「裁判所からいきなり、「労働審判手続申立書」なる書面が届いたのですが…」このようなご相談を受けることが、多くあります。
当事務所では、千葉県の企業様を中心に、労働審判の案件を多く取り扱っております。
今回は、労働審判とは何ぞや?というお話から、企業が行うべき初動対応まで、ブログを書いてみたいと思います。
1.労働審判とはどのような手続か?
非常にざっくりと言いますと、「早期かつ円満な解決のため、裁判所を通じ、労使双方で話し合いを行いましょう」というものです(ざっくり過ぎますね…。)。
裁判所を利用する手続ですが、裁判とは異なる手続で、以下の特徴を有しています。
- 早期解決を志向した手続である点
労働審判は、原則として3回以内の期日で審理が終結となるため、裁判と比して、早期に解決することとなります。初回の期日で解決することも多く、平均の審理期間も、3か月を下回る程度です。
他方、裁判の場合、期日が二桁以上となることも多々あり、解決までに1年以上かかる事件も多くあります。
紛争が早期に解決するという点は、労働者だけでなく、会社側にとっても、大きなメリットといえます(解決水準の問題、紛争対応コストの問題。特に解雇事案では、時間がかかればかかるほど、解決金の相場は高くなるのが通常です。)。 - 柔軟かつ円満な解決が実現できる点
労働審判では、裁判以上に、話し合いでの解決(調停成立)が重視されます。それ故、事案に応じ、柔軟な解決が可能と言えます。
勿論、裁判においても、判決まで至る事件はそれほど多くはなく、審理の途中で、適宜和解での解決が試みられます。しかし、ある程度両当事者の主張・立証が出揃うまでは、和解の話が出ないケースが通常です(裁判官によっても進行は異なりますが)。解決までに時間がかかるほど、また双方の主張がヒートアップするほど、円満な解決は困難となりますし、解決水準も高額になる印象を受けます。
2.会社のなすべき初動対応は?
労働審判は、会社側にとって、時間的に非常に厳しい手続です。
通常の訴訟の場合、初回の期日には出席せず、相手方の主張を争う旨を記載した答弁書を提出すれば、反論の準備期間を確保することができます。
他方、労働審判においては、早期解決という特徴から、初回期日への出席が必須であるだけでなく、すべての主張を初回期日までに出し切る必要があります。また、裁判所により指定された期日は、原則として延期・変更できないため、非常にタイトなスケジュール感となります。
私の経験したケースでも、ご相談いただいた時点で期日まで2週間を切っており、大急ぎで会社に赴いて関係者のヒアリング・証拠収集等を行い、期日に何とか間に合わせる形で書面提出、ということもありました。
形式的には、第2回期日の終了までに主張・証拠の提出を行わなければならないとされていますが、初回期日で合意がまとまるケースが多々あることを考慮すると、初回期日までにどれだけ準備をできるかが、解決を大きく左右するポイントです。
上記観点からすると、会社のなすべき初動対応は、「できるだけ早く弁護士に相談する」ことに尽きるかと思います。顧問弁護士がいなくても、顧問の社労士先生がいる場合には、まずは社労士先生にご相談いただき、知り合いの弁護士を紹介してもらうのが良いと思います。知り合いの弁護士がいない場合でも、どうにか早期に弁護士を探して、一度相談することをお勧めします。
3.おわりに
労働者(あるいはその代理人)から通知書が届く⇒交渉が決裂となり、労働審判の申立て、という流れを辿るのが通常であり、何の前触れもなく審判を申し立てられることは多くはありません。
①労使紛争を起こさないように社内規程を整備することや、②紛争が顕在化した初期段階での対応(交渉)が本来的には重要となりますが、労働審判を申立てられた場合には、いかに迅速に、適切に対応するかが重要となりますので、お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。