コロナ禍 労務管理Q&A

1. はじめに

昨今の新型コロナウイルスの影響により、労務管理や従業員への対応で悩まれている会社が多いかと思います。

そこで、そのような疑問に対してQ&A方式で回答していきたいと思います。

2. 新型コロナウイルスの感染防止のための従業員への対応

Q. 職場でマスクを着用していない従業員がいます。業務命令として従業員に対してマスクを着用するように指示することは可能でしょうか。

A. 業種・仕事内容にもよりますが、マスクを着用するように指示することは、業務命令の範囲内と評価されることが多いかと思います。

会社は、従業員に対して、必要かつ合理的な範囲で業務命令を行うことが可能です。昨今の新型コロナウイルスの感染状況及び社会情勢からすれば、職場でマスクを着用することも必要かつ合理的な業務命令だと評価できるケースが多いかと思います。


Q. マスク着用の業務命令に従わない従業員に対して懲戒処分を行うべきでしょうか。

A. 状況にもよりますが、慎重になるべきです。安易な懲戒処分は懲戒権の濫用と評価される可能性があります。まずは、懲戒処分に至らない注意指導で対応しましょう。


Q. 従業員に対して、飲み会の禁止や帰省の禁止などの業務命令を行ってもよいですか。

A. 状況にもよりますが、慎重になるべきです。従業員の職場外の行為についても企業秩序に直接の関連を有するもの、評価の低下毀損につながるおそれがあると客観的に認められる行為については規制対象とすることが許されるケースもあり得ますが、飲み会や帰省の一律禁止が必要かつ合理的かと言われると微妙な判断かと思います。業務命令に至らない要請の範囲にとどめておくのがよいかと思います。

3. 新型コロナウイルスに感染した従業員への対応

Q. 従業員が新型コロナウイルスに感染しました。休業してもらおうと思いますが、賃金の扱いはどうしたらいいですか。

A. 新型コロナウイルス感染について、使用者に責任がない場合は、休業手当の支払義務はありません。

他方で、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。なので、会社側に責任があるケースの場合、労働基準法上は平均賃金の100分の60を支払えば問題ないです。

なお、就業規則等により100分の60を超えて(例えば100分の100)を支払うことを定めている場合は、そのとおり支払っていただく必要があります。なお、休業手当を支払った場合、支給要件に合致すれば、雇用調整助成金の支給対象になります。

詳しくは、厚労省新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4労働者を休ませる場合の措置問1をご確認いただければと思います。

厚労省新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)4労働者を休ませる場合の措置問1

Q. 新型コロナウイルスは労災の対象となりますか。

A. 業務起因性が認められる場合は労災保険給付の対象となります。なお、医療従事者や介護従事者の場合は、業務外で新型コロナウイルスに感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象となります(厚労省新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)7労災補償 問1~3参照)。

厚労省新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)7労災補償 問1~3

4. 最後に

労務対応一般に言えることですが、個別具体的な状況によって対応は変わります。

そのため、悩まれた際は労務対応に強い弁護士に相談されることをおすすめいたします。

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以上

文責:弁護士 辻悠祐

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。

飲食店様向けの書籍を出版しました

1. はじめに

当事務所の弁護士村岡つばさと松本が参加させていただいている一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会から、参加弁護士による共著で書籍を出版させていただきました。

タイトルは、「飲食店経営のトラブル相談 Q&A」です。本日は、通常の企業法務ブログと趣を変えて、書籍の特徴及び内容についてご紹介させていただきます!!

2. ポイント1「飲食店経営に特化した弁護士による共著」

フードビジネスロイヤーズ協会は、飲食店、外食産業、食品製造業などの飲食に関わるすべてのビジネスを法的に支援する弁護士からなる集団です。

所属している弁護士は飲食店の支援を日頃から業務として行っており、所属弁護士によっては、個人で飲食店経営をされている方もいらっしゃいます。

飲食店の支援を日常的に行い、かつ、自らも飲食店を経営している弁護士の目線から、飲食店経営に関するQ&Aが作成されているため、飲食店に発生することの多いトラブルへの対応策が網羅的に記載されています。

3. ポイント2「それぞれの段階ごとに発生しやすいトラブルへの対応が記載」

本書籍は、

  • 第1章 飲食店経営をめぐる法律
  • 第2章 開業時に関する相談
  • 第3章 店舗に関する相談
  • 第4章 お客様に関する相談
  • 第5章 契約・取引に関する相談
  • 第6章 従業員に関する相談

という順番で構成されており、飲食店を経営する中で発生しやすいトラブルへの対応方法が、開業時や開業後などのそれぞれの段階ごとにまとめられています。

どの項目も各弁護士が、自身の経験や知見を基に記載しておりとても面白いのですが、個人的には、第4章のお客様に関する相談内の、クレーマーやお客様への対応が飲食業の方にお勧めであり、皆様の日頃のお悩みへの対応に直結する内容となっているのではないかと思います。

4. ポイント3「最新の飲食店経営におけるトラブルにも対応」

本書籍では、最近急拡大している「フードデリバリーサービス」を利用する際の注意点や、近年トラブルが増加している残業代請求への対応方法なども記載されています。

飲食店は、深夜営業などの影響で長時間労働となってしまうケースが多く、辞めた従業員から残業代を請求されたという相談は多いです。

辞めた従業員一人からの請求であってもかなりの金額となってしまうことが多いですが、残業代請求は他の従業員にも派生することが多く、その結果、残業代の支払で会社経営に深刻なダメージが与えられてしまうことも少なくありません。

従業員の労働時間管理が疎かになっていたり、従業員を管理職という名前にしているから問題ないと考えている経営者様は注意が必要です。この機会に一度労務管理上のリスクがないかを弁護士に相談されることをお勧めいたします。

5. 最後に

本日は、「飲食店経営のトラブル相談 Q&A」の書籍の特徴及び内容の一部をご紹介させていただきました。飲食店経営者様の痒いところに手が届く一冊となっておりますので、是非ともご一読いただければと思います。

また、何か日頃の飲食店経営の中でお困りごと等がございましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。

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以上

文責:弁護士 松本達也

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自社の就業規則、大丈夫ですか?-就業規則の見直しの3つのポイント

<はじめに>

「大分昔に就業規則を作って以降、変更したことがないので、そろそろ見直したい」「社労士さんに作成を依頼したが、内容が良くわからない」-等々、就業規則の見直しに関する相談を受けることが良くあります。

本記事作成時点で、300社以上の企業様より顧問契約を締結いただいていることもあり、様々な会社の就業規則をこれまで見てきました。

今回は、弁護士の目線から見たときに、「使いづらい」と感じる就業規則の条項3つをお話させていただきます。就業規則の見直しを検討されている企業様は、是非自社の就業規則と照らし合わせてみてください。

1. 自然退職に関する規定がない

1つ目として、「自然退職に関する規定がない」というものが挙げられます。

「自然退職」とは、会社や労働者の行為や意思表示(解雇・退職の意思表示等)が何ら必要なく、一定の事由が生じた場合には、当然に(=自然に)退職になる、というものです。実務上、結構使う規定です。

ある日いきなり労働者が会社に出社しなくなり、音信不通になったとします。この場合、会社としては、ずっと籍を置いておくわけにもいかないので、早く辞めてもらいたいと思うのが通常でしょう。とはいえ、事情も分からない中で、解雇を選択するのも躊躇われます。

そもそも解雇するにも、労働者と連絡がつかなければ、解雇を伝えることもできません。
こんな時に便利なのは、自然退職の規定です。例えば就業規則において、「従業員が行方不明となり、30日以上連絡が取れないときには、当該期間の満了日を以って退職となる」という規定があれば、特に解雇等を選択しなくても、30日が経過した時点で当然に退職したものとして扱うことができます。

そのほか、「休職期間が満了となったものの、復職できない場合には、当該満了日をもって退職とする」など、休職の場面でも自然退職の規定が使われることが多いです。

これも、中々解雇は選択しづらい場面ですが、自然退職の規定があれば、解雇を選択せずとも、退職という効果を生じさせることが可能です(ただし、復職可能かという点は、慎重に判断する必要がございます。)。

自社の就業規則に自然退職に関する規定があるか、チェックすることをお勧めします。

2. 休職期間が非常に長い

相場的なものはありませんが、休職に至るまでの期間が非常に長かったり、非常に長期の休職を認める就業規則もあります。

例えば、就業規則において、「私傷病により3か月間欠勤が続いた場合には、休職を命じる」「休職期間は、1年半とする」というような定めがあったとします。この就業規則を前提とすると、3か月間の欠勤がなければ、そもそも休職を命じることすらできません。

休職を命じたとしても、1年半は、復職できるかの判断を会社は待たなければなりません。

勿論、休職のルールを理解した上で、長めの休職期間を設定すること自体は素晴らしいことです。

休職制度は、体調を崩してしまった労働者の解雇を猶予するためのものであるため、休職期間が長いことは、労働者にとってはとてもありがたいことです。

ただし、ルールをよく知らないまま期間を設定してしまうと、場合によっては会社にとって大きな負担になることがあります。

一度、自社の休職規定を確認することをお勧めします。

3. 懲戒事由が少ない/懲罰委員会の定めがある

最後に、「懲戒事由が少ない」、「懲罰委員会の定めがある」、といったものも挙げられます。

労働者に何らかの問題行動があった場合、会社としては、懲戒処分(ペナルティ)を科すことを検討することとなります。

ただし、懲戒処分を科すには、①労働者の行為が就業規則上の懲戒事由に該当し、②かつ就業規則上で具体的な処分(譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇等)が規定されており、③きちんとした手続を取っていること(本人の言い分を事前に聞く等)が前提として必要になります。

このうち、懲戒事由が少ないと、①の懲戒事由該当性で引っかかる可能性があります。「明らかに問題行動だし、懲戒処分を科したいけど、当てはまる懲戒事由がない…」という事態になるのを防ぐため、懲戒事由は網羅的に記載することをお勧めします。

また、懲罰委員会の定めがあると、③の手続面で引っかかる可能性があります。勿論、しっかりと懲罰委員会を開催すればよいのですが、何らかの理由で委員会を開催しなかった場合には、それだけで懲戒処分が無効になる可能性が出てきます。

「就業規則に懲罰委員会なるものが定められていること自体、指摘されて初めて知った」というケースも目にしたことがあります。このような規定があるかは、懲戒処分を検討する段階で、必ず確認しましょう。

<おわりに>

以上、あくまでも弁護士の目線から、「使いづらい」と感じてしまう就業規則の条項につきお話させていただきました。

「あれ、こんな条文あったっけ?」と思う箇所も出てくるかもしれませんので、改めて自社の就業規則を読み直してみることをお勧めします。

就業規則の見直しを含め、お困りの際は、お気軽にご相談ください。

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以上

文責:弁護士 村岡つばさ

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控訴と附帯控訴について

第1審の裁判所にて判決が下された場合、当事者は判決を納得して受け入れるか、上級の裁判所に不服を申し立てるか(控訴を行うか)を検討することとなります。

今回は、民事裁判における「控訴」と「附帯控訴」について、お話します。

控訴とは

控訴(こうそ)とは、第1審の裁判所が下した判決に対する不服申し立てのことです。千葉地方裁判所が第1審であれば、東京高等裁判所に判断を求めることとなります。

控訴の期間は、第1審判決が送達された日(≒受け取った日)の翌日から2週間です。

控訴審の判断は、第1審の判断について不服がある範囲についてのみ行われます。その結果、控訴審では原則として第1審の判決を控訴人の不利益に変更することはできないとされています(不利益変更禁止の原則といいます)。

このルールから、例えば、訴訟で100万円を請求して、第1審で30万円が認められた場合において、請求した原告が控訴をした場合には、第1審で認められなかった「70万円」が控訴審での審理・判断の対象となり、第1審で認められた「30万円」は審理・判断の対象とならないのが原則です。

被告側が控訴をした場合には、第1審で認められた「30万円」が控訴審での審理・判断の対象となり、「70万円」は審理・判断の対象とならないのが原則です。

民事訴訟法296条1項

口頭弁論は、当事者が第一審判決の変更を求める限度においてのみ、これをする。

民事訴訟法304条

第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。

当方は第1審の判決を受け入れようとしたのに・・・

当方が原告として複数の請求を行い、部分的に負けることがあったとしても、負けた部分について請求が認められないことは仕方がないと第1審の判決を受け入れるというケースは現実に充分にあり得ます。

ただ、第1審の判決に対して不服申し立てを行うことができるのは当方だけでなく、裁判の相手方も不服申し立てを行うことができます。

そのため、こちらとしては第1審の判決を受け入れて控訴を行わなかったにもかかわらず、裁判の相手方の控訴により控訴審に巻き込まれてしまうこととなります。

例えば、先の例でみると、第1審で認められた30万円のみが審理の対象となるのが原則ですが、当方としては、控訴審に行くなら、認められなかった70万円についても再度判断してもらいたいと思うのが通常でしょう。

もっとも、上でみた「不利益変更禁止の原則」からすると、こちらが控訴しない限りは、「30万円」のみが審理の対象となり、「70万円」は審理されないこととなります。

そうすると、当方としても、判決に不服はないけれど、相手方の控訴に備え、とりあえず控訴期限内に控訴をしておかないといけないのでしょうか。

附帯控訴

上記の問題を解消するために使用されるのが、附帯控訴の手続きです。附帯控訴とは、控訴された側が、第1審の判決を自己のためにも有利に変更するように主張し、裁判所に判断を求める手続きです。

控訴された側から附帯控訴があると、審判の範囲が拡張され、不利益変更禁止の原則が解かれ、控訴した側に不利益な判断が可能となります。

先の例で言うと、この手続を利用することにより、第1審で認められなかった「70万円」の部分も、再度審理してもらうことが可能になります。

そのため、当方として判決に不服はないけれど、相手方の控訴に備えとりあえず控訴をしておくということは行う必要はないのです。

民事訴訟法293条

被控訴人は、控訴権が消滅した後であっても、口頭弁論の終結に至るまで、附帯控訴をすることができる。

最後に

第1審の判決が下された場合、おそらく和解の検討を行ったり、証人尋問を経ていたり、多くの経過をたどって判決まで至っているかと思います。苦労の結果下された第1審の判決です。

判決を受け入れるか、当方から控訴するか、当方から控訴は行わず相手が控訴した場合に附帯控訴を行うか、控訴審での経過の予想をふまえて2週間という短い控訴期間内に慎重に判断を行う必要があります。

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文責:弁護士 根來真一郎

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