企業における交通事故リスク

1. 近年自動車事故に対する厳罰化の流れもあり、自動車を運転していて人を跳ねて死傷させてしまったというニュースがセンセーショナルに報道されることが多くなってきました。

そこで今回は、交通事故で人を死傷させてしまった際の民事上・刑事上の責任をお話させていただきます。

2. 交通事故を起こしてしまった際の責任

(1)民事上の責任

まず、交通事故で人を死傷させてしまった場合の民事上の責任についてですが、通常、人を死傷させてしまった場合には、主に以下の損害を賠償する必要があります。

  • 治療費
  • 通院交通費
  • 休業損害
  • 入通院慰謝料
  • 逸失利益
  • 後遺障害慰謝料・死亡慰謝料

※逸失利益及び後遺障害慰謝料・死亡慰謝料については、後遺障害の等級が認定された場合や、死亡した場合に賠償責任を負います。

これらの損害に関する賠償責任は、車を運転していた本人だけではなく、従業員が運転していた場合の会社(使用者責任)や、車の所有者(運行供用者責任)も負うことがあります。

通常は任意保険で対人無制限の補償をつけておけば賠償に関して大きな問題にはならないことが多いですが、重度の後遺障害が認定された場合には、数億円の賠償責任が降り掛かってくることもありますので、会社の業務で車を利用される場合は、しっかりと補償内容を確認しておく必要があります。

(2)刑事上の責任

まず、車を運転して人を死傷させた場合、【過失運転致死傷罪】が成立し、最大で懲役7年以下の懲役もしくは禁固刑、又は100万円以下の罰金となる可能性があります。

さらにこの内、アルコール等の影響で正常な運転が困難な状態で車の運転をしていた場合等の事情が合わさって特に悪質な行為と判断された場合は、【危険運転致死傷罪】が成立し、相手を負傷させた場合は15年以下の懲役相手を死亡させた場合は1年以上の懲役刑が科せられる可能性が出てきます。

※因みに「1年以上の懲役刑」というのは、1年以上20年以下を指し、一方で「15年以下の懲役」とは1ヶ月以上15年以下を指すため、「15年以下の懲役」より「1年以上の懲役刑」の方が重い法定刑となります。

また、事故を起こしてしまったのに相手を助けずに事故現場から逃げてしまった場合、いわゆる【ひき逃げ】をした場合には、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑が科せられる可能性があり、【警察に対する事故の報告を怠った場合】には、3ヶ月以下の懲役、又は50万円以下の罰金刑が科せられます。

交通事故と言えども、悪質性が高い場合などについては逮捕勾留されて何日も外に出ることができず、その結果、会社の運営が滞ってしまう可能性があります。

その他にも、仮に起訴されて有罪になってしまった場合には、執行猶予がついていたとしても会社の業務に関する免許や資格(e.g.宅建業、建設業、廃棄物処理業等)が取り消されてしまい、その結果会社の運営ができなくなってしまう可能性があります。

3. 一口に交通事故と言っても、事故の結果がひどかったり現場から逃げてしまったりすると今後の人生や会社の業務に大きな影響を与える可能性があります。

会社を運営する上で車を利用される場合は、十分な保険の補償を付けておくことと、従業員の安全意識・規範意識の向上を徹底する必要があると思います。

以上

文責:弁護士 加藤貴紀

学校法人における整理解雇事件

そこで、本日は学校法人における学部廃止に伴う教授の解雇が問題となり、解雇無効の判断が下された昨年の東京地裁の裁判例をご紹介します。

事件の概要

幼稚園から大学まで経営する学校法人が、期間の定めなく採用された大学教授らに対し、大学の学部廃止を理由に希望退職を募集し、希望退職に応じない場合は学部廃止時点で解雇することを通告、その後通告通り解雇した事件です。

解雇された大学教授らは、解雇無効を主張し、地位確認と未払賃金を求める訴訟を提起しました。

事件の争点

労働者側に責任のない解雇(整理解雇)の場合、解雇の有効性は

  1. 人員削減の必要性
  2. 解雇回避努力義務の履行
  3. 解雇される者の選定の妥当性
  4. 手続きの相当性

という4つの要素を総合考慮して判断されます。

学校法人側はそもそも整理解雇であるかどうかを争いましたが、裁判所は教授らに帰責性がないことから整理解雇の4つの要素を基に判断しました。

裁判所の判断

裁判所は、4つの要素について下記の判断をしました。

1. 人員削減の必要性について

定員割れが継続していた状況のもと、学校法人が学部の学生の募集停止及び学部廃止を判断したこと自体は経営判断として不合理ではない。

しかし、学校法人の資産状況は相当に良好であったので、教授らを解雇しなければ経営危機に陥るといった状況ではなかった。

また、教授らは他学部の一般教養科目や専門科目を担当可能であった。よって、人員削減の必要性は高度であったとはいえないと判断しました。

2. 解雇回避努力義務の履行について

学校法人は、希望退職の募集や他大学からのオファーの速やかな伝達、教員の公募状況の通知、中学等での採用検討の依頼、事務職員としての雇用の提案等を行った旨を主張しましたが、本件における解雇回避努力義務としては不十分と判断しました。

4. 手続きの相当性

学校法人が解雇の必要性や配置転換できないことの理由について十分に説明したことに関する証拠はない、また団体交渉拒否等に照らせば、学校法人は教授らに対する説明や協議を真摯に行わなかったと判断しました。

なお、3.解雇される者の選定の妥当性については、事実上教授に絞られていたことからか、具体的な判断を展開していません。

その結果、以上を総合考慮し、本件解雇は解雇権を濫用したものであり、社会的相当性を欠くものとして無効であると判断しました。

最後に

昨今の労働者保護が叫ばれる社会情勢のもとでは、解雇の有効性については厳しく判断されることが一般的です。解雇が無効と判断されると、未払賃金の支払いが大きく発生してしまいます。

そして解雇の問題は、大企業から中小企業までどんな企業にも起こりうる事態です。解雇の問題は、発生させないことが重要です。

解雇が問題となりそうな事件については、必ず弁護士までご相談をいただければと思います。

以上

文責:弁護士 根來真一郎

【強制執行】法的手続きにより強制的に債権を回収する方法について

企業の経営をしていくにあたり、取引先が契約通りに支払いをしてくれないことで、未回収のままとなっている債権が発生することがあります。

今回の企業法務ブログでは、未回収となっている債権の回収方法について、解説いたします。

なお、令和2年11月27日に、債務者の財産状況調査と債権回収の実務に関する無料オンラインセミナーを開催いたします。

未回収の債権があるが強制的に回収できるかどうか知りたい、相手方に返済原資となる財産があるかどうか調べたいが方法が分からない、簡単になった民事執行法を用いて具体的にどうすれば債権回収できるか知りたいという方は、ぜひオンラインセミナーにご参加ください。

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1. 法的手続きにより強制的に債権を回収する

任意の交渉による支払いが見込めない場合には、法的手続きにより強制的に債権回収することを検討します。法的手続きには、大きく「判決をとる手続き」と「判決により出た内容を強制的に実現させる手続き」の二つがあります。

2. 判決をとる手続き

判決をとるためには、訴訟を起こします。支払を求める権利があることを裁判所に認めてもらうため、裁判所に訴えていきます。

裁判の結果、支払を求める権利があると認められると、「被告は、原告に対し、●●円支払え」というような判決が出されることになります。

3. 判決により出た内容を強制的に実現させる手続き

残念ながら、判決が出たからといって、自動的に相手方から支払を受けられるようになるわけではありません。

判決が出た以上、しぶしぶ支払いを行う者もいますが、中には、判決が出ても支払いをしてこないような者もいます。このような場合に裁判所は、強制的に債権回収をしてくれることはありません。

判決の内容を強制的に実現させるためには、こちらで相手方の財産を見つけ出して、その見つけ出した財産から債権回収するよう裁判所に対して別途申立て(強制執行の申立て)を行う必要があります。

4. 強制執行の種類(不動産執行、債権執行、動産執行等)

強制執行の種類には以下の通りいろいろとあります。

①不動産執行

相手方が持っている不動産を差し押さえて、強制的に競売にかけ、その売却代金から債権を回収します。一般的に不動産は高額なため、債権回収をする際には、まず不動産執行を検討することが多いです。

②債権執行(預金・給料等)

相手方が持っている預金債権(預貯金)や給与債権などの債権を差し押さえて、債権を回収します。取引口座や給与口座を把握していたり、勤め先を把握している場合には、これらの債権を差し押さえて回収を図ります。

③動産執行

現金や高級時計、宝石類、ブランドバックなど、価値の高い物を差押えて、それを売却して債権回収にあてます。

5. 財産の把握をする必要があります

強制執行の種類がいろいろとあることは分かりましたが、問題は、対象となる財産(不動産、預貯金、勤め先等)をこちらで発見しないといけないということです。

判決が出た場合でも、裁判所が強制的に相手方の財産を見つけてくれることはありません。

相手方の財産を把握しているか、把握していない場合には、どのように財産調査をしていくか、という点が、債権回収の成功率を左右します。

この点、令和2年の民事執行法改正により、債務者の財産状況の調査に関する制度の見直しがされました。これにより、相手方の財産の把握がより簡易にできる可能性があります。


以上、法的手続きを利用した債権回収の方法について簡単にご説明させていただきました。

最近の民事執行法の改正により、相手方の財産状況の調査がよりしやすくなりました。具体的には、預金の情報、勤務先の情報及び不動産の情報を、第三者から取得できるような手続きが新設されています。

冒頭でご紹介した債権回収オンラインセミナーでは、改正された民事執行法を用いた強制執行についても解説させていただきます。

未回収の債権があり、債権回収にお困りの方がいましたら、ぜひ11月27日のセミナーにご参加ください。

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以上

文責:弁護士 大友竜亮

ポイントは「裁量」!-同一労働同一賃金を巡る3件の最高裁判決

はじめに

10月13日(大阪医科薬科大学事件、メトロコマース事件)、10月15日(日本郵便事件)と、同一労働同一賃金に関する最高裁判決が立て続けに3件出ました(日本郵便事件は3件の判決が同日に出ましたが、会社が同じこともあり、ここでは1件とカウントしています)。

実務上、非常に重要な判決ですので、ダイジェスト版の解説記事を書いてみます。

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【新型コロナ】従業員の賃金・休業手当の支払義務について

新型コロナウイルスの感染拡大については、まだまだ予断を許さない状況が続いています。

中小企業の方々におかれましては、事業に大きな影響を受け、従業員の賃金の扱いについて検討されることも多いかと思います。

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