職場のハラスメント問題
-セクハラ・パワハラ・マタハラとは?-

1 セクハラとは

セクハラ(セクシャル・ハラスメント)とは、簡単に言うと、相手方の意思に反した性的言動を行うことをいい、大きく分けて、①対価型のセクハラと、②環境型のセクハラに分類されます。①の対価型のセクハラとは、例えば、上司が部下に対して、「昇進させてやるから」とか、「嫌だったら別の部署に飛ばす」などと、仕事上の対価(有利な取扱い/不利な取扱いをしないこと)を見返りに、性的な関係や性的行為を強要するといった場合が、これに当たります。

②の環境型のセクハラとは、性的な言動によって、職場の環境を居心地の悪いものにすることをいいます。例えば、身体を触る、卑猥な言葉をかける、職場などでおおっぴらに猥談をする、卑猥な本を職場で読む、性的な噂を流すといった行為が、この類型のセクハラの典型的な行為です。食事やデートに執拗に誘う、プライベートな事柄について執拗に質問するといった行為も、この類型のセクハラに当たり得る行為です。

2 パワハラとは

厚生労働省は、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」を、パワハラ(パワー・ハラスメント)と定義しています。

「職場内の優位性」とは、職務上の地位の優位性(上司・部下等)だけでなく、人間関係の優位性も含まれるので、同期の間や、部下から上司に対する行為もパワハラに当たり得ます。また、「業務の適正な範囲」かどうかは、その行為が業務上の指導の目的で行われたものであるか、指導の方法が適正か、という観点で判断されます。

どのような行為がパワハラに当たるかは一概に言えませんが、一般的には、以下の6つの類型が、主なパワハラの行為類型と言われています(もちろん、これらの類型以外の行為もパワハラに該当し得るので、その点は注意が必要です)。

主なパワハラの行為類型

  1. 暴力行為
  2. 侮辱・脅迫・名誉棄損的な発言
  3. 人間関係からの切り離し(無視、陰口)
  4. 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの要求(仕事に関する過大な要求)
  5. 不必要に、労働者の能力・経験とかけ離れた、過小な仕事を与えたり、仕事を全く与えない(過小な要求)
  6. 私的な部分に過度に立ち入る

3 マタハラとは

マタハラ(マタニティ・ハラスメント)とは、妊娠・出産・育児休業等を理由に嫌がらせを行うことや、妊娠等を理由に不利益な取扱い(解雇・降格等)を行うことをいいます。

例えば、これまで副主任の地位にあった女性労働者につき、妊娠中の軽易な業務への転換をきっかけに、副主任の地位を失わせ(降格)、育児休業終了後も副主任の地位に昇格させなかったという会社の対応が、妊娠等を理由とする違法な不利益取扱いに当たるとして、会社の賠償責任を認めた判例が存在します。

また、労働者が、妊娠を理由とする業務の軽減を求めたところ、その上司が「妊婦として扱うつもりないんですよ」と発言した行為等が、妊産婦労働者の人格権を害する不当な業務指導に当たると判断した裁判例もあります。

ハラスメント問題の解決方法

1 はじめに

職場においてハラスメントの問題が発生してしまった場合、会社のなすべき対応としては、大きく分けて、①事実関係の確認、②被害回復・再発防止のための措置、③訴訟・労災対応等の3つに分けることができます。

ここでは、ハラスメントを行った労働者を「行為者」、ハラスメントを受けた労働者を「被害者」と呼んで説明します。

2 事実関係の確認

ハラスメントの問題を会社が認識した場合、まず、会社としては、事実関係の確認を行う必要があります。事実関係の確認は、その後に会社が行うべき対応を検討する上で、極めて重要となってきます。

事実関係を確認する際には、行為者・被害者のいずれかの話のみを聞くのではなく、双方から事実関係を確認する必要があります。双方の言い分が異なる場合には、他の従業員からの聞き取りを行うなどして、正確な事実関係を把握することが必要となります。

3 被害回復・再発防止のための措置

十分な調査を行った結果、ハラスメントの事実が認められた場合には、会社は、被害者の被害回復や、再発防止のための措置を行う必要があります。具体的には、以下のような対応を検討・実行する必要があります。

被害回復・再発防止のための措置

  1. 行為者に対する懲戒処分
  2. 行為者の配置転換(行為者と被害者を引き離す)
  3. 行為者に対し、被害者への謝罪を命じるなど、両者の関係改善に向けての措置)

※行為者のハラスメントに関し、被害者が労働条件上の不利益を被っている場合には、その不利益の回復等の措置も行う必要があります。

4 訴訟・労災対応

ハラスメントの問題が発生した場合、行為者だけでなく、会社も責任を問われることがあり、訴訟・労働審判等の対応が必要となることがあります(詳しくは、労働問題Q&Aをご覧ください。)。また、ハラスメントを受けた結果、被害者がうつ病を発症した場合などは、労働災害と認定される可能性もあり、労災対応が必要となる場合もあります。さらに、訴訟提起・労災認定をきっかけに、ハラスメントの事実が報道されて、企業イメージが低下する可能性もあります。

5 おわりに

ハラスメントの問題は、単なる会社内部の問題ではなく、賠償のリスクや、レピュテーションリスクも孕んでおり、会社にとって重大な問題です。勿論、ハラスメントが起こらないような職場環境を作ることが一番大事ですが、もしハラスメントの問題が発生してしまった場合には、迅速かつ適切な事後対応が、極めて大事になってきます。

適切な事後対応を行うことができれば、訴訟リスク・レピュテーションリスクを大きく軽減することができます。ハラスメント問題でお悩みの際は、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。