最終更新日:2026年5月28日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 小林義和

Q. 最近、知り合いの会社で、業務委託で仕事をお願いしていた人から残業代を請求されたという話を聞きました。業務委託契約なので、雇用ではなく残業代は発生しないと思うのですが、なぜ残業代が発生するのでしょうか?

A. 会社が労働力を確保する際、形式上、外注(業務委託)という形をとることがよくあります。

しかし、業務委託の形をとっていたとしても、法律上は労働基準法上の労働者であると判断され、その結果会社として大きなリスクを抱えることになる場合がありますので注意が必要です。


1 業務委託?雇用?

会社と個人との間で「業務委託契約」という名称の契約を締結しても、実態が「雇用」に近ければ、労働法上の保護の対象になる可能性があります。

労働基準法9条によると、「労働者」とは職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者とされています。

そして、この労働者は会社の指揮監督下に置かれていて、会社から仕事の対価として賃金を支払ってもらう人のことを指します。

一方、業務委託は、独立した事業者に業務を発注し、その事業者は、指揮命令下で働くわけではなく、自らの裁量で業務を行って成果をだしていきます。

2 雇用(労働者)とされた場合のリスク

形式的には業務委託の形をとっていても、雇用とされた場合には、たとえば以下のリスク等が生じます。

(1) 残業代の支払い

業務委託契約の場合、通常残業代の計算・支払いは行いません。

しかし、労働者と判断された場合、残業を行っていれば残業代を最大で3年分まで遡って支払う必要が出てきます。

そして、このような場合、業務委託の報酬全額が残業代を計算する上でのベースの金額(基礎賃金)になる可能性もありますので、残業代が高くなってしまうこともありえます。

(2) 社会保険料の納付

労働者であると判断された場合には、社会保険料を遡及して徴収される可能性があります。

社会保険料は最大で2年まで遡って徴収される可能性がありますので、残業代の支払いと合わせてかなり高額になる可能性もあります。

3 業務委託と雇用の判断基準

労働者性を判断するに当たっては、どのような形式の契約を結んだかではなく、実際にどのような働き方をしているのか、という点が重要になってきます。 形式上は業務委託契約を結んでいた場合であっても、会社との間に指揮監督関係が認められると、労働者と認められる可能性があります。

具体的には、①仕事の依頼、業務従事の指示等に対して断ることが許されているかどうか、②業務遂行上の指揮監督の有無、③業務日や時間等の拘束性の有無、④第三者に再委託することが認められているか等の代替性の有無、⑤作業時間単位で報酬が決まる等の報酬の労務対価性、⑥機械、器具を受託者が用意・負担しているか等、⑦受託者が他社の業務に従事することが制約されているかどうかといった専属性の程度等の事情から労働者であるか否かを判断することになります。

4 まとめ

業務委託契約を締結したにもかかわらず、労働者と認定されてしまい、残業代などの支払いを強いられるという案件はしばしばあります。

そのようなリスクを軽減するためには、契約を締結する際、具体的な業務や成果物の内容、業務遂行方法、業務に従事する際の受託者の権限などを「労働者」と認定されにくい形で事前に明確にした上で、実際に業務が開始した後はそのとおりに運用する必要があります。

思わぬトラブルを避けるためにも、業務委託の運用に不安がある場合は専門家に相談されることも有用です。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 小林義和

副代表弁護士・税理士。税務と法律の双方の観点から会社経営全体の解決を目指します。企業勤務の経験もあることから、直面している問題・課題に対して、一番よい解決方法を一緒に考えます。千葉県弁護士会所属(登録番号44648)。

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