1. 固定残業代制度とは
「毎月固定の金額を残業代として支払っています。このような残業代の支払い方法に問題はありますか?」という相談は多いです。
このような毎月一定の金額を残業代として支払う制度を、「固定残業代」「定額残業代」「みなし残業代」などと言います。
この記事では、企業様に向けて、固定残業代についての裁判所のルール、トラブルの解決方法、トラブルの予防方法などを、具体例を踏まえて人事労務の問題に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。
固定残業代のルールは複雑で、判断を誤ったときのリスクは会社全体を揺るがすものになりかねません。悩んだら、まずは人事労務に詳しい専門家へのご相談をおすすめします。
2. 固定残業代制度の問題点
2.1 不明確な役職手当は固定残業代にならないこと
固定残業代を導入している会社は多いです。しかし、実は残業代請求の超典型論点と言ってよいほど、多くの争点や問題点があります。
たとえば、次の事例で検討してみましょう。
- 基本給25万円とは別に、役職手当として9万円が支給されており、雇用契約書にもその旨明記されていた。
- 役職手当は、一定の役職者に対してのみ支払われており、賃金規程には、「役職手当は、一定の職責以上にある者に対し、その職責の大きさに応じて支給する」との記載があった。
- 会社としては、役職者は労働時間が長くなることも踏まえて、残業代の代わりに役職手当を支給している想定であった。
- 月の平均所定労働時間は170時間であった。
- 1月当たり平均で40時間の時間外労働をしていた(深夜残業・休日勤務はなし)。
会社としては、「残業代の代わりに役職手当を支給している想定」でした。
そのため、この役職者から残業代請求を受けたときは、「少なくとも毎月9万円は残業代として支払い済みである」と主張したいところです。
しかし、この前提事実のみだと、ほぼ100%会社が負けます。
しかも、この事案で、仮に労働者から残業代請求を受けたときは、360万円の残業代を支払わなくていけない可能性が高いです。計算は次のとおりです。
(1) 1か月あたりの未払残業代は10万円
(基本給25万円+役職手当9万円)÷170時間(月所定平均労働時間)×1.25×40時間=10万円
(2) 残業代の時効は3年間
(3) 10万円×36ヶ月=360万円
2.2 不明確な役職手当による会社へのダメージは大きいこと
不明確な役職手当による会社へのダメージは大きいです。
適切な制度設計をしていれば、基本給25万円と残業代9万円の合計34万円を支払えば十分でだったかもしれません。
しかし、不明確な役職手当を9万円と決めてしまうと、実質的には「基本給34万円」と同じ扱いになってしまいます。そのため、未払残業代が360万円も発生するという結論になってしまうのです。
3. 裁判所のルールを正確に理解することが大切
3.1 固定残業代を有効にするための3要件
固定残業代の制度を適切に設計・運用するためには、法律や裁判所のルールを正確に理解することが大切です。
法律上の大原則は、実労働時間に応じて残業代を計算して支給するということです。
固定残業代の仕組みが許されないわけではありません。固定残業代制度を導入している会社が、一律に裁判に負けるというわけでもありません。
もっとも、固定残業代が有効となるには、複数の要件を満たす必要があるのです。
具体的には、①労働者・会社間の合意があり、②当該手当が時間外労働の対価として支払われていることが必要と考えられています。また、少し異なる要素として③想定されている残業時間が長すぎないかが検討されることもあります。
3.2 要件①:労働者・会社間の合意があること
固定残業代が有効になるためには、労働者と会社での合意が必要です。
具体的には、特定の手当を残業代として支給することについて、労働者と会社との間で合意が存在することが必要です。
たとえば、入社時に雇用契約書や労働条件通知書を交付していなかった場合、それだけで、合意の成立自体が否定されるケースも多いです。
合意は口頭でも成立します。もっとも、争いになった時点で、雇用契約時の合意を証明することは非常に困難です。
そもそも、労働条件を書面などで明示することは、会社の法律上の義務です(労働基準法15条1項)。裁判所も、法律上の義務を果たしていない会社に対しては、厳しい目線を持っています。
労働者の入社時には、必ず雇用契約書や労働条件通知書を作成しましょう。
就業規則や賃金規程の内容や周知にも注意が必要
就業規則や賃金規程も、合理性があり、労働者に周知されていれば、労働条件(労働契約の内容)になります。
そのため、雇用契約書などがなくとも、賃金規程などに、「〇〇手当は時間外割増賃金として支給する」との記載があれば、労働者・会社間の合意の根拠となりえます。
ただし、雇用契約書がないと、労働者側から「賃金規程が周知されていない」「入社時に賃金規程の説明を受けていない」などと争われることも多いです。
たとえば、「職能手当を30時間分の時間外割増賃金として支払う」旨を賃金規程で定めていたものの、賃金規程が従業員に周知されていなかったことを理由に、労働契約の根拠とならないと判断している裁判例もあります。(東京地方裁判所令和3年9月28日判決)
就業規則や賃金規程の内容を再度確認すると共に、規程を労働者に周知しているかどうかも併せて確認しましょう。
3.3. 要件②:当該手当が時間外労働の対価として支払われていること(対価性)
固定残業代が有効になるためには、当該手当が時間外労働の対価として支払われていること(対価性)が必要です。
冒頭の事例では、「基本給25万円+役職手当9万円で月額34万円」が支給されていました。そして、この会社の賃金規程において役職手当は、「一定の職責以上にある者に対し、その職責の大きさに応じて支給する」ものと定められていました。
賃金規程の記載内容を前提とすると、役職手当は「職責の大きさ」という趣旨・要素で支給されている手当となります。この趣旨・要素を踏まえると、役職手当が時間外労働の対価として支払われていると評価することはできず、対価性の要件を満たすことはできません。
役職手当は時間外割増賃金というニュアンスの規程がある場合
では、少し事例を変えて、賃金規程に、「役職手当は、一定の職責以上にある者に対し、その職責の大きさに応じて支給する。なお、役職手当は、当該役職者の時間外割増賃金として支給されるものである。」との記載があった場合はどうでしょうか?
実はこの事案も非常に微妙です。
「時間外割増賃金として支給される」との記載がある一方で、「職責に応じて支給する」との記載もあり、手当の趣旨が混同されていることが理由です。
手当の趣旨が混同されていると、結局、「当該手当のうち、どの部分が割増賃金なのか」を明確に判断することができないため、対価性が否定されてしまいます。
「役職手当」との名称も、時間外労働ではなく、役職・職責に着目して支給される手当という印象を持たれてしまうでしょう。
裁判例にも、対価性の要件を否定する理由として、手当の名称を挙げているものがあります。たとえば、次のような名称の手当について対価性の要件が否定されています。
- 無事故手当(大阪地方裁判所平成25年4月19日判決)
- 管理職手当(大阪地方裁判所平成8年10月2日判決)
- 出張手当・会議手当(大阪高等裁判所平成12年6月30日判決)
業務手当が割増賃金として認められて、固定残業代が有効となった事例
では、時間外労働と一見関係なさそうな名称の手当の場合、有効な割増賃金の支払いとは認められないのでしょうか?
入社時の書類や賃金規程の内容次第では、業務手当などの名称でも有効な割増賃金の支払いとして認められることがあります。
たとえば、毎月10万1000円の業務手当が有効な割増賃金の支払いと判断された事件として、日本ケミカル事件をご紹介します。(最高裁判所平成30年7月19日判決)
事案の概要
この事件では、毎月支給されていた10万1000円の「業務手当」が、割増賃金の支払として有効かが争われました。
裁判所は、入社時の書類や賃金規程の内容などを踏まえ、業務手当は時間外労働の対価として支払われていたと評価し、有効な割増賃金の支払いと判断しました。
裁判所の認定事実
- 雇用契約書には、「月額562,500円(残業手当含む)」、「給与明細書表示(月額給与461,500円 業務手当101,000円)」との記載があった。
- 採用条件確認書には、「月額給与 461,500」、「業務手当 101,000 みなし時間外手当」、「時間外勤務手当の取り扱い年収に見込み残業代を含む」、「時間外手当は、みなし残業時間を超えた場合はこの限りではない」との記載があった。
- 賃金規程には、「業務手当は、一賃金支払い期において時間外労働があったものとみなして、時間手当の代わりとして支給する。」との記載があった。
裁判所の判断
※上告人=会社 被上告人=労働者
- 「本件雇用契約に係る契約書及び採用条件確認書並びに上告人の賃金規程において、月々支払われる所定賃金のうち業務手当が時間外労働に対する対価として支払われる旨が記載されていた。」
- 「上告人の賃金体系においては、業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるものと位置付けられていたということができる。」
- 「さらに、被上告人に支払われた業務手当は、1か月当たりの平均所定労働時間(157.3時間)を基に算定すると、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり、被上告人の実際の時間外労働等の状況~と大きくかい離するものではない。」
- 「これらによれば、被上告人に支払われた業務手当は、本件雇用契約において、時間外労働等に対する対価として支払われるものとされていたと認められるから、上記業務手当の支払をもって、被上告人の時間外労働等に対する賃金の支払とみることができる。」
3.4 要件③:想定されている残業時間が長すぎないこと
固定残業代が有効となるには、①労働者・会社間の合意があり、②当該手当が時間外労働の対価として支払われていることが必要です。
また、①②の要件とは全く別の目線で、「想定されている残業時間が長すぎる」と、それだけで会社が負けることがあります。
少しわかりづらいので、次の事例で検討してみましょう。
- 基本給18万7000円とは別に、時間外手当として15万3000円が支給されており、雇用契約書にもその旨明記されていた。
- 賃金規程には、「時間外手当は、支給対象労働者の割増賃金(時間外・深夜労働)の対価として一定額を支給するものである。支給金額は、労働者ごとに個別に定める。」との記載があった。
- 月の平均所定労働時間は170時間であった。
- 1月当たり平均で40時間の時間外労働をしていた(深夜残業・休日勤務はなし)。
割増賃金の対価として時間外手当を支給することについての労働者の同意はあり、手当の趣旨も明確であるため、①の労働者・会社間の合意の要件、②の対価性の要件のいずれもクリアできそうです。
ただし、「15万3000円」という金額が大きなネックとなります。15万3000円は、「約111時間の残業代」に相当する金額です。
18万7000円(基本給)÷170時間(月平均所定労働時間)=1100円(時給単価)
15万3000円÷(1100円×1.25)=111.3時間
現在の労働基準法では、労働時間の上限規制が設けられています。通常の企業であれば、月平均80時間を超えて残業させることはできませんし、1ヶ月で100時間以上残業させることはできません。
しかし、111時間の残業代は、この労働基準法の上限規制に真っ向から反する条件設定となってしまっています。
違法な長時間労働を想定した条件設定のため、固定残業代が有効とならなかった事例
固定残業代から導かれる想定時間が長時間であることを理由として、会社が敗訴している裁判例もあります。
たとえば、違法な長時間労働を想定した条件設定を理由として会社が敗訴した事件として、イクヌーザ事件をご紹介します。(東京高等裁判所平成30年10月4日判決)
事案の概要
アクセサリー等の企画・販売等を営んでいる会社の残業代請求事件です。
会社は、毎月支給している8万8000円~10万円弱(80時間程度の残業代に相当)の固定残業代が、有効な割増賃金の支払いであると主張しました。
しかし、裁判所は、このような長時間労働を前提とした固定残業代は、労働者の健康を損なう危険のあるものであり、公序良俗に反し無効と判断しました。
裁判所の判断部分
- 「本件固定残業代の定めは、基本給のうちの一定額を月間80時間分相当の時間外労働に対する割増賃金とすることを内容とするものである。」
- 「厚生労働省は、業務上の疾病として取り扱う脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」として、「発症前1か月におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できることを示している。」
- 「このことに鑑みれば、1か月当たり80時間程度の時間外労働が継続することは、脳血管疾患及び虚血性心疾患等の疾病を労働者に発症させる恐れがあるものというべきであり、このような長時間の時間外労働を恒常的に労働者に行わせることを予定して、基本給のうちの一定額をその対価として定めることは、労働者の健康を損なう危険のあるものであって、大きな問題があるといわざるを得ない。」
- 「そうすると、実際には、長時間の時間外労働を恒常的に労働者に行わせることを予定していたわけではないことを示す特段の事情が認められる場合はさておき、通常は、基本給のうちの一定額を月間80時間分相当の時間外労働に対する割増賃金とすることは、公序良俗に違反するものとして無効とすることが相当である。」
3.5 実際の残業時間と想定される残業時間の乖離に注意
実際の残業時間と想定されている見込み残業時間との乖離にも注意が必要です。
たとえば、実際の残業時間と想定されている見込み残業時間が次のとおりだとします。
- 実際の残業時間は月40時間
- 想定されている見込み残業時間は月111時間
このように、実際の残業時間と、見込み残業時間との乖離が大きい場合、①労働者・会社間の合意が否定される可能性があります。
また、乖離が大きい場合、②当該手当が時間外労働の対価として支払われているということが否定される可能性があります。
実態と制度の乖離を理由として固定残業代が有効とならなかった事例
実際の残業時間と、見込み残業時間との乖離が大きいことを理由として、会社が敗訴している裁判例もあります。
たとえば、月80時間が実際の残業時間、見込み残業時間が月180時間という大幅な乖離があったこと等を理由として会社が敗訴した事件として、熊本総合運輸事件をご紹介します。(最高裁判所令和5年3月10日判決)
事案の概要
トラック運転手の残業代請求事件です。
論点は多岐にわたりますが、裁判所は、実際の勤務状況(平均約80時間)と固定残業代として想定している労働時間(約180時間)との大幅な乖離も理由に、会社が支払っていた固定残業代は、有効な割増賃金の支払いに当たらないと判断しました。
裁判所の判断部分
※上告人=労働者
「上告人については、上記19か月間を通じ、1か月当たりの時間外労働等は平均80時間弱であるところ~、本件割増賃金が時間外労働等に対する対価として支払われるものと仮定すると、実際の勤務状況に照らして想定し難い程度の長時間の時間外労働等を見込んだ過大な割増賃金が支払われる賃金体系が導入されたこととなる。」
実態と制度の乖離が大きくないこと等を理由として、固定残業代が有効となった事例
日本ケミカル事件では、実労働時間と見込み残業時間との乖離が大きくないことが、対価性を肯定する要素として考慮されています。(最高裁判所平成30年7月19日判決)
裁判所の判断部分
「さらに、被上告人に支払われた業務手当は、1か月当たりの平均所定労働時間(157.3時間)を基に算定すると、約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当するものであり、被上告人の実際の時間外労働等の状況~と大きくかい離するものではない。」
実態と制度の乖離を大きくしないことが重要
実際の残業時間と、見込み残業時間との乖離が大きいと、固定残業代制度が有効になりにくくなります。
他方、実際の残業時間と、見込み残業時間との乖離が小さいと、固定残業代制度が有効になりやすくなります。
そのため、制度設計の際は、実態と制度の乖離を大きくしないことが大切です。
3.6 雇用契約書と就業規則の内容の不一致に注意
固定残業代固有の問題ではありませんが、雇用契約書と就業規則・賃金規程の内容が一致していないのは非常に危険です。
労働契約法は12条で、就業規則の最低基準効を定めています。
(就業規則違反の労働契約)
第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。
要は、「就業規則より不利な条件を個別の労働契約で定めても無効であり、就業規則の定める条件が優先される」というものです。
他方、就業規則より有利な条件を個別の労働契約で定めた場合には、個別の労働契約が優先されます。
結局のところ、就業規則と個別の雇用契約を比較し、労働者に有利な条件が必ず適用されることとなります。
就業規則の記載を理由として、固定残業代が有効とならなかった事例
就業規則と雇用契約書の記載内容が異なっているのは危険です。
たとえば、就業規則の記載と雇用契約書の記載内容が異なっていること等を理由として、雇用契約書に記載の固定残業代が有効とならず会社が敗訴した事件として、社会福祉法人セヴァ福祉会事件をご紹介します。(京都地方裁判所令和4年5月11日判決)
事案の概要
労働契約書の基本給額の欄には、「1か月あたり15時間分の時間外割増賃金が含まれる」旨の記載がありましたが、裁判所は就業規則の最低基準効を理由に、有効な割増賃金の支払いと認めませんでした。
裁判所の判断
※被告=会社
- 「被告は、本件労働契約書記載の基本給額には、1か月あたり15時間分の時間外割増賃金が含まれていることから、時間外・深夜割増賃金を算定する際の基礎となるのは、本件労働契約書に記載されている基本給額から時間外割増賃金額を控除した金額と主張する。」
- 「しかしながら、本件年俸規程4条、6条によれば、基本給はその全額が時間外・深夜割増賃金の算定の基礎となるものとされていることから、かかる基本給の中に1か月あたり15時間分の時間外割増賃金が含まれているかのような本件労働契約書の記載は、就業規則の最低基準効に抵触し、無効と解するのが相当である(労働契約法12条)。」
4. 会社が注意すべき重要なポイント
では、固定残業代を導入・運用するために会社として注意すべき重要なポイントはどのような点でしょうか?
会社としては①労働者・会社間の合意があること、②当該手当が時間外労働の対価として支払われていること(対価性)、③想定されている残業時間が長すぎないことの3点をきちんと説明できるようにしておきましょう。
具体的には、次のチェックリストをご確認ください。
① 労働者・会社間の合意があること
☑「特定の手当を残業代として支給すること」を記載した書面(雇用契約書・労働条件通知書など)を入社時に必ず交付する。
※書面がないと合意の立証は難しい。
※就業規則・賃金規程のみでは厳しい。
② 当該手当が時間外労働の対価として支払われていること(対価性)
☑雇用契約書・賃金規程などで、当該手当が「時間外労働の対価として支払われるものであること」を明確化する。
※様々な手当の趣旨が混合してしまうことを避ける。
☑手当の名称に注意する。
※「時間外手当」「割増手当」「残業手当」などがよい。
※「管理職手当」「役職手当」「無事故手当」「出張手当」など、時間外労働と異なる要素が含まれそうな名称の手当はできるだけ避ける。
③ 想定されている残業時間が長すぎないこと
☑支給金額から導かれる「見込み残業時間」が80時間を超えないようにする。
※80時間を超えるとそれだけで無効とされるリスクがある。
※現行の労基法の規制を踏まえると、45時間を超える見込み残業時間を設定することも、一定のリスクがある。
☑実際の残業時間と、「見込み残業時間」との乖離を可能な限り少なくする。
※乖離が大きいと、①有効な合意がない、②手当が残業代の対価ではないとされてしまう可能性がある。
5. 労働者から残業代請求を受けたときの対応策
5.1 残業代を支払済であると3つの要件を踏まえて証拠を元に主張
労働者から残業代請求を受けたときの一般的な対応は、残業代請求の通知書が届きました。支払わなければいけないのでしょうか?をご確認ください。
固定残業代を採用している会社が残業代請求を受けた場合、有効な残業代の支払いであることを、次の3つの要件を踏まえて証拠を元に主張しましょう。
要件①:労働者・会社間の合意があること
要件②:当該手当が時間外労働の対価として支払われていること(対価性)
要件③:想定されている残業時間が長すぎないこと
5.2 給与体系全般の見直しを検討
個別の労働者との残業代をめぐるトラブルが解決しても、会社の給与体系などに問題があれば、同じような請求が今後も続く可能性があります。
そのため、給与体系の見直しなどが必要です。
もっとも、固定残業代には様々な落とし穴があります。①労働者の合意や②対価性に気を付けて、しっかりした雇用契約書を作成しても、実労働時間と見込み残業時間との乖離が大きくなれば、それだけで有効性が否定される可能性も出てきます。
そのため、弁護士としては固定残業代の導入は積極的にはおすすめできません。給与体系の全般的な見直しを検討した方がよいケースも多くあります。
いずれにしても、固定残業代の導入や運用は、詳しい専門家に相談しながらすすめましょう。
6. まとめ:固定残業代のトラブルや給与体系改訂は専門家に相談
固定残業代のルールは複雑です。個別のトラブルや給与体系の改訂が、会社全体を揺るがすものになりかねません。
そのため、固定残業代の個別のトラブルや給与体系改訂に悩んだら、まずは人事労務に詳しい専門家へのご相談をおすすめします。







