「自社に有利な契約書のひな型を使いたい」
「相手が作成した契約書に不利な点がないかしっかり確認したい」
この記事では不動産会社様にむけて、契約書を整備するメリット、売買や賃貸の契約書のポイントなどを解説します。
不動産分野は、詳しい弁護士と、そうでない弁護士がいます。悩んだら、まずは詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。
1. 不動産会社様でよく使う契約書
売買契約書
不動産業界でよく登場するのが売買契約書です。不動産の売買には、土地の売買や建物の売買があります。借地権などの売買もあります。
不動産は売買代金が高額です。そのため、売買契約を結んだ後にトラブルになることも多いです。
契約書の内容を事前にしっかりと精査しておく必要があります。
賃貸借契約書
不動産業界でよく使うのが賃貸借契約書です。建物や土地の賃貸借契約をするときに作成することが多いです。
特に、建物の賃貸借契約や建物所有目的の土地の賃貸借契約は借地借家法が適用されます。
借地借家法は賃借人が不利にならないために作られた法律です。
そのため、賃貸人に有利に契約書を作ってしまうと、借地借家法に違反して無効になることもあります。注意が必要です。
その他の契約書
不動産業界においては、その他にも賃貸物件の管理委託契約や契約解約の際の合意書など、さまざまな契約書を作成します。
書面を取り交わすということは当事者で約束をするということです。内容には注意が必要です。
2. 契約書を整備するメリット
契約書を整備すると次のようなメリットがあります。
- ① 相手と契約内容の相互理解ができる
- ② 法的リスクを回避できる
- ③ 自社のビジネスに有利な契約書で進められる
① 相手と契約内容の相互理解ができる
契約を締結するときは契約書を作成することが多いです。もっとも、契約をするときに契約書を作成しなければならないという法律はありません。
口約束であっても当事者の意思が合致すれば契約は成立します。
では、なぜ契約書を作成する必要があるのでしょうか?
契約書を作成することにより、次のようなメリットがあります。
- 契約の成立を明確にすることができるメリット
- 契約内容を双方でしっかりと理解することができるメリット
契約の成立を明確にすることができるメリット
契約書を作成する大きな目的は、当事者で契約が成立したことを証明することです。
たとえば、売買契約書があれば「売ってもらった」「売ってない」という争いごとは普通は起こりません。
契約内容を双方でしっかりと理解することができるメリット
契約書を作成することで、当事者が約束をした内容を明確にできます。
たとえば、売買契約では、対象となる不動産、売買代金、支払い期限、所有権移転時期など、さまざまな取り決めをします。
契約書に当事者の取り決めを記載しておけば、どのような内容で契約するのかを明確にできます。すなわち、勘違いや争いの発生を予防できるのです。
② 法的リスクを回避できる
どのような契約をするかは原則として自由です。すなわち「どのような契約内容にするか」は、法律に抵触しなければ自由に決めることができます。
そのため、契約の当事者は自らにとって有利にも不利にも契約の内容を修正できます。
契約書を整備しておくと、自らに有利な契約書を作成したり、不利な契約書の作成を回避したりできます。さまざまな法的リスクを回避できます。
③ 自社のビジネスに有利な契約書で進められる
世間に出回っている書式を使って契約書を作成することは簡単にできます。しかし、書式はあくまでも中立的な内容になっていることが多いです。
また、個別具体的な事情を反映した内容にはなっていません。
弁護士が確認をした契約書を使うことにより、自らのビジネスに有利な契約書とすることができます。
3. 売買契約書のチェックポイント
不動産売買契約書にはさまざまなチェックポイントがあります。
ここでは代表的なチェックポイントである契約不適合責任、危険負担、現況引き渡しの合意、手付について解説します。
契約不適合責任のチェックポイント
契約不適合責任とは
あらかじめ契約で目的物について取り決めた内容に適合しないものの引き渡しを行った場合、民法の規定により契約の解除や損害賠償請求、追完請求、代金減額請求をできます。
これらの請求をできるのは、原則として契約不適合を知ってから1年以内に相手方当事者に通知をしたときに限られます。
契約不適合責任の具体例
契約不適合責任が問題となる具体例は次のとおりです。
- 売買した土地の中にコンクリート等の地中埋設物があったり、土壌汚染があったりしたとき
- 購入した建物の中で自殺が起きた事故物件であったとき
- 中古物件を購入したらシロアリ被害が発生していたとき
契約不適合責任の修正例
契約不適合責任は当事者の合意で民法の規定と異なる取り決めをしてもいい規定です。任意規定といいます。
そのため、たとえば売主に有利にするのであれば、法律に違反しない範囲で次のような変更が考えられます。
- 契約不適合責任を追及できる期間を短くする変更
- 一定の例外を除いて契約不適合責任を負わないという変更
危険負担のチェックポイント
危険負担とは
危険負担とは、売買などの契約が成立した後に、当事者の責任とは言えない原因に基づいて目的物が滅失や毀損などした場合において、そのリスクを当事者のいずれが負担するのかという問題です。
建物の場合、民法では引き渡しとともに危険の負担は買主に移転します。
危険負担の具体例
たとえば、建物の売買契約を締結した後に落雷で建物が全焼してしまい、建物を引き渡すことができなくなった場合で考えてみます。
建物の引き渡し前であれば、売主が危険を負担します。つまり、買主は売買代金を支払う必要がありません。
他方、建物の引き渡し後であれば、買主が危険を負担します。つまり、買主は売買代金を支払う必要があります。
危険負担の修正例
危険負担は当事者の合意で民法の規定と異なる取り決めをしてもいい規定です。
たとえば、契約書を作成した後決済までの危険は買主が負担するという規定にすれば、売主に有利な契約となりえます。
現況引き渡しの合意のチェックポイント
土地の売買契約書には売買代金と土地の面積の記載があることが多いです。
そして、面積は不動産登記を参考にして記載することがあります。しかし、不動産登記に記載のある面積が実際の面積とズレていることもしばしばあります。
土地を購入した後に買主が測量してみたところ、売買契約書に記載されていた面積よりも小さかったということになると、紛争が発生してしまいかねません。
そこで、不動産の売買代金を固定して、契約締結後に面積が契約書記載の面積と異なっていても金銭の精算をしないという合意をすることがあります。
後になって面積が異なっていたことが判明したことによる紛争発生を防止できます。
手付のチェックポイント
不動産の売買契約を締結するときは、手付金を支払うことが多いです。契約時に一定金額を買主が売主に支払います。
この手付には①証約手付②解約手付③違約手付の以下の3つの意義があります。
① 証約手付
不動産売買が成立したことを証するためのものです。
② 解約手付
当事者に解約権を留保させるためのものです。具体的には、売買契約が成立した後であっても、一定の期限までは、売主が手付金の倍額を支払うか、買主が手付金を放棄することで契約を解約できます。
③ 違約手付
債務不履行が生じたときに、買主の不履行であればその手付が没収されるものです。売主の不履行であれば手付金を買主に返還するとともに同額を違約金として支払うという規定もあります。
手付金の性質を記載することが重要
手付金が支払われている場合、当事者が特段取り決めをしていなければ、解約手付となります。
もっとも、当事者の一方が債務不履行をしたときは損害賠償ができますが、損害がいくらかを立証することは必ずしも容易ではありません。
そこで、損害賠償額を定額で争いのないものとするためには、手付金の性質が違約手付であることを明記することが有効です。
4. 賃貸借契約書のチェックポイント
建物賃貸借契約にはさまざまなチェックポイントがあります。
ここでは代表的なチェックポイントである原状回復、連帯保証人、使用目的や禁止事項について解説します。
原状回復
借主が賃貸物件を退去するとき、建物の原状回復の費用について争いになることがしばしばあります。
経年変化や通常損耗は貸主が負担するのが原則です。通常の使用を超える使用による損耗などは借主が負担するのが原則です。
しかし、特約で定めることにより、法律上は貸主が負担すべき費用を借主に負担してもらうことができることがあります。
原状回復費用は争いの種になることが多いです。契約書にどの範囲を誰が負担するのか明記しておくことが重要です。
連帯保証
賃貸借契約を締結するとき、賃料などの支払について連帯保証人をつけることが多いです。
連帯保証人をつけるときは、契約書に連帯保証人が負担する金額の上限を定めておく必要があります。上限が決まっていないと連帯保証が無効となってしまいます。
使用目的や禁止事項
建物を貸したところ、後になって想定していなかった使い方をされたということはよくあります。
貸主として許容できる使用方法であれば良いのですが、建物自体の価値を低下させてしまう使用方法ですと困ってしまいます。
賃貸借契約書に使用目的や禁止事項を明記しておけば、違反したときに賃貸借契約の解除をしやすくなります。紛争が予防できます。
よつば総合法律事務所のサービス内容
賃貸借契約書や売買契約書などのひな型を手に入れることは簡単です。
ただ、ひな型は当事者のどちらかに有利になっているというよりも、中立的な内容が多いです。
契約書の内容は自社に有利にも不利にもできます。一般的なひな型を使って契約をしているときは、定期的に内容を見直してみましょう。
リスクが減ったり、自社に有利になったりするかもしれません。
よつば総合法律事務所では、多数の不動産会社様と顧問契約をしています。また、宅地建物取引士の資格がある弁護士も在籍しています。
契約書のことで気になることがあるときは、よつば総合法律事務所までお問い合わせ下さい。