Q. 最近、弊社において重要な仕事をしている従業員のパフォーマンスが落ちています。原因はメンタル的なものも影響しているようですが、本人に聞いてもはっきりとしません。
その影響で、上司の仕事が増えたり、会社業務での支障が出るような状況にまでなっています。
このままだと困りますがどうすればよいのでしょうか、EAPというものもあると聞いたのですが。
A. 従業員がひどく悩んでいたり、強い不安にとらわれたりするとパフォーマンスは低下し、ひいては休職・離職へとつながります。
また、周りにも影響し結果として職場全体の生産性が低下します。
さらに、同従業員から労災申請や損害賠償請求がなされるおそれも生じます。
このような事態を回避するために、従業員のパフォーマンスの低下に伴う問題を発見し解決するのが、EAPの機能です。以下、EAPについて説明します。
1. EAPとその目的
EAPとはEmployee Assistance Programの略で、日本語では従業員支援プログラムと訳される主に従業員のメンタルヘルスをケアするサービスです。
もともとは、アメリカにおいて経済悪化等で薬物やアルコール依存によるうつ病発症者が増え、企業の生産性に影響を及ぼす事態になった際に、従業員のメンタルヘルスをケアして生産性の低下を抑えることを目的として広がりました。
現在は、ストレス社会ということもあり、日本でも導入が徐々に増えてきています。
2. EAPの内容
EAPの内容は様々ですが、大きくは、①従業員に対して、悩みなどで精神的に不調を感じた場合に、会社の上司や同僚に知られることなく外部機関に相談しアドバイスを受けて立ち直っていくといった外部相談機能、②上司や同僚等の周りの人が当該従業員の不調に気が付き、外部機関と連携しながらその従業員の不調に対処し一緒に解決していくといった上司等のサポート機能となります。
具体的には、産業医、産業看護師、精神科医、臨床心理士・精神保健福祉士などの資格をもつカウンセラー等の様々な専門家により、個別ケースについて電話相談、面談、治療等の実施による問題の特定、解決方法の提示・実行・結果評価、研修等による予防対策といった内容が主なものとなります。
EAPは、企業がこれらの様々な外部機関と連携して、従業員の不調を改善しパフォーマンスを維持・向上させることを目指します。
3. EAPと法律
労働契約法により企業には従業員の安全に配慮する法的義務が課せられており、うつ病での休職や自殺未遂等があると、貴重な人材を失うだけでなく、労災や損害賠償義務が発生する可能性も生じます。
また、日常生活において離婚、相続、交通事故、近隣トラブル等の法的トラブルを抱えていると、そのことでいつも頭がいっぱいになり気分も非常に滅入ることがあります。
仕事でのストレスと相まって不眠になり仕事におけるパフォーマンスが低下することもあります。
しかし、法的トラブルは医師やカウンセラー等に相談しても十分な回答は得られない可能性が高く解決にはつながりません。
このようなときに、従業員や周囲の管理職向けに外部の法律相談窓口を常設しておけば、適切な時期に弁護士による面談が可能となり、場合によっては代理して問題を解決していくことで、従業員の悩みも解消することができます。
また、弁護士関与により会社の安全配慮義務違反のリスクも減少し、コンプライアンス対策も強化できます。そのため、EAPの中に法的サービスを組み込んで利用することも有用です。
4. まとめ
日本ではEAPを導入する企業が徐々に増えてきているとはいえ普及はまだまだの状況です。
EAPを導入することで、大事な従業員の離職を防ぐことができるだけでなく、充実した福利厚生があるということで良い従業員の採用にもつながる可能性もあります。
また、何よりも従業員の不調が解消されることでパフォーマンスを維持・向上でき、企業全体の生産性もあがります。
現在は、外部機関が様々なEAPサービスを提供していますので、一度導入を検討されることも有用かと思います。
(文責:よつば総合法律事務所 弁護士 小林義和)
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