最終更新日:2026年6月9日

Q. ある社員が重大な問題行動を起こしました。企業秩序を維持するために懲戒処分を行いたいのですが、どのような点に気を付ければよいでしょうか?
A. 企業秩序を維持する上で、懲戒処分は必要な手段です。しかし、懲戒処分には厳格な要件や手続きが必要です。そのため、感情的に懲戒処分をしてしまうと、懲戒処分が無効になるリスクがあります。懲戒処分を検討する場合、その要件や手続きを十分理解して慎重に進めることが重要です。
1 懲戒処分とは
懲戒処分とは、従業員が企業の秩序や規律を乱す行為を行った場合に、企業が「制裁」として科す処分です。
懲戒処分の種類と重さは、自社の就業規則等により定められます。一般的には軽いものから順に、戒告、譴責(けんせき)、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇、懲戒解雇があります。

2 懲戒処分の要件・手続き
懲戒処分は、従業員に大きな不利益を与えるため、その有効性は厳しく判断されます。以下の4つの点をいずれかひとつでも欠くと、処分の有効性が否定される可能性が極めて高くなります。
(1) 根拠規定の存在と周知
懲戒処分を行うには、就業規則や懲戒規定等において、どのような行為が懲戒の対象となり、どのような処分が科されるかを具体的に定めておく必要があります。
そして、この根拠となる就業規則等が従業員に「周知」されている必要があります。そのため、会社の棚の奥にしまわれていて、就業規則等がどこにあるのか従業員がわからない、見ることができないといった状態では、周知という要件を満たさないのが原則ですので注意が必要です。
(2) 当該行為が懲戒事由に該当すること
まず、当該行為が、就業規則等に定める懲戒事由に該当することが必要です。
ただし、問題となる行為をしたかどうかが争われるおそれもあります。そのため、十分な事実調査をして、メールや記録、防犯カメラの画像等の客観的な証拠を確保する必要があります。もし、裁判になった場合には、懲戒事由が存在することを立証する責任は会社側にありますので注意が必要です。
(3) 処分の内容・相当性
どのような懲戒処分を科すかという点については、問題行為の内容や程度に照らして、その処分が社会通念上相当なものでなければなりません。たとえば、軽微な遅刻やミスで懲戒解雇を科すことは、相当性を欠き無効となるでしょう。
具体的には、同種事案における過去の処分例、行為の動機や業務への影響、損害の程度、行為者の職責、過去の問題行為歴、反省の度合等を総合的に考慮して慎重に判断しましょう。
なお、たとえば減給は法律上の上限があるなど、法律で内容が規制されている場合もありますので、注意が必要です。
(4) 適正手続き
懲戒処分を科すためには、就業規則等に定められた手続きに従うことはもちろんですが、対象者に弁明の機会を与えることが特に重要です。処分の対象となる従業員本人から問題行為についての事実関係や、それに至った理由、原因などを直接聴取し、反論の機会を保障しましょう。
なお、就業規則等についてインターネットのひな形を使用した結果、意識せずに懲罰委員会の開催などの複雑な手続きを設けているケースもありますので注意が必要です。
まとめ
懲戒処分は、企業秩序を維持するための最後の切り札ともいえるものです。一方で、問題行動に対して感情的になり、要件や手続きを十分満たさない処分をしてしまうと、企業にとって大きなリスクにもなりかねません。
そのため、就業規則等を整備し、日頃から従業員への指導を行いましょう。そして、懲戒処分を検討する場合、事実調査の徹底や証拠の確保等を重視しましょう。また、懲戒処分には注意しなければならない点が多くありますので、専門家に相談することも有用です。





