経営者保証ガイドライン①

はじめに

経営者保証に関するガイドラインというものは知っていますか?

社長のような経営者が保証人となることは、思い切った事業展開や事業再生の妨げ等になるため、日本商工会議所と全国銀行協会が共同で「経営者保証に関するガイドライン研究会」設置し、様々な議論の末に経営者保証に関するガイドラインが作成されました。

※このページでは、経営者保証に関するガイドラインを単にガイドラインと呼びます。
ガイドラインについては、以下のサイトをご確認ください。

どんな場面で利用されるの?

そのガイドラインの主な利用場面は3つです。

  • 社長などの経営者を保証人とすることなく、新しく融資を受ける場合
  • 既に経営者が保証人となっている保証契約を解約する場合
  • 会社の債務整理の際に、保証債務の減額または免除してもらう場合

つまり、ガイドラインを利用すれば、

  • 社長が保証人とならなくても、銀行などから新たな融資を受けられる
  • 社長が保証人となっている会社の借り入れについて、社長が保証人から抜けられる
  • 会社は債務整理するものの、社長の自宅を残せる

ということが可能になるのです。

法的拘束力は?

少し残念なのですが、ガイドラインには法的な拘束力はありません。

ガイドライン(2頁2⑴)にも「自発的に尊重され遵守されることが期待されている」と記載されているにとどまり、法的な拘束力はありません。

ただし、各金融機関は、積極的にガイドラインに基づいて誠実に対応することを宣言しております。

金融庁のHPにもガイドライン利用実績が載せられています。

ガイドラインについては、今後ますます利用されることが予想できます。

千葉県の金融機関の実情は?

千葉県の金融機関についても、各金融機関はガイドライン対する誠実な対応を宣言しております。

千葉銀行のHPでも、京葉銀行のHPでも、千葉信用金庫のHPでも、記載されています。

参考

千葉に本店を置いている銀行ではありませんが、りそな銀行は積極的にガイドラインを利用しています。

利用できる保証契約は?

では、どのような場合にガイドラインが利用できるのでしょうか。

大前提として、ガイドラインの対象となる保証契約は以下の保証契約である必要があります(ガイドライン4頁3)。

  • (1)保証契約の主たる債務者が中小企業であること
  • (2)保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること。ただし、以下に定める特別の事情がある場合又はこれに準じる場合については、このガイドラインの適用対象に含める。
    • ①実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者の配偶者(当該経営者と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が保証人となる場合
    • ②経営者の健康上の理由のため、事業承継予定者が保証人となる場合
  • (3)主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む。)について適時適切に開示していること
  • (4)主たる債務者及び保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと

保証人とならずに融資をうけるためには?

経営者が保証人とならないで、会社が融資をうけるには、

  • ①法人と経営者との関係の明確な区分・分離
  • ②財務基盤の強化
  • ③財務状態の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

が必要となります(ガイドライン4頁4⑴)。

少し解説します。

① 法人と経営者との関係の明確な区分・分離

経営者は、役員報酬や会社への貸付・借入のような会社とのお金のやりとりについては、社会通念上適切な範囲を超えないものとする体制を整備する必要があります。

実際上このような体制の整備・運用の状況については弁護士のような外部専門家による検証を実施し、その結果については、銀行などの金融機関に開示することが望ましい(ガイドライン4頁4⑴①)とされています。

ここでいう、外部専門家は日ごろからお付き合いしている顧問(弁護士や税理士)などであっても問題ありません。

弁護士などの指示のもとに、定期的な株主総会の開催など手続きを行い、報酬の決定の過程(手続)や結果が適切・適正であることなどを検証してもらうことが、重要になります。

② 財務基盤の強化

簡単に説明すると、会社の資産・今後の収益のみで、借入金の返済が可能という意味です。

例えば、現時点では会社の業績が安定していない場合でも、今後の収益などによって、返済計画の実現性が高ければガイドラインの適用はありえます。

下の③とも重なるのですが、情報を開示し、財務状況などを適切に説明することが重要と言えます。

③ 財務状態の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

金融機関などからの求めに対して、貸借対照表や損益計算書だけでなく、各勘定明細(資産・負債明細、売上原価、販管費明細等)を提出し、財務状況の説明を行う必要があります。

また、消費貸借契約締結後も、試算表や資金繰り表等の定期的な報告をすることが望ましいといえます。

このように①、②、③の内容について、弁護士や税理士などに報告書を作成してもらい、金融機関に対し資料を開示したうえで、財務状況を説明することが求められるのです。

ガイドラインの利用はややこしい面があることは否めませんが、利用できた際のメリットは計り知れません。

会社法上の手続きや金融機関に対する報告書の作成など、どうしても専門家の関与が必要となってきます。

そのため詳細については、日ごろから相談できる専門家にご相談ください。

監修者:弁護士 大澤一郎

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※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。