1. はじめに

  • 「労働者から多額の残業代請求を受けており、対応に困っている」
  • 「労働基準監督署より残業代不払いと言われ、是正勧告を受けている」
  • 「自社の賃金体系で、適切に残業代が払えているかが不安」

等々、当事務所でも、残業代に関するご相談をいただくことが多くございます。

ここでは、残業代請求の実情やよくある誤解、会社の対応策、当事務所でサポートできる内容について、お話させていただきます。

当事務所でサポートできる内容はこちら

2. 残業代請求の実情

(1) 残業代請求は増えている

統計を取ったわけではないため、あくまでも感覚的なお話ですが、残業代請求の件数は増えています。

残業代請求が増えている要因の1つに、「弁護士に依頼することのハードルが非常に低くなった」ことがあると考えています。
例えば、インターネットで、「残業代請求 弁護士」等のワードで検索すると、多数の法律事務所がヒットします。
そして、弁護士費用を見てみると、「着手金無料」「完全成功報酬制」の事務所が多いことが分かります。この費用体系ですと、依頼時に費用は一切かからないため、弁護士依頼時の「初期費用がかかる」という大きなハードルはもはやありません。

そのため、従来では考えられなかったような低額の残業代請求の事案(請求金額が100万円を下回るような事案)でも、労働者側に弁護士が就き、残業代請求がなされることが増えています。

(2) 残業代請求の金額は高額化する傾向にある

民法改正による残業代請求の時効期間の延長(2年→3年→いずれは5年)もあり、残業代請求の金額は、これまでより高額化する傾向にあります。この記事を書いている時点(令和4年7月末日現在)では、残業代請求の時効期間は3年になっています。これまでの時効期間 (2年)と比較すると、単純計算で1.5倍の残業代請求を受けることとなります。なお、いずれ5年に時効期間が延長されること自体は既定路線となっており、こうなると2.5倍の金額になります。

また、令和5年4月1日からは、中小企業であっても、月60時間超の残業時間の割増率が50%に引き上げとなります。

このように、法改正の影響もあり、残業代請求の金額はこれまで以上に高額化する傾向にあります。残業代の問題を野放しにすることは、企業に取り大きなリスクを抱え続けることと同義です。

残業代請求の時効期間の延長については、こちらのブログもご参照ください。


当事務所の残業代トラブルの解決事例はこちら

3. 残業代請求のよくある誤解・落とし穴

(1) 残業代をコミコミで払っている

特に、飲食店や小規模な事業主においては、「基本給はいくら、●●手当はいくら」、というように明確に賃金項目を分けておらず、「残業代も含め(コミコミで)総支給●円」というように、ざっくりと賃金総額のみを決定していることも良くあります。

しかし、裁判所、「基本給は基本給、残業代は残業代で、きちんと明確に分けて支給しましょう」というスタンスを取っています。
上記のような「コミコミ」のケースですと、基本給部分と残業代部分とを明確に分けることができないため、有効な残業代の支払とは認められない(=一切残業代を払っていなかった)こととなります。

(2) 毎月固定で残業代を払っている

毎月定額で残業代を支払うことを、「定額残業代」「固定残業代」などと呼びますが、この有効性を巡り紛争となることが非常に多いです。

前提として、「毎月固定で残業代を払うこと」自体に問題があるわけではありません。
ただし、(1)で見たように、基本給部分と残業代部分とが明確に分かれていなければ、有効な残業代の支払とは認められないこととなります。現在の裁判実務を踏まえると、以下のような場合には特に注意が必要です。

  • 基本給、残業手当の金額が明確に分かれていない。
  • 雇用契約書、給与明細、賃金規程に定額残業代の記載がない。
  • 手当の趣旨が不明確(残業代として支払っているかが分かりづらい)
  • 対象となる残業時間が非常に長い(月45時間以上は特に注意)

(3) 雇用契約書・労働条件通知書がない

(1)、(2)との関係で特に問題になります。

雇用契約書・労働条件通知書がなければ、雇用契約を締結した際に、「労働者と会社との間でどのような合意が成立していたか」が分かりません。
仮に入社時に、「基本給はいくら、残業代はいくら」と口頭で説明し、労働者の了承を得ていた場合であっても、書面がない以上、これを証明することが難しいのです。

定額残業代・固定残業代の有効性が争われた事案で、雇用契約書・労働条件通知書がないと、会社側が勝てる可能性は非常に低くなります。

飲食店向けの記事にはなりますが、上記(1)~(3)を詳しく解説した記事がありますので、こちらのブログもご参照ください。

(4) 歩合給と残業代が連動する関係にある

特に、歩合給制を採用している運送業において、このような賃金体系が問題になることが多いです。

令和2年3月30日に出た「国際自動車事件」の最高裁判決を受け、支給する歩合給と残業代が連動するような賃金体系(歩合給が増えれば残業代が減り、残業代が増えれば歩合給が減るような賃金体系)は、有効性が否定される傾向にあります。

詳しくは、こちらのブログをご参照ください。

4. 会社の対応策

(1) まずは自社の賃金体系・リスクを把握する

残業代対策のスタートは、自社の賃金体系の内容、リスクを把握するところです。

これまで残業代請求を受けていなかった会社も、一度、自社の給与体系に問題がないか、弁護士・社会保険労務士等の専門家に確認してもらうことをお勧めします

なお、当事務所でも、残業代リスクの簡易無料診断を行っておりますので、ご興味のある企業様は、ページ下部のお問い合わせからご連絡ください。

(2) 社内規程・賃金制度を改定する

(1) でリスクが判明した場合には、社内規程や賃金制度を改定する必要があります。この抜本的な改定を行わないと、いつまでも残業代請求のリスクを抱え続けることとなります。

ただし、どのような方向性で賃金制度を改定すべきかは、現状の給与体系や労働者数、会社の社風、労働者の属性等によっても大きく異なりますし、制度変更の際には労働者への十分な説明等も必要になるため、必ず弁護士・社会保険労務士等の専門家に相談しながら改定を勧めることをお勧めします。

社内規程・賃金制度の改定は、こちらのページをご参照ください。


(3) 紛争発生時には速やかに弁護士に相談する

上記(1)(2)は、あくまでも「予防」の観点からの対応策ですが、労働者から残業代請求を受けてしまった等、実際に紛争が発生してしまった場合には、速やかに弁護士に相談すべきと考えています。

残業代請求の場合、そもそも労働者側の言い分が正しいか、という問題もありますが、請求が他の労働者に派生するリスクもあります。

そのため、会社の取るべきスタンス、解決の方向性を含め、早期に弁護士に相談することをお勧めしています。

なお、特に労働審判が申し立てられたような場合には、可能な限り早く弁護士に相談することをお勧めします。
詳しくはこちらのブログで解説していますが、労働審判は会社側にとって非常に時間的に厳しい手続であり、初回期日までに十分な準備ができるかが、解決を大きく左右するからです。

5. 当事務所でサポートできること

ここまで見たように、残業代請求は増加傾向にあり、金額も高額化する傾向にあります。

残業代の問題を野放しにすることは、企業に取り大きなリスクを抱え続けるのと同義です。

当事務所では、賃金制度の改定から紛争発生時の対応まで、様々な業種・規模の企業様より残業代請求のご相談・ご依頼を受けており、以下のようなサポートを行うことが可能です。

  • 残業代リスク分析
  • 賃金改定の提案、アドバイス
  • 賃金改定に伴う社内規程・契約書等の作成、変更
  • 制度変更に伴う従業員説明会のサポート、文書作成
  • 不利益変更サポート
  • 労働基準監督署対応
  • 紛争発生時の労働者との交渉、労働審判、訴訟対応
  • 労働組合との団体交渉対応
  • 残業代対策も含めた継続的な労務管理のサポート(顧問契約)

お問い合わせ、初回相談は無料となっておりますので、残業代の問題でお悩みの企業様は、是非よつば総合法律事務所までお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

関連ブログ