪や重過失致死傷罪の罪に問われる可能性があります。

比較的最近ですが、夜間にいわゆるロードレース用の自転車に乗って時速15キロ程度で走行中、前方の注意を怠ったまま左折した結果、65歳の被害者に衝突し、その方を亡くならせてしまったケースで、重過失致死罪として禁固1年という重い判決が言い渡されています(平成24年3月23日大阪地方裁判所判決)。

② 民事上の責任

次に、民事上の責任としては、相手の物を壊してしまった場合などに、いわゆる「物損」としてその弁償をする必要が生じるのは当然ですが、何より大変なのが相手を怪我させてしまったり、最悪の場合として亡くならせてしまった場合です。

相手を亡くならせてしまった場合や、相手が意識不明になるなどの大けがを負わせてしまった場合には、近時、高額の損害賠償が認められています。

昨年にも、小学生が歩行中の60代女性を自転車ではねてしまい、その女性が植物状態となってしまったケースで、約9,500万円もの損害賠償を認める判決が出ました(平成25年7月4日神戸地方裁判所判決)。この判決は世間の注目を集めましたが、実は過去にも、これに近い水準での数千万円の損害賠償を認める判決が多数出ていますので、いつ自分達の周りにこのような大変な事態が起きても不思議ではないといえます。

2 子どもが事故を起こしてしまった場合親の責任

加害者が未成年の子どもであった場合などに、親が上記のような損害賠償責任を負う場合があります。実は、上記の神戸地方裁判所の判決もこのような親の責任を認めているのです。

交通事故の被害者側からすれば、収入や財産がある親へ損害賠償請求したいと思うのが当然です。仮に親への請求が認められた場合、上記のような高額のお金をすぐに支払うのは困難な場合が多いでしょうから、親のお給料や財産が差し押さえられてしまうリスクもあります。

その意味では、家族単位で下記の個人賠償責任保険に加入する必要があるでしょう。

3. 自転車事故の場合の問題点

まず、自転車には、自賠責保険のような強制加入保険がありません。そのため、自らの意思で個人賠償責任保険に加入しなければなりません。自動車保険や火災保険の特約として付いている場合もありますが、その重要性をあまり理解されずに付帯されていないお客様もいるかもしれません。

次に、自転車事故の場合、トラブルがスムーズに解決しにくいという問題があります。近時は弁護士による自転車事故の分析が進んだり、自転車事故専門のADRセンターなども開設され始めましたが、まだまだ、自動車事故と比べてトラブル解決方法が確立しているとは言い難い状況です。

そのような状況で、加害者ご本人がトラブルを解決するのは相当な困難が伴うため、出来れば、示談代行等のサービスが付帯しているものが良いでしょう。

4. 最後に

私自身、自転車事故のご相談を受けた際、「個人賠償責任保険の加入があれば…」と思うことが多々あります。お客様にとっても、自転車は非常に身近な乗り物ですので、上記リスクも比較的理解されやすいのではないでしょうか。

日々のお客様とのやり取りの中で、「こんな高額の損害賠償が認められてしまうこともあるんですよ!!だから個人賠償責任保険にも加入しましょう!!」と保険への加入をお勧め頂けると幸いです。

(文責:弁護士 三井伸容)