よつば総合法律事務所の弁護士の辻です。
今回のテーマは、最近ニュースでよく目にする迷惑動画の問題について、法的な責任のところを解説していきたいと思います。
迷惑動画とは
迷惑動画とは、様々な内容が考えられますが、ここでは、企業の社会的な信用を低下させるような内容の動画を投稿することと範囲を限定して説明したいと思います。
迷惑動画が投稿されることによる企業の損失について
迷惑動画が投稿されることで、企業は以下のような損失を被ることになるかと思います。
- 企業の社会的信用の低下。
たとえば、回転ずしチェーンの迷惑動画の一連の騒動で、回転ずしの食品衛生に対する信用というものに少なからず影響を与えたかと思います。 - 迷惑動画の投稿を受けて、対応するに至った費用。
たとえば、迷惑動画の投稿者を特定するために弁護士に依頼した費用、迷惑動画の投稿を受けて清掃のために営業店舗を臨時休業にして得られるはずの営業利益を失ったという損失、その他企業の社会的信用を回復するために要した費用(設備投資を含む)などが考えられます。 - 企業の社会的信用低下を受けて株価が下落すれば、企業の時価総額が低下したことになるので、それも企業の損失といえるかもしれません。
迷惑動画の投稿者の責任
法律上は、民事上の責任と刑事上の責任が考えられます。
(1) 民事上の責任
民事上の責任追及としては、投稿者に対して損害賠償請求をすることが考えられます。
それでは、損害の範囲としてどこまで含めるのでしょうか。
ここで損害の範囲を無制約に考えますと、迷惑動画の投稿に直接要した費用のほか、食品衛生の信用を回復するために行った新規の設備投資や時価総額が低下した部分まで損害の範囲に含めることになりかねません。
法律上は、「損害」として認められる範囲は、不法行為と相当因果関係にある範囲の損害に限られます。
つまり、迷惑動画のケースでいうと、迷惑動画の問題で損害が発生したといえるのが相当であるという範囲の損害に限られるわけです。
そのように考えると、株価下落による時価総額の低下は迷惑動画と相当因果関係にある範囲の損害というのは難しいかと思います。
また、新規の設備投資についても、内容にもよりますが、相当な範囲の損害といえるかはかなり微妙かと思います。
(2) 刑事上の責任
刑事上は、器物損壊、名誉毀損、業務妨害などで刑事告訴することが考えられます。
(3) 最後に
このように、迷惑動画の問題には法律上も厳しい責任が課されています。
SNSやインターネット上に簡単に投稿できる時代だからこそ、投稿する前に投稿内容に問題がないのか冷静に考える時間を持つことが重要ですね。
(監修者:弁護士 辻悠祐)