会社側の立場で労働事件を多数取り扱っております(従業員の方からのご依頼は一部の例外を除き原則としてお取り扱いしておりません。)

紛争予防策も対応可能です。

取扱い分野

労務トラブル解決の流れ

弁護士に相談するメリット

1. 法律上のトラブルの発生を予防できる。

弁護士に気軽に相談することが出来れば、トラブルが発生する前にそれを予防することができる場合があります。例えば、問題がある従業員に対して弁護士のバックアップの下で適切に対応し、トラブルの発生を防いだり、最終的に話し合いで円満に退職をしてもらえる可能性があります。また、会社の制度上問題がある部分について、契約書や就業規則などを整備することでトラブルの発生を防げることもあります。

業種や会社規模によって起きやすいトラブルもありますが、現在弊所と顧問契約をご契約頂いている企業様は規模や業種が様々ですので、これまで培った顧問業務の知識経験を踏まえ、トラブル防止の先手を打てる場合があります。

2. 法律上の考え方を踏まえ、早期に解決できる可能性がある。

法律上の考え方がわからないと、法律上の考え方と違う対応をしてしまい、強い抵抗を受けたり、裁判になってしまうなど、余計問題をこじらせてしまうことがあります。

また、トラブルが発生した場合に「仮に裁判等になった場合にどういう結論になりそうか」という見通しがわからないと、解決の落としどころがわからず、同様に問題をこじらせてしまうことがあります。
労働問題についてある程度知識や経験がある弁護士に依頼すれば、これらの部分の不足を補い、問題をより早期に解決できる可能性があります。

3. トラブル終了時に同様のトラブルが発生しないような対策をとることができる。

労働問題は、ちょっとしたことを事前に気を付けていれば防げることがあります。また、完全に防ぐまではいかなくても、ちょっとした工夫を日頃からしておけば、いざというときに交渉を有利に進められる場合があります。

そのため、一度トラブルを経験してしまっても、その経験を生かして今後の対応に気を付ければ、将来同種のトラブルを防いだり、有利に解決することができます(反対に、ここがきちんとできないと、同様のトラブルが何度も起きる可能性があります)。

トラブル解決を依頼した弁護士は、どうしたらこのような問題がそもそも起きなかったのかを一番よく把握しているのが通常ですので、将来の同種トラブル対策の場面でも役に立ちます。また、当事務所は各専門士業の方々との連携も充実しておりますので、必要に応じて外部の他の専門家の協力も得ることが可能です。

よつば総合法律事務所が選ばれる理由

千葉県最大級の法律事務所

事務所の規模

当事務所は弁護士16人、スタッフ16人の32名体制の事務所です。千葉県内に支店がある事務所と比較しても千葉県での規模は最大クラスです。

事務所の実績

企業法務の相談・解決実績
累計相談実績 2,000件超
累計解決実績 1,000件超
年間相談実績 300件超(2017年)
年間解決実績 120件超(2017年)
全体の相談・解決実績
累計相談実績 14,000件超
累計解決実績 4,200件超
年間相談実績 1,800件超(2017年)
年間解決実績 500件超(2017年)

顧問会社数100社超で千葉県最大クラスの顧問会社数

  • 千葉県・東京都・茨城県・埼玉県などを中心に100社以上の顧問会社と契約をさせていただいています。千葉県の法律事務所の中では最大クラスの顧問会社数です。
  • 柏法人会顧問弁護士や柏商工会議所経営安定特別相談員・法律専門相談担当など各種公的な団体の顧問弁護士や専門相談担当をしています。

交渉・労働審判・裁判・労働組合対策・団体交渉など幅広く対応可能

  • 交渉のみならず、労働審判・裁判などの裁判所を利用した手続きに関して皆様を代理し戦います。
  • 労働組合対策、団体交渉対応はお取り扱いしている弁護士が少ない分野ですが、当事務所では積極的に対応しています。

労働問題に特化した弁護士が在籍

  • 労務問題に特化した専門チームの弁護士が専任で対応します。
  • 各事案につき専門チームでの検討会を所内で開催し、よりよい解決方法をご提案します。
  • 労働問題に関するセミナー・勉強会講師を多数行っています。

他士業の専門家と連携した問題の解決

  • 労働問題の解決のためには弁護士だけではなく、社会保険労務士や税理士などの専門家との連携も必要です。当事務所では社会保険労務士や税理士などの他士業の専門家と連携して問題を解決します。
  • 所内に税理士資格、社会保険労務士資格を有する弁護士が在籍しています。

人事労務問題Q&A

解雇問題のQ&A

解雇する場合にはどのような手続きが必要ですか

第1 手続き

1. 就業規則への解雇事由の列挙

就業規則において「解雇の事由」を絶対的記載事項とされ、解雇の事由をあらかじめ明示する必要があります(労基法89条3号)。

また、会社は、労働者に対し労働条件の明示が定められ、労働条件の一項目として解雇の事由の明示も求められています(労基法15条1項労基法規則5条4号)。

2. 解雇予告について

使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労基法20条1項)。

3. 解雇権濫用法理について

労契法16条に、解雇権濫用法理が定められました。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります。

4. 解雇禁止期間

以下の例の場合など、特別の事由がある場合の解雇禁止が定められています。

  • 産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇の禁止(労基19条1項)
  • 国籍・信条・社会的身分による不利益取扱としての解雇の禁止(労基法3条)
  • 不当労働行為としての解雇の禁止(労組7条1号4号)。
  • 雇用機会均等法による解雇の禁止
  • 育児・介護休業法による解雇の禁止
  • パートタイム労働法による解雇の禁止
  • 労働保護立法の違反の申告をしたことを理由とする解雇の禁止(労基法104条2項)
  • 個別労働関係紛争促進法による解雇の禁止
  • 公益通報をしたことを理由とする解雇の禁止

第2 解雇権濫用法理について – 成績不良社員の解雇

成績不良社員の解雇は、どのような場合に認められるのでしょうか。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。そして、成績不良社員の解雇においては、裁判例等で、長期雇用・長期勤続の実績に照らして単に成績が不良というだけでなく、それが企業経営に支障を生ずるなどして企業からは排斥すべき程度に達していることを要するとされています。

そのため、労働能率、勤務成績不良に関する使用者の客観的な評価だけでなく、労働能力勤務成績向上のために指導注意などを行ったか、人事管理に不適切なところはなかったか、採用時に特段の能力があることを条件としていたか、他に配置する部署が存在したか、本人の雇用を継続することによって、会社業務の正常な遂行に与える影響は大きいか等の諸要素について立証する必要があります。

第3 解雇権濫用法理について – 整理解雇の法理

整理解雇は、どのような場合に認められるのでしょうか。

解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。そして、整理解雇においては、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務を尽くしたこと、③被解雇者選定の妥当性、④手続きの相当性の4つの要素から判断されるのが通常です。

  1. 人員削減の必要性については、人員削減の実施が不況、斜陽化、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていることを立証する必要があります。
  2. 解雇回避努力義務を尽くしたことについては、人員削減を行う前に、使用者は配転、出向、希望退職の募集等、他の手段によって解雇回避の努力をしたことを立証する必要があります。
  3. 被解雇者選定の妥当性については、使用者は客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して選定したことを立証する必要があります。
  4. 手続きの相当性については、使用者は労働組合や労働者に対して、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき、納得を得るために説明を行い、さらにそれらの者と誠意をもって協議したことを立証する必要があります。

第4 最後に

これらの立証を要することから、事前準備の段階から弁護士が関与した方が望ましい場合が多いといえます。

解雇が難しいのは分かりました、ではもうどうしようもないのでしょうか?

第1 退職勧奨

解雇という最終手段を取らずに、会社が個々の従業員に対して、退職を促し(退職勧奨)、従業員と退職について合意することが考えられます。解雇ではない以上、労基法上の解雇規制や解雇権濫用法理(労契法16条)の規制を受けません。人員整理目的であっても、整理解雇の4要素を満たす必要はありません(ダイフク事件 大阪地判平成12・9・8労判798号44頁)。

ただし、退職勧奨も無制限に行うことができるわけではありません。従業員の任意の意思を尊重する態様で行うことを必要とします。説得の回数、手段、方法、態様等について、社会的相当性を逸脱した態様での半強制的ないし執拗な退職勧奨行為は、退職の意思表示が事後的に無効とされたり、取消されるおそれが生じますし、不法行為として従業員に対する損害賠償責任が生ずるおそれもあります。

また、退職金の優遇や、解決金、再就職先の支援等の退職条件を用意することで、従業員に合意を促すことも考えられます。

第2 有期雇用契約の更新拒絶(雇止め)

有期雇用契約であれば、本来は期間満了により雇用契約は当然に終了します。解雇権濫用法理が適用される余地はありません。有期雇用契約を締結すれば、解雇の問題は生じないのでしょうか。

判例は、一定の場合に解雇権濫用法理を類推適用し、雇止めが許されないと判断された場合、従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係が継続するとしました。そして現在は、労働契約法改正により、以下の雇止めの法理が法定されました。

  1. 有期契約労働者が契約更新の申し込みをした場合、又は、期間満了後遅滞なく有期労働契約の申し込みをした場合
  2. 過去に反復して更新されたものであって、雇止めをすることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められること(1号)又は有期労働契約の契約期間満了時に、当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものと認められること(2号)
  3. 使用者が当該申込みを拒絶することが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなすと規定されています(労働契約法19条)。

これらは、仕事の内容が臨時的補助的かそれとも基幹的か、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理状況、雇用継続を期待させる言動や制度の有無、雇用継続の期待の相当性などから判断することとなります。よって、各要件に該当するか、慎重に判断する必要があります。

懲戒解雇とはなんですか?

懲戒解雇について

従業員が横領等の犯罪行為を行っていた場合には、従業員を懲戒解雇することができます。

1. 懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、懲戒処分の極刑であって、解雇予告・解雇予告手当の支払いをせずに即時に従業員を解雇し、退職金の一部又は全部が支給されない方法です。懲戒処分は社員にとって極めて不利益な処分ですので、後で争いにならないようにきちんと法律上の条件を満たしているかどうか検討した上で行う必要があります。

2. 懲戒解雇の条件
(1) 就業規則に定める懲戒解雇事由に該当すること

就業規則において懲戒解雇事由をきちんと事前に定めておくことが、懲戒解雇のためには必要です。例えば、経歴詐称・職務懈怠・業務命令違背・業務妨害・職場規律違反・二重就職等です。

(2) いわゆる罪刑法定主義の条件を満たすこと

後から就業規則を定めて、過去の行為について適用することはできません。また、同一の出来事に対して二回懲戒処分をすることはできません。

(3) 平等取り扱い

他の従業員との関係での取り扱いが平等である必要があります。過去の先例を踏まえた上での解決をすること、新たな懲戒事由については事前に従業員に警告をしておくことも必要です。

(4) 相当性の原則

行った行為が懲戒解雇に該当する理由として相当であるかどうかという観点で検討をする必要があります。この点が裁判所において解雇の裁判になった場合には一番争いとなる点です。以下のような場合には比較的懲戒解雇が認められやすいと言えるでしょう。

  • 横領・背任・会社物品の窃盗・損壊・同僚や上司への暴行行為
  • 採用の際の経歴の詐称(学歴詐称・職務歴の詐称)
  • 競合する会社の取締役への就任
(5) 適正手続

懲戒解雇をする場合には懲戒解雇をする前に、本人に弁明の機会を与えるなどの方法が必要です。また、就業規則において手続きの方法等を定めている場合には、その手続きをきちんと行う必要があります。

3. その他懲戒解雇について

1 懲戒解雇をする場合には事前の専門家による検討が不可欠です。怒りにまかせて、いきなり従業員を懲戒解雇したとしてもいい結果にはなりません。弁護士等の法律の専門家にきちんと事前に相談しましょう。

2 懲戒解雇が有効であったとしても、退職金全額を不支給にできるのかどうかについては別途争いが残ります。懲戒解雇の場合の退職金不支給規定を有効にできるのは、労働者のそれまでの勤続の功を抹消ないし減殺してしまうほどの著しく信義に反する行為があった場合に限られます。

普通解雇とはなんですか?

普通解雇について

従業員を解雇するときには細心の注意を払いましょう。

1. 解雇(普通解雇)とは

解雇とは、会社による労働契約の解約です。従業員の意思・希望の有無にかかわらずに会社が一方的に行う方法です。

2. 普通解雇についてのアドバイス
  1. できるだけ解雇は避けて、退職届の作成を目指しましょう。解雇の有効性を後日裁判所で争うこととなる場合、争う時間・労力・費用のことと考えると、安易に解雇をすることは極めて危険です。社員も最初は解雇に同意していたように見えても、後になって解雇が無効であったとして裁判を起こしてくることがよくあります。
  2. 解雇制限に気を付けましょう。
    普通解雇については「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には権利の濫用として解雇が無効となる」という決まりがあります。
    合理性・相当性については多数の裁判例があり、労働事件に詳しい弁護士に相談をすることが問題解決のためには必要です。普通解雇の解雇理由としては以下のようなものがよく上げられます。
    • 労働能力・適格性の欠如・喪失
    • 勤務成績の著しい不良
    • 職場での規律違反
  3. 会社の業績不振の場合には別途「整理解雇」という方法があります。整理解雇については普通解雇とは異なった基準で判断がなされます。
  4. 産前・産後の解雇制限、業務災害の場合の解雇制限等、個別の解雇制限についての様々な規定があります。普通解雇をなす場合には法律で定められた解雇制限の条件に該当していないかどうかを確認する必要があります。
  5. 解雇予告手当の支払いが必要になることがあります。普通解雇の場合、少なくとも30日前には解雇の予告をする必要があります。解雇の予告をしなかった場合には、30日分の平均賃金を会社は支払う必要があります。(ただし、解雇予告手当に関する規定に違反した解雇であっても解雇自体は有効と考えられています。
  6. 解雇をする前には必ず一度考えてみて下さい。社員の恨みを買って、社員が裁判を起こす、労働基準監督署にかけこむ、労働組合に相談する可能性はありませんか?円満に話し合っておけばよかったと後で思ってももう遅いということがあります。退職届の作成を目指す→どうしても退職届けの作成が難しそうな場合にのみ解雇をする、ということを覚えておいていただくだけでも、会社経営はとても安定すると思います。
整理解雇とはなんですか?

整理解雇について

会社の業績不振のため従業員を解雇するときは、整理解雇の条件を充たしているかどうかを確認しましょう。

1. 整理解雇とは

整理解雇とは、解雇のうち、主として経営上の必要性に基づく解雇です。

2. 整理解雇の条件について
(1)人員削減の必要性

整理解雇のためには、人員削減の必要性があることがまずは必要です。会社の業績不振により人員を削減することもやむを得ないというような状況にあることが必要です。

(2)整理解雇の必要性

整理解雇以外の方法がとれないかを検討することが必要です。希望退職の募集などの方法をまずは行った上で、解雇の手続きをするべきです。

(3)選定の妥当性

どの従業員を解雇するのかということについての合理的な説明ができるようにしておくことが必要です。客観的で合理的な基準を作成して、その基準を公正に適用することが必要です。

(4)手続きの妥当性について

従業員への説明等の手続きをきちんと行うことが必要です。

3. 整理解雇については専門家の判断が必要です。
  1. 当事務所において整理解雇の案件のご相談を受けた場合、解雇をした従業員が裁判を起こしてきたとしても会社が勝てるのかどうかという観点から検討をします。結果として、裁判で負ける可能性があるという結論になるために解雇ができないということもあります。その場合は、退職勧奨を行ったり、希望退職の募集を募ったりする方法により、目的を達成するためのお手伝いをすることができます。
  2. 会社をたたむ場合、会社が倒産する場合には整理解雇はほとんどの場合有効となります。従業員には失業保険や国による未払の賃金の立て替え払い制度があることを説明すると納得してもらえることがほとんどです。
  3. 条件をきちんと検討しないでの整理解雇→多数の従業員からの訴訟提起、ということになってしまうと、場合によっては会社の存在自体を脅かすほどのトラブルに発展してしまうことがあります。整理解雇をする場合には労働事件に詳しい弁護士等法律の専門家に相談してからにしましょう。当事務所の取り扱い実績からしますと、「解雇前にご相談いただいていればトラブルにならなかったのに」と思う事例が結構多いと感じています。

ここでは、整理解雇について解説しました。整理解雇についての詳細は弁護士等の専門家にご相談下さい。

不当解雇と言われないためにはどうしたら良いでしょうか?

不当解雇と言われないために

従業員を解雇した後、不当解雇であると言われないために以下のことに気を付けましょう。

1. 不当解雇とは

「不当解雇」という言葉自体には色々な意味があると考えられます。法律上違法・無効な解雇という意味での不当解雇、法律上は違法な解雇ではないが解雇予告手当の支給がない解雇という意味での不当解雇、全く問題がない解雇であるものの従業員が不当に解雇されたと考えている場合等です。

2. 不当解雇と言われないために気をつけるべきこと
(1)解雇ができる場合かどうかをよく確認しましょう。

法律上解雇ができる場合であるのかどうかをよく確認しましょう。整理解雇、普通解雇、懲戒解雇等、解雇には色々な種類の解雇があります。それぞれの解雇の種類によって、解雇が認められるための条件は異なります。不当解雇であると言われないようにするために最善の努力をしましょう。

(2)解雇予告手当に気をつけましょう。

従業員を解雇する場合には、解雇の30日前に告知をする必要があります。解雇の告知をしなかった場合には、30日分の賃金を支払う必要が出てきてしまいます。ただし、懲戒解雇の場合には解雇予告手当の支払いは不要です。

(3)従業員の不満・反感を買わないようにしましょう。

不当解雇であるという従業員からの主張がある場合、通常、従業員は何らかの不満・反感を会社に持っているものです。このような不満・不安を従業員に持たれてしまうこと自体、できるだけ避けたいものです。解雇であるという告知をする前に従業員に対して正直に会社の状況等を説明して、従業員にできるだけ納得してもらうことが不当解雇と言われないためには必要です。

(4)可能であれば解雇を告げる前に専門家に相談をしましょう。

会社に顧問弁護士又は顧問社労士がいる場合には解雇を従業員に告げる前には相談をしておいた方がよいでしょう。後々生じるであろうリスクについて知っておくことが、よい判断をするためには必要です。

ここでは、不当解雇と言われないようにするためのポイントについて説明しました。不当解雇である旨の主張が解雇後に従業員・労働組合等からあった場合、解雇前に専門家に相談していないときには、弁護士等の法律の専門家に一度でも相談をしておいた方がいいでしょう。

解雇通知書の作成方法を教えてください

解雇通知書の作成方法

解雇をする際には、会社は従業員に対して解雇通知書という書面を交付することが一般的です。ここでは解雇通知書についての注意事項について説明します。

1. 解雇通知書の記載には詳細な注意を払いましょう。
  1. 解雇通知書に解雇の理由を記載した場合、後で解雇通知書に記載した内容と異なる内容を裁判で会社が主張することが難しくなることがあります。たとえば、懲戒解雇の場合には「懲戒当時使用者が認識していなかった非違行為は特段の事情のない限り当該懲戒の理由とされてものでないことが明らかであるから、その存在を持って当該懲戒の有効性を根拠付けることはできない。」という判例があります。(山口観光事件)
    また、普通解雇の場合にも、裁判所によっては、解雇通知書に記載のない解雇理由の主張を会社が行うことについて何らかの制限をしてくることがあります。
    つまり、「とりあえず」適当に解雇通知書に解雇理由を記載したつもりが、後々の裁判で従業員に有利な証拠となってしまうことがあるのです。解雇通知書の記載には相当な注意が必要です。
  2. また、普通解雇なのか、懲戒解雇なのか、整理解雇なのかという点についても、解雇通知書に記載がある場合には、記載がない種類の解雇については主張できなくなる可能性があります。この点も裁判所において色々争いがある部分です。
  3. 解雇の理由については、解雇通知書には記載する義務はありません。ただし、従業員が解雇の理由についての証明書を要求した場合には、会社は解雇の理由を記載した証明書を発行しなければなりません。「従業員からの請求があった場合」には解雇の理由を記載した書面をきちんと交付しましょう。
2. 解雇通知書の記載事項
(1)解雇通知書の記載事項

解雇する従業員の氏名、「平成●年●月●日付で解雇します。」という文句、書類の作成日、会社名、代表者名の記載があれば充分です。解雇の理由については必要に応じて記載をしましょう。

(2)解雇をしてしばらくしてから突然、解雇理由の証明書が必要だと従業員から言われた場合

このような場合注意が必要です。法律に詳しい人に従業員が相談に行った結果、解雇理由の証明書をもらってきた方が後々有利になるとアドバイスをされた可能性があります。後々裁判を起こすこと等も検討しているかもしれません。このような場合には弁護士等の専門家に一度解雇通知書についてや解雇の理由について相談した方がよいかもしれません。

ここでは、解雇通知書について解説しました。解雇通知書の詳細については弁護士等の専門家にご相談下さい。

解雇の裁判で負けた場合、会社はどうなりますか

従業員を職場に復帰させる義務と解雇後現在までの賃金全額を原則として支払う必要があります。

1. 解雇を争ってくる方法について

解雇の無効を争う従業員は、本人による交渉、労働組合による交渉、弁護士による交渉、労働審判、労働訴訟のいずれかの方法で解雇が無効であることを争ってきます。この中で、本人による交渉、弁護士による交渉、労働審判の場合には、最終的には金銭解決で終わることが経験上多いです。つまり、会社が従業員に一定の金銭を支払うことにより、従業員が職場に復帰しないという前提での解決をします。(もちろん、横領等の犯罪があるなど明らかに解雇事由がある場合には徹底的に会社は解雇が有効であることを争うべきです。)

他方、労働組合による交渉及び労働訴訟の場合には、従業員が最後まで現職への復帰にこだわることが経験上よくあります。

そのため、従業員がどのような方法で争ってくるかにより従業員側の意向がある程度わかります。

2. 解雇の裁判で負けた場合

解雇をもとめる裁判(労働訴訟)を起こされた場合、会社としてはどのように対応すればよいのでしょうか。従業員が求める内容は、現職への復帰、解雇後解決までの賃金、その他慰謝料ということが多いです。

解雇の裁判は平均すると1年位続くことが一般には多いです。そのため、裁判で会社が負けてしまった場合には、会社は、従業員を職場に復帰させ、しかも、解雇後1年経過後に負けたのであれば1年分の賃金を働いてもいない従業員に支払わなくてはなりません。これは会社にとって大変なダメージですし、他の従業員に与える悪影響も相当なものがあります。

3. 会社側の争い方

会社としては上記のような危険性を避けるために色々な方法を検討する必要があります。例えば以下のような方法です。

  1. (明らかに勝ち目がない場合には)解雇を撤回する方法(従業員は会社に出社する義務が発生します)
  2. 早期の金銭による解決を会社から提案する方法
  3. 在職中の不正行為・違法行為等を調査して従業員に対して損害賠償請求をする方法
  4. 裁判官に間に入ってもらって、中間的な水準での和解を目指す方法
  5. 徹底的に証拠を集めて裁判で勝つことを目指す方法
4. まとめ

解雇事件の場合、会社側の労働事件を多く取り扱っている弁護士に依頼をすることにより最悪の事態を防ぐことができる確率が高くなりますし、細かいテクニックを色々使うこともできます。

解雇の裁判に会社が負けると、従業員を職場に復帰させる義務と解雇後現在までの賃金全額を原則として支払う義務が発生してしまいますので注意が必要です。

賃金仮払いの仮処分とはなんですか?

賃金仮払いの仮処分への対応

1. 賃金仮払いの仮処分とは

解雇された労働者が、解雇の無効を争う場合、訴訟ですと1年程度かかる場合があります。

その間、労働者が賃金を得られないと生活に困ります。そこで、解雇した使用者に賃金の仮払いを強制する手続きが賃金仮払いの仮処分です。

2. 仮払いを免れるには

労働者が資産を保有していた、近親者の収入で生活をしていた、正社員として雇用された、という場合であれば、仮払いを免れる余地があります。短期のアルバイトで生計を立てているということや雇用保険を受領しているというだけでは、仮処分の必要性がないとまではいえず仮払いを免れることはできません。

労働者とその家族の生計を維持するに必要な限度の額に仮払金は限定される傾向があります。従って、使用者としては、現実の生活費を主張し、労働者の反論を待って更に再反論するなどして裁判所に具体的な生活費の限度に仮払金を出すように求めるべきです。

3. 仮処分の手続きへの対応

仮処分の申立がなされると、裁判所において審尋期日が指定され、仮処分決定がなされます。審尋期日において、裁判所から和解を勧められる場合も多いので、本案訴訟をした場合のメリットデメリットを検討した上で和解に応じるかどうか判断すべきです。

仮処分への対応も、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

残業代問題のQ&A

弁護士から残業代請求の通知書が届きました。これは、もう支払わないといけないのでしょうか?

第1 初動時の注意

従業員からの割増賃金請求と共に、タイムカードの開示を要求されることがあります。経営者の方としては、証拠となるものを開示したくないと思われると思います。しかし、必要な基礎資料について任意に開示しなければ、証拠保全の手続き等が取られることが予想されます。結局開示しなければならなくなるのであれば、任意に開示し、早期の和解に持ち込むことが結果的によい解決につながると考えられます。

第2 労働時間の証拠として用いられる証拠

割増賃金請求にあたり、よく労働時間の証拠として用いられるのはタイムカードです。タイムカードの打刻時間と労働時間に関しては、使用者側において、労働者が労働をしていなかったことを反証しない限り、タイムカードの打刻の結果によって把握される時刻を前提に労働時間として取り扱わなければならないという推定が働くとした裁判例があります。そのため、タイムカードなど、労働時間の記録となりうるものについては、日頃からきちんと管理しておくことが必要です。

他に用いられる証拠としては、時間管理記録、日報、手帳、メールの送受信記録、 PCの記録等が考えられます。

第3 反論の立て方の一例

1. 割増賃金が発生していないとの主張

労働者が管理監督者に該当する旨の主張が考えられます。
労働者が法律上の管理監督者に該当する場合、労働基準法上の労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されません(労基法41条2号)。管理監督者に該当するかは、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者を指し、名称にとらわれず実態に即して判断されます。

したがって、会社と労働者間でその労働者が管理監督者であると取り決めたとしても、実態が伴わなければ、法律上の管理監督者として認められない可能性がありますので注意が必要です。

2. 労働者が主張するような残業時間が存在しないとの主張

労働者が労働時間と認められるような作業を何ら行っていなかったとして、労働者が残業をしていなかったと主張することが考えられます。例えば、だらだらとインターネットをして職場に残っていたような場合です。労働者が実際にどのような作業を行っていたのか、双方が立証していくこととなります。

3. 割増賃金は支払済みであるとの主張
(1) 割増賃金として、定額手当を支給するとしていた場合

手当を支給しており、割増賃金として支払済みと主張することが考えられます。

基本給とは別に支払われる手当を、割増賃金の支払いに代えて支払われるものである趣旨を明確にしておくことが必要となります。就業規則において割増賃金であることなどを明示し、給与明細上の記載を工夫すること等も必要となります。

(2) 割増賃金は、基本給に組み込んで支給するとしていた場合

割増賃金は基本給に組み込んでおり、割増賃金は支払済みと主張することが考えられます。基本給のうち割増賃金にあたる部分を区別し、割増賃金額が上回るときはその差額を支払うことを合意しておく等の工夫が必要となります。

4. 割増賃金が発生していたとしても、時効消滅したとの主張

割増賃金が発生していたとしても、時効消滅したと主張することが考えられます。割増賃金請求権は、賃金支払日から起算して2年間で消滅するためです(労基法115条)。

うちは残業代も込みで契約していたはずなのに残業代を請求されました。支払わなければならないでしょうか。

第1 時間外労働に対して、定額手当を支給するとしていた場合

使用者が手当を支給していた場合、手当が割増賃金に該当するとして、算定の基礎から除外した上で、固定残業代として支払済みと考えることはできるのでしょうか。

各種手当を割増賃金として認めた裁判例としては、「運行手当」について、仕事の性質上深夜労働をせざるを得ない路線乗務員に限って支払われている点や、就業規則において深夜勤務時間に対する割増賃金であることを明示している点等から、割増賃金と認めたものがあります。

各種手当を割増賃金として認めなかった裁判例としては、「管理職手当」について、趣旨が不明確であり、時間外労働に対応したものともいえず、時間外労働、深夜労働、休日労働を補てんするものではないとしたものがあります。

裁判例は、各手当の実質について、支給の経緯や実態、就業規則の定め方、給与明細上の記載等を総合的に判断しています。

基本給とは別に支払われるその手当を割増賃金の支払いに代えて支払うという趣旨を明確にしておく必要があるといえます(なお、近時の裁判例の傾向に照らすと、このような支払方法をとる場合の制度設計については特に慎重な検討が必要です。具体的なケースでご相談がある場合には弁護士等の専門家へ必ずご相談ください。)。

第2 割増賃金を基本給に組み込んで支給するとしていた場合

使用者が、割増賃金を基本給に組み込んで支給していたと主張して、割増賃金を支払い済みと考えることはできるのでしょうか。

色々と見解が分かれている部分ではありますが、裁判例では、①基本給のうち割増賃金にあたる部分が明確に区別され、②労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときは、その差額を当該月の割増賃金の支払期に支払うことが合意されている場合について、割増賃金を基本給に組み込んで支給することも可能としたものがあります(なお、近時の裁判例の傾向に照らすと、このような支払方法をとる場合の制度設計については特に慎重な検討が必要です。具体的なケースでご相談がある場合には弁護士等の専門家へ必ずご相談ください。)。

第3 年俸賃金に割増賃金が含まれているとしていた場合

使用者が、割増賃金を年俸賃金に組み込んで支給していたと主張して、割増賃金を支払済みと考えることはできるのでしょうか。

年俸制が一般の労働者に適用された場合、成果主義的賃金制度ではなく、単に一年を単位として労働の対価を決定する制度にすぎないといえます。賃金の額を年単位で決定するものにすぎないとすれば、年俸制というだけで、割増賃金が含まれると含まれていると解することはできません。

裁判例においても、割増賃金を含めて年俸を定めた事例について、割増賃金と基本給部分を区別して確定できないことから無効とされ、割増賃金の支払いが命じられたものがあります。第4 管理監督者に該当するため、労働時間に関する規制が適用されないとの主張使用者が、労働者が管理監督者に該当すると主張して、割増賃金は発生していないと考えることはできるのでしょうか。

労働者が管理監督者に該当する場合、労働基準法上の労働時間・休憩・休日に関する規定は適用されません(労基法41条2号)。すると、割増賃金が発生しなくなります(※深夜労働に関する割増賃金は発生します)。そのため、管理監督者に該当するかが争われることとなります。

そもそも管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者を指し、名称にとらわれず実態に即して判断されます。

  1. 事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限が認められていること
  2. 自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
  3. 一般の従業員に比し、その地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられていることが、それぞれ過去の判例上で必要とされています。

よって、採用や解雇の権限を持っているか、人事考課の権限を持っているか、労働時間に関する裁量が認められているか、基本給・役職手当等の優遇措置が認められているか等について、詳細に検討する必要があります。

残業代の未払いとはどういう問題ですか?

残業代の未払い問題

未払い残業とはサービス残業のことです。残業代を払わずに残業させることです。

未払いが発覚すると、労働基準監督署から「是正勧告」されることになります。「是正勧告」に従って是正しなければ、書類送検となり、罰せられる可能性もあります。

この「賃金不払残業」の「是正勧告」によって、上場企業が数億円、数十億円支払ったケースもあります。このような場合、どのような対応をとるべきか、お伝えいたします。

1. 是正勧告とは?

「是正勧告」とは、いわば労働基準監督署による警告書です。会社経営者が従業員を雇用するとき、守らなくてはならないルールが「労働基準法」です。このルールに違反して、出されるのが、「是正勧告書」という名の警告書です。この罰則をみると「6ヶ月以下の懲役」とか「30万円以下の罰金」などとあります。

行政指導には強制力がないので「是正勧告」には従わなくてもよさそうに見えますが、「労働基準法」の中に懲役又は罰金というペナルティーが設けられており、「是正勧告」に従って是正しなければ、書類送検となり、罰せられる可能性もあります。

「是正勧告」に至る「労働基準監督署」の「調査」のきっかけは、従業員(元従業員を含む)からの申告が大きい割合を占めています。
したがって、労基署の調査も会社の労働時間管理の実態を理解した上で行われます。

2. 労働基準監督署(労基署)への対応

残念ながら、労基署が調査に入り、労基署が様々な資料を入手した後では、使用者が労基署に対して対抗する手段はほとんどありません。

しかし、労基署に提出した資料にはあらわれない、使用者としてどうしても主張したい事情もあるかと思います。例えば、労基署は、パソコンのログオン、ログオフ時間を元に労働時間を計算することが多いのですが、当該労働者がパソコンでその時間まで仕事をしていたのかは本当のところはわかりません。途中で夕食を取るためパソコンの電源をつけたまま机を離れたかもわかりません。

また、タイムカードについても、職場の親睦会などがあり、タイムカードの時刻が終業時刻後相当遅くなって打刻されているような場合もあるかとおもいます。

以上のような事情があれば、労基署に主張することも可能かと思います。

このような場合、まずは弁護士にご相談下さい。

職場のハラスメント問題のQ&A

職場でハラスメントの問題が起きるとどうなるのでしょうか?
会社内部の問題にとどまらず、民事上の責任や、公法上の責任を問われる可能性があります。

1. はじめに

職場でハラスメントの問題が発生してしまった場合、行為者の処遇の検討(懲戒処分、配置転換等)、被害回復・再発防止のための措置といった会社内部の問題(詳しくは、「ハラスメント問題の解決方法」をご覧ください)が生じるだけでなく、民事上の責任や、公法上の責任を問われる可能性があります。また、労災対応が必要となる場合や、報道等により企業イメージが低下することもあります。

2. 民事上の責任

(1) 使用者責任

加害者の行ったハラスメント行為が、業務に関連してなされた場合には、行為者だけでなく、会社も損害賠償責任を負うことになります。これを、「使用者責任」といいます。

例えば、職場内で、就業時間内になされたハラスメント行為については、基本的に業務関連性が認められ、使用者責任が肯定されます。また、職場外で、勤務時間外になされたハラスメント行為であっても、職場の関係性が背景にある場合等には、広く業務関連性が認められる傾向にあります(実際の裁判例でも、多くのケースで業務関連性が認められています)。

(2) 債務不履行責任・不法行為責任

会社は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすべき法的な義務(安全配慮義務といいます)を負っています。この安全配慮義務には、職場での人間関係についての配慮・調整を行うことも含まれますので、会社がかかる義務に違反した結果、ハラスメントが発生し、それにより被害者が精神的・肉体的な損害を受けた場合には、会社に、その損害を賠償する義務が生じます(債務不履行責任・不法行為責任)。

例えば、セクハラを受けた旨の報告を被害者から受けたにも関わらず、事実関係を十分に調査せずに、行為者の報告のみで適切な措置を執らなかったうえ、その後も引き続き行為者の下で被害者を勤務させたという事案につき、会社の安全配慮義務違反を認め、賠償責任を肯定した裁判例があります。

3. 公法上の責任

男女雇用機会均等法は、セクハラ防止のために必要な措置を講じることを会社に義務付けています。具体的には、①セクハラに対する会社の方針の明確化、②相談体制の整備(相談窓口の設置、相談に対する適切な対応)、③セクハラが起こってしまった場合の迅速・適切な事後対応(事実関係の確認、被害者への配慮、行為者への適切な措置、再発防止措置)といった措置を行う必要があります。
会社が上記措置を講じない場合には、厚生労働大臣から指導・勧告を受ける可能性があります。勧告にも従わなかった場合には、企業名が公表される可能性もあります。

4. その他

ハラスメントを受けた被害者がうつ病を発症した場合は、労働災害と認定される可能性もあり、労災の対応が必要となる場合も生じます。また、ハラスメントの事実が、労働者からの訴訟提起、労災認定等をきっかけに報道される可能性もあり、この場合には、企業イメージが大きく低下してしまうことになります。

団体交渉・労働組合対応のQ&A

突然、労働組合を名乗る人が会社を訪れ、社長に合わせてほしいと言っています。どのように対応したらよいのでしょうか?

その場で対応・回答する必要はなく、団体交渉に応じる義務があるかを社内で検討し、後日書面で回答すれば大丈夫です。

1. はじめに

会社が、正当な理由がなく団体交渉を拒否することは、不当労働行為として、法的に禁止されます。もっとも、その場ですぐに回答すべき義務までは、会社は負っていません。したがって、本件のように、突然労働組合を名乗る人が会社を訪れて、社長に合わせてほしいと言ってきても、直ちにこれに回答する必要はなく、社内で検討して後日回答する旨伝えれば大丈夫です。

ここでは、団体交渉の申入れ~団体交渉当日までの、会社の行うべき対応について解説します。

2. 対象事項の確認

会社は、すべての事項について団体交渉に応じる義務を負うわけではなく、「義務的団交事項」についてのみ、団体交渉に応じる必要があります。団体交渉を申し入れられた場合、会社としては、まず労働組合が何を要求しているのかを確認する必要があります。

義務的団交事項としては、まず、①組合員である労働者の労働条件等が挙げられます。

例えば、賃金、労働時間、安全衛生・職場環境、労災補償、人事考課・人事異動、懲戒、解雇、福利厚生等が挙げられます。労働条件や労働者の待遇に関連する場合には、会社の経営事項(合併、事業譲渡、事業所の閉鎖等)も義務的団交事項に当たります。

また、②集団的労使関係の運営に関する事項も義務的団交事項に含まれます。例えば、団体交渉・労使協議のルール、組合員の範囲、便宜供与(掲示板の貸与等)、ユニオン・ショップ等がこれに含まれます。

これらの事項に関し団体交渉が申し入れられた場合には、会社は、団体交渉に応じなければならず、これを拒否することは、「不当労働行為」として、法律上禁止されます。会社としては、団体交渉の対象事項が「義務的団交事項」に当たるかを慎重に判断した上で、団体交渉に応じるか否かを回答する必要があります。

3. 日時・場所・出席者等の調整

団体交渉を行うに際しては、日時・場所はどうするか、誰を交渉に出席させるか(何人出席させるか)、といった点についても定める必要があるので、会社としては、これらの事項を、組合と協議しながら決めていくことになります。

(1) 団体交渉の日時

団体交渉に応じるにあたっては、会社の側でも事実関係の調査や、資料の準備等を行う必要があるので、申入れから団体交渉まで、一定の準備期間が必要となります。

したがって、会社の側で、団体交渉申入書に記載された日付よりも先の日付を指定し、協議を行うことは可能です。ただし、あまりにも先の日付を指定すると、その指定自体が不誠実な団体交渉の態度であるとして、不当労働行為に当たると主張されかねないので、注意が必要です。

また、労働組合から、就業時間内における団体交渉の開催を要求されることもありますが、これに応じる義務はありません。むしろ、就業時間内に団体交渉を行った場合、交渉に参加した組合員(労働者)の賃金をどうするか、という問題が別途生じ得ることを考えると、団体交渉は、就業時間外に行う方が望ましいといえます。

なお、団体交渉の日時を定めるにあたっては、あまりにも長時間の交渉に及ぶことを避けるために、団体交渉の開始時間だけでなく、終了時間(=交渉時間)についても定めておく必要があります。

(2) 団体交渉の場所

団体交渉の場所についても、特にどの場所で行う必要がある、といったルールはありません。したがって、労働組合が労働組合側の施設や、会社の会議室で団体交渉を行うことを要求してきても、これに応じる義務まではなく、外部の貸会議室などを団体交渉の場と指定し、協議を行うことも可能です。

ただし、あまりにも組合側に不利な場所を団体交渉の場所として指定することは、その指定自体が不誠実な団体交渉の態度であるとして、不当労働行為に当たると主張されかねないので、注意が必要です。

(3) 出席者・出席人数

労働組合が、社長の出席を求めてきた場合でも、社長が団体交渉に出席する義務はありませんが、団体交渉の対象事項について、少なくとも交渉権限を持っている人が団体交渉に出席する必要があります。例えば、団体交渉に出席した会社側の人間が、「その点は社長に聞かなければ分からない」などという回答を繰り返した場合には、それ自体が不誠実な団体交渉に当たるとして、不当労働行為に当たると主張されかねません。したがって、団体交渉に誰を参加させるかという点についても、慎重に検討を行う必要があります。場合によっては、弁護士が団体交渉に立ち会うこともあります。

また、人数が多数になると、内部で意見の相違が生じる、不規則発言をする者が出るなど、団体交渉が紛糾する可能性があるので、出席人数は少数であることが望ましいといえます(会場のキャパシティの問題もあります)。会社としては、このような観点から、労働組合との間で、団体交渉に出席する人数を取り決めていくことになります。

なお、団体交渉を申し入れた労働組合の組合員だけでなく、その組合の上部団体の役員についても、団体交渉への出席を求めてくる場合がありますが、「社外の者の参加は認めない」といった理由でこれらの者の団体交渉への出席を拒むことは、不当労働行為に該当し得る行為なので、注意が必要です。上部団体の役員の出席を認めた上で、出席人数等を調整するのが、会社のなすべき対応といえます。

団体交渉当日の注意点はなんでしょうか?

注意点はいくつかありますが、不当労働行為と主張されないように、誠実に交渉することが大事です。

1. はじめに

前回のQ&Aでは、団体交渉の申入れ~団体交渉当日までの会社の対応について解説させていただきました。今回は、団体交渉当日における注意点について解説します。

2. 一般的な注意点

団体交渉を行う際の一般的な注意点としては、以下のような点が挙げられます。

(1) 誠実に交渉すること

この点については、「3. 不当労働行為について(不誠実交渉)」で後述します。

(2) 安易な発言をしないこと

団体交渉がヒートアップし、感情的な発言や、暴言を吐いてしまった場合、労働組合の側から、会社の発言が不当労働行為(不誠実な交渉態度)に当たると主張される可能性があります。

また、事前の準備をすることなく、安易に発言(賃金の支払いに対し、「払いますけど…」といった回答)をしてしまうと、「あのときは払うと言ったじゃないか」などとその発言を過度に取り上げられ、その後の交渉が進まなくなる可能性があります。

団体交渉においては、その交渉内容が録音されていることが多いため、一度発言した内容は、後の展開・交渉等に大きく左右し得るということに注意する必要があります。会社としては、事前に回答書や想定問答集を作成し、交渉当日に即答できない質問がなされた場合には、社内で検討した上で次回回答する、という対応が望ましいといえます(ただし、これを多用した場合には、不当労働行為(不誠実な交渉態度)に当たると主張される可能性があります)。

(3) 安易に書類に署名・押印しないこと

団体交渉後、労働組合側から、「議事録」「覚書」といった書類に署名・押印をすることを求められる場合があります。しかし、これらの書類が労働協約としての形式を備えていた場合には、これに安易に署名・押印してしまうと、労働協約としての効力が発生し(=その内容に会社が拘束される)、会社に不利益が生じる危険性があります。

会社としては、組合から署名・押印を求められても、その場で署名・押印はせずに、社内に持ち帰り内容を確認したうえで、署名・押印をするかを検討する、という対応をすべきでしょう。なお、会社の方でも別途議事録を作成するのが望ましいです。

(4) 録音

団体交渉の録音を労働組合から求められた場合、基本的にはこれに応じたうえ、会社の側でも録音をすべきです。会社の側でも録音を行うことにより、組合側に有利な部分のみを使用される危険性はない(=録音を許すことによる不利益は)ですし、録音の制限等で無用な争いをするのは、その後の交渉の観点からも望ましくないからです。

3. 不当労働行為について(不誠実交渉)

不当労働行為の類型は、大きく分けて二つあります。一つ目は、前回のQ&Aで見た通り、会社が義務的団交事項について団体交渉を拒否する類型です。もう一つは、会社が不誠実な団体交渉をした類型です。不誠実な団体交渉は、実質的な団体交渉拒否であるとして、不当労働行為に当たることとなるので、交渉態度にも注意しながら、交渉を行う必要があります。例えば、裁判所は、以下のような会社の対応・行為について、不当労働行為性を認めています。

  1. 交渉の最初の時点で、合意する意思がないことを明確にした
  2. 交渉権限を有しない者のみが団体交渉に出席し、交渉が進展しない
  3. 回答を拒否したり、一般論に終始して、議題内容に実質的に踏み込まない
  4. 具体的な回答を示さない/同じ回答に終始している
  5. 十分な説明のないまま、不合理と思われる回答に固執している
  6. 労働組合の主張・要求に対し、十分な回答・説明・資料提供をしていない
  7. 交渉事項や全体的な交渉態度からみて、交渉回数や交渉時間が不十分である
  8. 文書のみで回答し、口頭での回答を行わない

4. 和解/団体交渉の打ち切り

団体交渉を経て、労働組合と会社とで合意に至った場合には、後の紛争を避けるべく、合意書を作成することとなります。

会社は、誠実に団体交渉を行う義務がありますが、組合側の主張をそのまま受け入れたり、譲歩するまでの義務はありません。そこで、複数回の団体交渉を重ねても両者で合意に至らず、交渉が行き詰まった場合には、会社は、正当に団体交渉を打ち切ることができます。ただし、誠実な交渉が背景になければ、打ち切りを行うことができない(=打ち切りが不当労働行為に当たる)ことは勿論です。

日常業務での従業員トラブルのQ&A

業務上の指示に従わず、ミスを連発する営業の社員がいます。もちろん、営業成績も全然よくありません。どうしたらよいでしょうか。

社員のそのような行動に対して、日頃会社がどのような対応をしているかが後々問題になることがあります。そのひとつの例としては、問題行動に対して、適切に注意・指導等をしてきているかという視点が重要です。

1. 解雇のハードルは想像以上に高い

こういったご相談も非常に多く寄せられますが、なかなか一筋縄ではいかない問題です。このようなご相談の場合、「とにかくもう解雇したい。何とかしてくれ。」というお話であったり、「もう解雇してしまった。そしたら弁護士から解雇撤回しろと通知が来た。

「どうしたらよいか。」といったご相談内容であることが多い印象です(顧問の会社様の場合には、このような段階に行かれる前の初期のところご相談を受けることも多いです。)。

勤務態度の不良や能力不足に対する解雇のハードルは、一般的に高く設定されています。そのため、裁判で従業員側から解雇の有効性を争われてしまうと、そのまま判決で有効を勝ち取るのは簡単ではありません(なお、一定の能力を前提に中途採用された高待遇社員など、上記原則ルールには必ずしも当てらないケースもあります)。

2. 日頃の注意・指導が重要

解雇の有効性について従業員側に争われ、それが裁判などに至って長期化した場合、その解雇が万が一無効と判断されれば、最終的に極めて高額の金銭を支払うことになる可能性があります。そのため、解雇という手段をとるかどうかについては、慎重な判断が必要であり、弁護士としても無闇やたらにお勧めはできません。

「解雇」という最後の手段を検討するには、それまでの注意・指導等の積み重ねが非常に重要になってきます(そのような積み重ねは、従業員に十分な改善のチャンスが与えられていたことも意味します)。

その従業員の実際の問題行動の内容や程度に関する証拠、それに対して会社側が注意・指導を積み重ねてきた証拠などが、きちんと揃っているかが重要です。

ところが、上記のようにいきなり「すぐ解雇したい」とご相談に来られる場合、そもそもそういった積み重ねの必要性を認識していなかったり、通常業務で忙しくてそこまで気が回らなかったり、我々のところに相談に来たのが我慢の限界でそれまでは一生懸命我慢していたりと、往々にしてこの部分の記録等が不十分なことがあります。

このような場合に解雇を強行してしまえば、訴訟を起こされても会社側の主張を説得的に証明できず、結局その従業員が職場復帰することになったり、裁判所から多額の金銭の支払いを求められることになりかねません。

なお、このような積み重ねの証拠は、必ずしも解雇の場面のみに生きるものではありません。例えば、合意退職の可能性を探る従業員との話し合いの場でも、その場で取り繕った理由を言うのではなく、このようなに積み重ねてきた事実を根拠に丁寧に話し合った方が納得してもらいやすいと思われます。

3. どう対応するか

上記のような困った事態に陥らないためには、まずその従業員に求める能力をきちんと設定し、それに満たない業績やミスの記録をきちんととっておくことです。出来る限り、第三者からのクレームであったり、数字で客観的に証明できるものを重視して集めると良いと思います。

また、業務上の指示に従わなかったり、ミスを繰り返す場合には指導が必要ですが、その指導についても「日時」「場所」「内容」「相手の反応」等を極力記録化しておくことが重要だと思います。
どのような証拠をどのように残すかについては、個別のケースによって異なるため、なかなか一律にお話しづらいところですが、最悪の場合の裁判を見据えて証拠づくりを検討することが必要ですので、悩まれるようであれば、業務として裁判を取り扱う弁護士が相談相手としては適切かもしれません。

一度そういったことでご相談に行かれれば、今後同様の問題が起きた場合に弁護士の関与なくとも対応できるようになることもあると思います。

店舗を任せている店長が売上金を横領しました。どうしたらよいのでしょうか?

以下のような横領に関する事実関係の調査とその後の適切な対応(弁償・社内の処分等)が必要になってきます。

1. 実はご相談が少なくない横領事件

「従業員の横領」というと大事ですので驚かれるかもしれませんが、実はご相談が少なくない分野だと思います。程度に差はあれ、どのような会社にもそのリスクが潜んでいるようです。ご相談件数が多く感じるのは、従業員が関わる他の問題と比べて、弁護士に相談に行かれる方が多いという面もある気がします。

2. 従業員の横領が疑われる場合

従業員の横領が疑われる場合、まずは証拠を確保することが重要です。横領を疑われた従業員は、正面から確認してもなかなか事実を認めないことも多いので、出来る限り客観的な証拠を確保することが必要です(書類、メール、通帳履歴等々)。

弁護士は職業柄、日常的に証拠を探したり、証拠を見定めたりする作業に慣れていますので、このような場面でお役に立てることが多いとは思います。

証拠の収集や調査は、感情的になってしまったり、どこまでやれば十分なのかの限界がわかりにくいため、際限なく行ってしまいがちです。そのため、調査の範囲(人・場所・モノ)や時期をどこまで遡るかは、きちんと検討しながら行う必要があります。

なお、お金に関わる分野ですので、顧問税理士の先生のご協力が得られると大変心強い場合があります。

3. 本人に事情を聴く場合の注意点など

ある程度証拠が揃ったら、問題の従業員本人に事情を聴くことになることが多いです。
逃げられて連絡が取れなくなってしまうなどのリスクもあるため、あまり調査だけをずっとしているわけにはいかず、調査の進行状況との兼ね合いで、どのタイミングで本人に事情を聴くかは、難しい判断を迫られることがあります。

証拠からそれぞれの横領行為の日時場所などを特定するのが困難な場合も多いので、自分から素直に認めて色々と話してくれるようであれば、5W1Hに沿ってできる限り細かく事情を確認しておく方が良いです。

当然ではありますが、無理に自白を迫ったり、脅迫したりするようなことは絶対してはいけません。そのような方法で供述をとっても、その信用性が否定されてしまうかもしれませんし、かえってこちらが刑事事件などの加害者とされてしまうリスクもあります。

確認した横領の事実については、きちんと書面で記録をとりましょう。そして、事実関係に間違いがないかを本人に確認してもらった上で場合によっては署名押印などをもらっておくとよいでしょう。本人の話の中から新たな客観的な証拠の存在が判明することもありますので、そういうものも可能な限り確保しておくといざというときに安心です。

4. その他の問題

調査中に問題の従業員を自宅待機にするかどうかは、期間中の賃金の問題や懲戒処分との関係など難しい問題があります。実行する前に弁護士などの専門家へ一度ご相談することをお勧めします。

本人からある程度事実の確認ができ、被害金額もある程度確定できるのであれば、弁償を検討することになります。可能であれば本人による一括払いが望ましいですが、それが難しい場合も多いので、分割での返済や身元保証人からの回収、分割返済の場面での連帯保証人の設定なども柔軟に検討することになります。

横領の具体的内容によっては、懲戒処分を検討する必要もあります。懲戒処分は、就業規則や社内で取り決められた手続にきちんと則って行う必要があり、また問題行動とそれに対する処分の内容のバランスが崩れると、処分の効力が否定されかねないという問題もあるため、慎重な検討が必要です。
実際過去の裁判でも、手続上の違反や処分が重すぎるなどとして、懲戒処分が無効であると従業員側から訴えられる事案が発生しています。

労働災害のQ&A

従業員が労災認定されました。これでもうこの事故の問題は解決ですよね?

損害賠償責任以外にも、刑事上・行政上の責任を問われる可能性があります。また、企業名が公表される場合もあります。

1. 労災と損害賠償責任の関係

(1) 両制度の関係

労災補償の制度は、労働災害を受けた被災労働者の救済を図るための制度であり、会社の責任の有無にかかわりなく判断されるものです。労災と認定された場合には、被災労働者に労災保険金が給付されることとなります。

これに対し、損害賠償責任は、会社の責任により労働者が損害を被った場合には、その損害を会社に賠償させるというものです。

つまり、労災の発生が会社の責任と評価される場合には、労災保険による補償がなされるだけでなく、会社が賠償責任を負うことになるのです(厳密に言うと、会社自体には責任がない場合でも、会社が賠償責任を負うことがあります(使用者責任、工作物責任)。後で説明します。)。

労災「補償」の制度と、損害「賠償」の話は、本来的には全く別の話です。しかし、裁判所は、「労災の認定を受けた」という事実を重く捉える傾向にあります。例えば、長時間労働が背景にある場合においては、労働災害と認定された場合、会社の責任も肯定されることが多いのが現状です。

(2) 損害賠償の範囲

被災労働者も二重取りで補償を受けることはできないので、労災保険で補償された損害部分については、会社は賠償義務を免れることになります。具体的には、治療費・休業補償の一部(6割程度)、逸失利益の一部等は労災保険により支払われるので、この部分の損害については、会社は賠償義務を免れることになります。 しかし、労災保険は、慰謝料(精神的損害)をまったくカバーしていないので、慰謝料については、会社が全額の支払義務を負うこととなります。また、休業補償・逸失利益についても、労災でカバーされない部分は会社が支払義務を負うこととなります。これらの賠償は、極めて高額になることもあり、裁判例をみると、1億円以上の賠償責任を認めた事案も存在します。

2. 会社が責任を負う場合

(1) 債務不履行責任・不法行為責任

会社は、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすべき法的な義務(安全配慮義務といいます)を負っています。かかる義務に違反した結果、労働者の生命・身体が害される事態が生じた場合には、会社に、その損害を賠償する義務が生じます(債務不履行責任/不法行為責任)。

安全配慮義務の内容としては、

  1. 機械等をきちんと整備・点検し、事故が起きないよう注意する義務(工場内での事故の場合等)
  2. 過重労働により心身の健康を損なわないよう注意する義務(過労死の場合等)
  3. いじめ・セクハラ・パワハラ等により心身の健康を損なわないよう、職場環境を配慮すべき義務(いじめが原因でうつ病になった場合等)
(2) 使用者責任

労災の発生につき会社自体に責任がなかったとしても、被災労働者以外の、他の労働者の行為が原因で労働者が損害を被った場合には、原則として、会社もその損害を賠償する義務を負います。これを、使用者責任といいます。例えば、勤務時間中に労働者の間で喧嘩になり、労働者が負傷した場合等が想定されます(なお、労働者同士の喧嘩により負傷した場合も、労災と認定されることがあります)。

なお、使用者責任については、一定の場合(加害労働者を監督するにつき過失がなかった場合等)に会社が責任を免れることも可能ですが、そのためのハードルは極めて高く、責任を免れることは非常に厳しいというのが実情です。

(3) 工作物責任

土地・建物や、これらに備え付けられた機械等の不備・欠陥等により労働者が損害を被った場合は、それを所有・使用する会社が、原則としてその損害を賠償する義務を負います。これを、工作物責任といいます。

原因となった工作物の所有者は、いかなる場合でも責任を免れることはできませんが、所有者ではなく単なる使用者(借りていた場合等)の場合は、損害防止のための必要な注意をしたときは、責任を免れることができます(この場合は、所有者が責任を負います)。

労働災害が発生した場合には、損害賠償責任以外にも会社に責任が発生するのでしょうか?

損害賠償責任以外にも、刑事上・行政上の責任を問われる可能性があります。また、企業名が公表される場合もあります。

1. 労災に潜む様々なリスク

前回のQ&Aで、労働災害が発生した場合の、会社の損害賠償責任について解説をしました。しかし、損害賠償責任(民事上の責任)だけでなく、刑事上の責任や、行政上の責任を問われる可能性もあります。また、企業名が公表される可能性もあり、企業イメージが大きく低下することもあります。

2. 刑事上の責任

(1) 労働安全衛生法違反

労働安全衛生法という法律は、労働者の安全・健康を確保するために、会社(事業者)とその関係者に対し、様々な義務を課しています。具体的な義務としては、①安全管理体制の整備(安全管理者の選任、産業医の選任など)、②労働者の危険・健康障害を防止するための措置(機械の整備・点検火災の注意、有害物質への注意など)、③健康診断の実施といった義務が定められています。

これらの義務に違反した場合には、労働安全法違反として、刑事処分を受ける可能性があります。しかも、労働安全衛生法には「両罰規定」というものがあり、これにより、違反行為を具体的に行った労働者だけでなく、会社も処罰(罰金刑)を受けることとなります。

労災が発生する=労働安全衛生法違反というわけではありませんが、労災が発生したことにより、労働安全衛生法違反が判明することが多い、というのが実情です。

(2) 業務上過失致死傷罪

例えば、現場の機械に不具合があり、そのことを認識していながら何の点検・修理も行わず、その結果、労働災害が発生してしまったような場合、事故を起こしてしまった従業員や、工場長・現場監督者といった現場の管理者が、業務上過失致死傷罪として刑事処分(5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)を受ける可能性があります。ただし、業務上過失致死傷罪の場合、両罰規定は存在しないため、会社自身が処罰を受けることはありません。

実際に、エレベーターの不具合を前から認識していたのに、修理・点検を一切行わなかった結果、死亡事故が発生してしまったという事案において、副工場長と従業員が、業務上過失致死罪として処罰された例があります。この事案においては、業務上過失運転致死罪だけでなく、労働安全衛生法違反についても責任を問われており、両罰規定により、会社も処罰(罰金100万円)を受けています。

(3) 労働基準法違反

長時間労働が背景にある労災事案(うつ病による自殺、心臓疾患・脳疾患の場合等)においては、時間外労働が労働基準法に違反していることも多く、この場合には労働基準法違反として、被災労働者の上司等が処罰(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)を受ける可能性があります(労災の発生により、この違反が判明することが多いです。)。また、労働基準法には両罰規定があるので、会社も処罰(罰金刑)される可能性があります。

なお、36協定という労使協定を結んでいた場合でも、その範囲を超える時間外労働をさせた場合には、労働基準法違反ということになりますので、注意が必要です。

3. 行政上の責任

労働安全衛生法や労働基準法に違反した場合は、労働基準監督署から会社に対して是正勧告がなされ、それに対応する必要が生じることがあります。この是正勧告に従わないと、悪質な事案と評価され、最悪の場合、逮捕・送検される場合もあります。

また、例えば建設業法28条は、「建設業者…がその業務に関し他の法令に違反し、建設業者として不適当であると認められるとき」は、1年以内の期間を定めて、業務停止を命じることができると定めています。この「他の法令」には労働基準法等も含まれ、実際に、長時間労働により労働者が過労死してしまった事案につき、労働基準法違反(時間外労働)を理由に、建設業者が営業停止処分を受けたという例があります。

一定の業種においては、労働基準法や労働安全衛生法の違反が、営業停止にまで発展する可能性があるので、注意が必要です。

4. レピュテーションリスクの問題

労災が起こってしまった場合、多くの事案においては、メディアにより報道がなされます。特に過労死の場合などは、一度報道がされてしますと、「ブラック企業」というイメージが定着してしまい、企業イメージが大きく低下することになります。

また、一定の規模を有する企業においては、複数の事業所で違法な長時間労働や労災が確認され、その状態が是正されない場合などには、厚生労働省によって企業名が公表されるという制度があります。この公表がなされてしまうと、いわば「国が公認したブラック企業」というイメージが定着することになり、より深刻な企業イメージの低下が生じることになります。

その他の労働問題のQ&A

わが社の元営業社員が担当顧客を奪って自分で会社を立ち上げたようです。このようなことは許されるのでしょうか?

そのような行為が法律上許されるか、そして、そのような行為に対してどのような対応をするかはケースバイケースです。

以下のような点を検討する必要があります。

1. 実はご相談が多い競業トラブル

こういった「現」もしくは「元」従業員の競業に関わる問題は、業種を問わず非常にご相談が多い分野です。類似のご相談として、元従業員が競業他社に就職してしまう場合や、元従業員が部下の従業員達を引き抜いていく場合などがあります。

これらはいわゆる「競業避止義務」の問題といわれています。

2. 在職中の競業に関する基本的なルール

まず在職中は、会社に雇われている以上、その会社と利益が相反するような行為は差し控えるべきです。

そのため、会社に許されているような例外的な場合でない限り、原則として在職中に競業を営むことはできません(ただ、退職前に行う準備行為など、どこまで許されるのか微妙な問題もあります)。

3. 退職後のルールと競業禁止の合意に関する問題点

他方で、退職後はそうはいきません。

なぜなら、労働者には憲法上「職業選択の自由」が認められており、退職後はどのような仕事をしてもよいのがむしろ原則ルールだからです。その原則を打ち破るには、会社と従業員との間で「法律上有効」な「競業禁止」の合意をすることが必要になります。

競業禁止の誓約書を従業員に書いてもらっていたり、就業規則にもそのような規定を置いている会社は多いと思いますが、ここので「法律上有効」という部分が実は曲者です。というのも、裁判所は「競業禁止」の合意を無制限に認めず、上記従業員の職業選択の自由を過度に害する場合などにはその合意を無効としてしまいます。

しかも、その有効性判断は、様々な事情(①使用者の正当な利益の保護を目的とすること、②労働者の退職前の地位、③競業が禁止される業務、期間、地域の範囲、④使用者による代償措置の有無等)を総合的に考慮して決めるものとされており、「有効」と「無効」の線引きがあいまいなのです。

現実にご相談やご依頼を頂く中でも、見通しが不明確であり、裁判所まで行ってみないと最終的にその合意が有効と判断してもらえるかがわからないというケースに出くわすことは珍しくありません。
そのため、いざというときに法律上有効な合意をするためには、インターネット上のひな形をそのまま書き写すのではなく、会社の業務、規模、実情などに応じてどのような合意内容にするか慎重に検討する必要があるのです。

また、仮に合意の有効性が認められなくても、顧客の奪取に至る経緯の事情(悪質性等)によっては、損害賠償等が請求できる余地があります。もっとも、会社側からは、問題の従業員側の顧客への働きかけの有無や働きかけの態様がよくわからないことが多いです。そのため、従業員側から「勧誘などしていない」「顧客側がその従業員を希望してついていっただけ」などと主張されてしまうこともあり、なかなか思うようにはいかないことがあります。

なお、競業行為については、会社として毅然とした対応をとることがもちろん重要ですが、話がどんどん大きくなると、裁判などに顧客や取引先を巻き込むことになりかねません。そのため、本業との兼ね合いが問題になり、会社の対応としてどこまでやるかという部分で悩ましい問題があります。

4. 専門家のサポートが必要

このように非常に難しい問題を多数含むため、競業については、合意の内容をきちんと事前に検討しておくだけではなく、競業行為が発覚してからどのように証拠を集め、どのような対策をとっていくのかまでひとつひとつ検討していく必要があります。法律的にも難しい判断が多い分野ですので、可能であれば一度は弁護士等の専門家にご相談された方がよいでしょう。

実際に法律上有効な合意があり、その違反も認められるような場合には、(根拠規定がある場合ですが)退職金の減額、競業行為の差し止め請求、同行為の損害賠償請求などの中から選択可能な方法を検討することになります(※なお、不正競争防止法の適用を受けるようなケースの場合には、上記とは違った要件で損害賠償等を行える可能性があります。詳しくは弁護士等の専門家にご相談ください)。

問題行動を起こした従業員に懲戒処分を行いたいのですが、どのような点に気を付ければ良いのでしょうか?

1. 懲戒処分の要件

懲戒処分については、①有効な懲戒処分の根拠規定の存在、②懲戒規定に定められた事由に該当すること、③懲戒処分に相当性が認められること等の要件があります(労働契約法15条)。

懲戒に関する手続においては、きちんと手順を踏むことが重視されるため、従業員の問題行動に対して感情的になったまま、いきおいで懲戒処分を行ってしまうと、後で手続の不備などが発覚し、その有効性が後々問題になってしまうことがあります。

2. 懲戒処分の根拠

規定等実務上、思わぬ落とし穴になっているのが、①の問題です。

いざ懲戒処分をしようと思ったら、それに対応する根拠規定がないなんてことになれば大変です(通常の就業規則ではあまり見かけませんが、非正規用の就業規則などで稀にそのようなことが起きることがあります。)。同様に、これから懲戒処分をしようと弁護士に相談に行ったところ、就業規則がそもそも従業員に「周知」されていないことが発覚して問題になることもあります。

また、どうしても根拠規定にばかり目が行きがちですが、就業規則等において懲戒処分をする上でのハードルとなるような規定がないのかも注意をする必要があります。例えば、意識せず、就業規則上の懲戒処分の前提として、懲罰委員会の開催を要件としてしまっていることがあります(就業規則の作成にあたって専門家のアドバイスを受けずにインターネット等でひな形を引っ張って来た場合にみられます。)。このような思わぬハードルがあると、緊急時の懲戒処分の場合に問題が生じることがあります。

3. 懲戒事由該当性

②の懲戒事由該当性の判断についても、その前提としてどのような調査をどのように行い、どのような証拠を根拠として残すかは、特に明確な決まりがあるわけではありません。個々のケースごとの判断になりますので、非常に現場で悩まされる問題です。

なお、付随的な問題として、調査や処分に当たる前提として自宅待機を命じるかどうかといった問題もあります。

4. 懲戒処分の相当性

③の相当性の判断においては、問題の従業員の様々な有利不利な事情をきちんと考慮しなければいけません。その人の過去の処分歴や、過去に他の従業員が同種事案を行った際の社内での処分と今回の処分とのバランスなどといった事情にも配慮しなければいけません。

5. その他注意点等

さらには手続的相当性として、先に述べた懲戒処分のハードルとなる規定をきちんと順守することや、告知・聴聞の実施、二重処罰の禁止(一度懲戒処分が確定した事実について再度の懲戒処分は許さないとするルールです。)等への配慮も必要となります。

加えて、処分の告知についても適切に行わなければなりませんので、最後まで気が抜けません。懲戒処分は従業員にとって不利益が大きいため、このように様々な点に気を付けなければいけないのです。

6. 専門家のアドバイスの必要性

以上のとおり、懲戒処分においては注意点が非常に多く、個々のケースにより注意点が異なる部分も多いため、ここに全てを書ききることは困難です。

あらゆる場面で毎回専門家へのアドバイスをもらうことは現実的ではないかもしれませんが、少なくとも相手の強い抵抗が予想される場合や従業員に対して非常に重い懲戒処分を課すことを検討している場合などには、出来る限り事前に専門家のアドバイスを受けたほうが安心かと思われます。