忘年会での怪我にはご用心!~忘年会と労災について~

気付けば12月に突入、町にはイルミネーションが煌びやかに点灯し、いよいよ2018年も残すところ後1か月となりました。企業経営者の皆様は、年末進行対応でてんてこまいという方、連日の忘年会で肝臓から悲鳴が・・・という方も多くいらっしゃると思います。

忘年会で楽しいお酒を飲んでいたら、ついつい飲みすぎてしまい、この怪我はいつどこでしたんだろうという経験をしたことがある方は私だけでしょうか。あざができた程度では特に問題はないかと思いますが、それこそ酔っぱらって転んでしまい骨折してしまった場合、治療費などは自己負担になってしまうのでしょうか。

もしかして、「労災は使えないか?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。そこで、忘年会と労災について今一度検討してみたいと思います。

そもそも「労災」って?

そもそも、「労災」とはどのような制度なのでしょうか?

「労災」とは、国家が労災保険制度を運営し、使用者が義務として集団的に加入して保険料を納め、「労働災害」(労働者が労務に従事したことによって被った死亡・負傷・疾病)にあった労働者が補償を受ける制度です。

療養補償として治療費が、休業補償として休業損害が、その他打切補償、障害補償、遺族補償、分割補償、葬祭料等が補償されることとなります。

忘年会と労災

では、忘年会での怪我は労災として治療費や休業損害は支払われるのでしょうか?

労災として補償が行われるためには、「業務災害」と認められる必要があります。「業務災害」と認められるためには、「業務起因性」と「業務遂行性」の双方が必要となります。

「業務起因性」とは、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものと経験則上認められること(因果関係)を意味します。「業務遂行性」とは、労働者が事業主の支配ないし管理下にあること(仕事中か否か)を意味します。

忘年会において事故が発生した場合、「業務遂行性」が特に問題となります。ようするに、「忘年会は仕事なのか!?」ということが問題となるわけです。

忘年会に業務遂行性は認められるか!?

では、忘年会は仕事であり、業務遂行性は認められるのでしょうか?

業務遂行性が容易に認められるのは、事業場内で作業に従事中に災害に遭ったような場合です。それに対して、事業場外での任意的な従業員親睦活動については、強制されて参加するものではないことから業務遂行性は通常は認められません。

裁判例においても、「本件会合への参加に業務遂行性が認められるかについてみるに、本件会合は、前記認定のとおり一般に仕事をした他社の従業員を送別する趣旨で会社従業員の有志が企画し、回覧を回して任意で参加者を募り、甲での勤務終了後に会費制で行われ、幹事が開会の挨拶をし、閉会も挨拶なしの流れ解散であったもので、このような本件会合の趣旨及び開催の経緯からすれば、本件会合への参加に業務遂行性があるとは認められない。」(東京地判平11・8・9労判767号22頁)としたものがあります。

なお当該裁判例は、業務起因性についても、「右災害は業務と関連のない、自己の意思に基づく私的行為により、自ら招来した事故によるものである」として否定しています。

最後に

せっかくの楽しい忘年会も、事故が発生してしまうと台無しです。お酒はほどほどに、楽しい忘年会を過ごしていただければと思います。

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文責:弁護士 根來真一郎

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。