Q. 私は会社の代表取締役兼オーナーで、会社は創業以来、私がほとんどの業務を統括しています。

私に何かあったときは息子に会社を引き継いでもらいたいとは思っていますが、具体的な対策はまだ何もしていないので不安です。どうすればよいでしょうか。

A. 後継者を決め遺言を書きすべての株式・資産がその後継者に引き継がれるようにして、何かあったときのために備えましょう。


1. 何も対策していなかった場合の問題点

株式や工場などの権利を複数の人が持っている場合、オーナー経営者に協力的だった株主が後継者には非協力的になるなどして株主総会の決議ができなくなる、会社が工場などを使用する際に支障が生じるなどの問題が生ずる可能性があります。

特に不動産が会社の所有ではなく第三者から不動産を借りて事業に使用している場合などには事業自体ができなくなるなどの問題が発生する確率が高くなります。

また、仮にオーナー経営者が現時点では株主や工場などをすべて所有していたとしても、相続手続の中で複数の親族に分散して遺産を継承した結果、親族間の対立・紛争が一気に生じて、同様の問題が生じる可能性があります。

そして、このような問題が生じた会社は事業に支障が生じ業績が悪化するおそれがあります。

2. 株式や工場等が分散所持されている場合の対策

上記のような問題の発生を防ぐために、まずは分散している株式や資産を買い取るなどして集中させ、後継者に一括して継承できるように準備しましょう。

現在は、中小企業における経営の継承の円滑化に関する法律(中小企業継承円滑化法)に基づく支援を受けることもできます。

相続税の課税の特例の利用が可能だったり、遺言内容についての自由度が高まったり(遺留分についての特例)、金融支援を受けることができる場合もあります。

3. 経営者が認知症等により判断能力を失ってしまったときは、会社が意思決定をできなくなり、機能不全となってしまうおそれがあります。

その場合、速やかに後見開始審判申立を裁判所に行うことにより成年後見人を選任して、後継者に株式を譲渡したりしましょう。

また、当面の事業継続のために裁判所に対して職務代行者の選任を求める手続きをしましょう。

4. オーナー経営者が死亡してしまった場合の対策

オーナー経営者の生前に、後継者に株式等を一括して継承させる内容の遺言を作成し、遺言執行者も指定しておくことが何より重要です。

そして、遺言は形式不備による無効、偽造・紛失等の危険性がある自筆による遺言よりも公正証書による遺言を作成して相続紛争を防止しましょう。

また、各相続人には遺言によっても侵害できない一定割合の相続分(遺留分)があります。

そのため、遺言ですべての株式・工場等を特定の後継者に継承させる旨だけ記載した場合、相続時にほかの相続人の遺留分侵害の問題が生じる可能性があります。

また、遺言では扶養されていた相続人への配慮や遺言記載の財産に漏れがあった場合など作成時に配慮すべき事項もありましたので、作成する際は専門家に相談しましょう。

5. まとめ

現在、高齢化社会の進行に伴い、企業においてもいかに後継者へ事業を円滑に継承できるかどうかが今後ますます大事になってきます。

何かあってからでは遅い場合もあるので、できるだけ先延ばしはせず、事前に対策を行うことが大切です。

(監修者:弁護士 小林義和

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