解雇・退職トラブルについて

問題行動ばかりの従業員を解雇したい-こんなことでお悩みではないでしょうか。

問題のある従業員の雇用を継続することは、他の従業員のモチベーションにも関わる問題であり、ひいては、会社の存続にも関わる重大な問題です。

他方で、安易に解雇をしてしまうと、予期せぬ金銭的ダメージを会社が受けることもあります。ここでは、解雇に関する一般的なルールや会社が注意すべき点、当事務所でサポートできる内容について、お話させていただきます。

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1. 解雇に関する一般的なルール

我が国においては、労働者を解雇することは容易ではありません。労働者を「有効に」解雇することは容易ではない、という方が正確でしょうか。

解雇は、労働者の雇用契約を一方的に奪う行為であり、これが容易にできるとすれば、労働者の生活が著しく不安定となります。

そのため、労働契約法第16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定め、解雇に一定の縛りをかけています。

また、契約期間を定めて雇用した労働者(有期雇用労働者)を解雇する場合には、契約期間の定めのない労働者(いわゆる正社員)を解雇する場合よりも厳しく有効性が判断されることとなります。

契約期間が決まっている以上、その契約期間を前倒しで解消するには、より重大な理由が必要ということです。

労働契約法第17条は、有期雇用労働者の解雇については、「やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と定めており、より厳しい要件を会社に求めています。

なお、その他、解雇に関する一般的ルールとしては、以下のようなものがあります。

(1) 解雇予告

  • 解雇をする場合には、30日以上前に解雇の予告を行うか、30日の予告日数に不足する分の日数分の解雇予告手当を支払わなければならない(労働基準法第20条1項/除外認定等一部の例外はあり)。

(2) 解雇制限(解雇禁止)

  • いわゆる労災による休業期間中及び休業期間終了後30日間は、解雇できない(労働基準法第19条1項/打ち切り補償等の例外はあり)。
  • 産前産後を取得している女性の当該休暇期間中及び休暇期間終了後30日間は、解雇できない(労働基準法第19条1項)。

(3) 解雇理由証明書の交付

  • 労働者が解雇の理由についての証明書の交付を請求した場合には、遅滞なくこれを交付しなければならない(労働基準法第22条1項、2項)。

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2. 解雇の種類について

解雇は、大きく3つに分けることができます。

別の記事で詳しく解雇の種類を説明しているので、ここでは簡単にだけ説明します。

(1) 普通解雇

最もポピュラーな解雇です。能力不足や協調性不足等を理由に労働者を解雇する場合、この普通解雇を選択することが多いです(場合によっては懲戒解雇を選択することもあります)。

(2) 懲戒解雇

労働者の非違行為を理由に、いわば「ペナルティ」的に行う解雇です。これも様々な場面が想定されますが、例えば労働者が横領、窃盗をした場合、職場内で暴力事件を起こした場合、業務命令違反が著しい場合等は、この懲戒解雇が選択されることが多いという印象です。

懲戒解雇を行う際には、普通解雇とは異なる観点での注意が必要です。これもあっさりと説明しますが、①懲戒の事由・懲戒処分の内容が就業規則等で定められていること、②懲戒事由に該当する行為が行われたこと、③処分の内容が相当であること(他の労働者と平等に取り扱われており、かつ「行き過ぎた」処分ではないこと)、④解雇に先立ち、適性な手続(本人への弁明の機会の付与、就業規則上の手続の履践)が取られていること、といった要件を満たさなければ、懲戒処分は無効とされてしまう可能性が高いです。

(3) 整理解雇

会社の経営上の理由で行う解雇です。「リストラ」とも呼ばれます。厳密には普通解雇の一種ではありますが、有効となる要件(要素)が異なるため、別建てて整理されることが多いです。

上で見た普通解雇、整理解雇とは異なり、「会社の経営上」という、労働者本人を責めることのできない理由による解雇なので、この整理解雇は厳しく有効性が判断される傾向にあります。

これもあっさりとですが、①人員削減の必要性があり、②解雇を回避するための努力が十分に行われており、③解雇対象者の人選が合理的であり、④手続的に問題がない、といった要素を満たさなければ、整理解雇が無効とされる可能性が高いです。

3. 解雇事案で弁護士に相談・依頼する必要性

労働者を解雇したいと考えたときに、弁護士に相談・依頼する必要性は非常に高いと考えています。

理由は、①解雇自体のハードルが高いこと、②紛争化した場合の金銭的リスクが大きいこと、③解雇以外のリスクの少ない選択肢を検討できること、の3点です。以下見ていきます。

(1) ①解雇自体のハードルが高いこと

先に見た通り、解雇は、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当」でなければ無効とされます。更に、懲戒解雇、整理解雇等では、異なる要件・要素を満たすことも必要となります。

そして、解雇が有効となるためのハードルは、非常に高いのが実情です。

弁護士として解雇事案に関わっていても、「この事案で解雇が無効になるのか」という事案は非常に多いです。感覚的には、会社側が解雇したいと考えている事案で、解雇が有効と判断されそうな事案は、1割もありません。

このハードルを十分に理解しないまま解雇をしてしまうと、後述する大きな金銭的リスクを抱えてしまうこととなります。

事案の見通し、リスクを正確に把握した上で、「経営判断」として解雇を選択するためにも、労務に明るい弁護士に相談することが非常に重要と考えています。

(2) ②紛争化した場合の金銭的リスクが大きいこと

解雇が無効とされた場合、会社は、大きな金銭的リスクを負うこととなります。解雇が無効である以上、その労働者との雇用契約はずっと継続していたこととなります。

そして、会社が無効な解雇しなければ、その会社で労務を提供し、給与を受け取ることができたはずです。

この場合、会社理由により本人が労務を提供できなかったとして、原則として、解雇されて以降の期間の賃金請求権(バックペイなどと言われます)が発生することとなります。

解決までに時間がかかるほど、この金額は大きくなる傾向にあり、解雇事案で会社側に数百万円の解決金の支払いが命じられることは珍しくありません。こちらのブログのように、解雇が無効と判断され、会社に1億円を超える支払が命じられたケースもあります。

会社の方から、「解雇をする前に相談すれば良かった」というお話をよくいただきます。先の話とも被りますが、予期せぬ金銭リスクを抱えないためにも、事前に弁護士に相談することをお勧めしています。

(3) ③解雇以外のリスクの少ない選択肢を検討できること

労働者との雇用契約を解消する方法は、解雇のみではありません。

例えば、労働者に退職を勧め、これに労働者が応じた場合には、労使間の「合意」により退職となりますが、これは「退職勧奨」と呼ばれ、解雇ではありません。労働者の合意があるため、解雇と比べると、紛争リスクは非常に小さくなります。

勿論、退職勧奨は、労働者の合意が必要となるため、労働者が退職勧奨に応じない場合、強制的に退職させることはできません。ただ、退職勧奨を行い、労働者が退職に合意しない場合には、解雇を検討することもできます。

退職勧奨により合意退職となるケースもそれなりにありますので、解雇を選択する前に、よりリスクの少ない退職勧奨を選択することは、非常に合理的です。

ただし、退職勧奨を行う際にも、それが「勧奨」の範囲を超え、退職「強要」になってしまえば、実質的には解雇と異ならないとして、解雇と同じレールで判断されてしまうこととなります。

また、「いかに労働者が受け入れやすい退職勧奨を行うか」という点も重要で、退職勧奨に当たり、進め方のシナリオ等を作成することや、弁護士が退職勧奨の場に同席することもあります。

このように、適切に、かつ実効性のある形で退職勧奨を勧めるためには、勧奨に先立ち、弁護士に相談することが必要と考えています。

(4) 備考-紛争化してしまった場合の事後対応

これまでは、解雇に先立ち、弁護士に相談することの重要性をお話させていただきました。ただ、この記事を見ている企業様の中には、解雇後に弁護士から通知書が届いた、労働審判の申立、訴訟提起がされたというように、既に紛争化してしまった企業様も多いかと思います。

このような企業様は、できるだけ早めに、一度弁護士に相談することをお勧めします。先に述べた通り、解雇事案は、時間がかかるにつれて金銭的リスクが増大する傾向にあります。

また、例えば労働審判の申立がなされたケースでは、会社に十分な反論の時間が残されていないことも多く(詳しくはこちらのブログをご参照ください)、早期に反論の準備を行う必要があります。

会社の判断が正しかったことを法的に主張するため、また、金銭的リスクを最小限に食い止めるためにも、早期に弁護士に相談することが重要と考えています。



4 当事務所でサポートできる内容

(1) 解雇・退職問題の対応

当事務所では、440社以上の企業様より顧問契約を締結いただいており、従業員の解雇・退職問題についても、多くの取り扱い、解決実績がございます。

当事務所では、従業員の解雇・退職問題につき、以下のようなサポートを行うことが可能です。

初回相談は無料となっておりますので、ご興味のある企業様は、是非一度、お気軽にご相談ください。

  • 解雇の有効性、リスク判定
  • 解雇を行う場合のスケジュール、書面(解雇通知書、弁明の機会付与書)作成
  • 問題行動に対する指導・懲戒処分の書面作成、アドバイス(問題行動の証拠化)
  • 労働者からの質問に対する回答書作成
  • 退職勧奨シナリオ、退職勧奨NGワード集の作成
  • 退職勧奨への同席
  • 解雇、退職に関する紛争対応(交渉、労働審判、訴訟、団体交渉)

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(2) 当事務所の顧問契約の内容

当事務所では、企業様のニーズに合わせて、月額3万5千円(税込3万8千5百円)~15万円(税込16万5千円)の、4つの顧問プランをご用意しております。

解雇・退職問題に限らず、労務トラブルは、特に迅速な対応が必要です。また、労使間の些細なすれ違いが、最終的には大きな溝を生んでしまうこともあります。

顧問先企業様は、面談だけでなく、電話・メール・チャット等、適宜の手段ですぐに弁護士に相談することが可能ですので、適切なタイミングで弁護士に相談し、紛争を「予防」することが可能です。

ご興味のある企業様は、こちらも是非、お気軽にお問合せください。

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