会社法に関するQ&A

株式会社を設立するにはどのような手続きが必要ですか?

株式会社設立手続きの流れ

株式会社を設立するためには、大まかに以下の手続きが必要になります。

設立の方法には発起設立と募集設立の2種類がありますが、どちらも手続きの流れに違いはありません。それではさっそく、具体的な手続き方法について解説していきます。

1. 定款作成

会社を設立するためには、まず定款を作成する必要があります。(会社法第26条第1項)
なぜなら、定款がなければこの先に続く設立登記や届出といった手続きを行なうことができないからです。そのため、定款はただ作成するだけでは事足りず、発起人全員の署名または記名押印と公証人による認証が必要になります。(会社法第26条第1項,30条第1項)

公証人による認証を受けることで、定款に法的な効力が生じます。公証人の認証を受けないまま次の設立登記を行えば、設立の無効原因として提訴されるリスクが生じます。

定款の認証は、本社所在地を管轄する公証役場で行います。

2. 株式発行事項の決定

設立の際に発行される株式のことを,設立時発行株式といいますが,設立時発行株式に関する事項を定める必要があります。定款で定める必要があるもの,発起人全員の同意で決める必要があるもの,発起人の多数決により決める必要があるものがあります。

  • 定款で決める必要があるもの
    • 発行可能株式総数
  • 発起人全員の同意で決める必要があるもの
    • 発起人が割当てを受ける株式の数
    • 株式と引換えに発起人が払い込む金銭の額
    • 成立後の会社の資本金・資本準備金の額
  • 発起人の多数決で決める必要があるもの
    • その他の株式発行事項
    • (発起人が出資を履行すべき日)
    • (払込取扱期間)等

3. 株式の引受け

発起設立の場合には,設立時発行株式は,発起人がその全部を引き受けます。

募集設立の場合には,一部を発起人が引受け,残りの株式については,発起人が引き受けるものを募集します。実務上は,縁故者のみに勧誘を行うことが一般的です。

4. 出資の履行

株式の引受人は,株式の引受け後,遅滞なく,その引き受けた設立時発行株式につき全額の払込みをしなければいけません。

金銭の払込みは,発起人が定めた払込取扱期間にしなければいけません。

出資の履行を行わない発起人がいるときには,発起人は,未履行の発起人に対して,期日を定めて,その期日までに履行しなければならない旨を通知しなければなりません。期日までに出資の履行がなされないときには,当該発起人は設立時発行株式の株主となる権利を喪失してしまいます。(36条)

もっとも,定款で定めた設立に際して出資される財産の最低額が満たされなかったり,1株も取得しない発起人が生じたりする場合には,設立無効事由となってしまうので,注意が必要です。

他方,発起人以外の引受人が期日までに出資の履行をしないときには,当該引受人は当然に設立時発行株式の株主となる権利を喪失してしまいます。(63条第3項)

5. 設立時役員等の選任

会社の設立に際して取締役となる者を「設立時取締役」といいます。

発起設立の場合には,発起人は1株1議決権を有し,その議決権の過半数により設立時取締役を選任します。

募集設立の場合には,創立総会を招集し,創立総会で設立時取締役等を選任します。

6. 設立経過の調査

設立時取締役・設立時監査役は,設立経過の調査を行い,調査の結果,法令・定款違反または不当な事項があった場合には,各発起人に通知しなければなりません。(46条第2項)

7. 設立登記

定款を作成し公証人の認証を受けた後は、設立登記を行います。(会社法第49条)設立登記をすることによって、

  1. 法人格(権利能力)を取得する
  2. 出資した発起人や設立時募集株式の引受人が株主になる

といった法的な効力が発生することになります。特に法人格を備えることによって、民法や商法、会社法などの権利主体となり得るため、設立登記は非常に重要な手続きであるといえます。

設立登記は法務局の窓口へ直接申請する以外にも、郵送やオンラインによる手続きが可能です。

8. 各種届出や手続き

設立登記をした後は、以下のような機関へ届出や手続きをする必要があります。

  • 税務署
  • 金融機関
  • 役所
  • 労働基準監督署/ハローワーク
  • 年金事務所※従業員を雇用する場合

本社所在地によって管轄している機関が異なるため、手続きをする前に確認しておくと安心です。それぞれの機関に届出や手続きをする書類は、以下のとおりです。

  • 税務署
    法人税や源泉所得税を支払うための準備を行います。
    • 法人設立届出書
    • 青色申告承認届出書
    • 給与支払事務所等の開設届出書※従業員を雇用する場合、等
  • 金融機関
    法人口座を開設する手続きを行います。法人口座開設手続き※書類は口座開設する金融機関によって異なります。
  • 役所
    地方税である事業所税を支払うための準備を行います。事業所等新設申告書
  • 労働基準監督署/ハローワーク
    労働保険の適用事業に該当する場合や従業員を雇用する場合に届出をする必要があります。
    • 保険関係成立届
    • 概算保険料申告書
    • 雇用保険適用事業所設置届
    • 雇用保険被保険者資格取得届、等
  • 年金事務所
    従業員の健康保険や厚生年金保険を支払うために必要な手続きです。
    • 健康保険 厚生年金保険 新規適用届
    • 健康保険 厚生年金保険 被保険者資格取得届、等
会社には株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の種類があると聞きました。それぞれのメリット・デメリットは何ですか?

株式会社と持分会社(合名・合資・合同会社)の違い

株式会社と比較すると,持分会社には次のような特徴があります。

株式会社では,出資者である株主と業務執行を行う取締役とが分離されているのに対し(所有と経営の分離),持分会社では社員でなければ業務執行者となることができません。

持分会社では,社員の氏名が定款の必要的記載事項とされ,持分の譲渡には他の社員の承諾が必要になります。そのため,定款の定め方を工夫しない限り,持分が投資家によって頻繁に売買されることはあまりありません。

投資家が投資を回収する方法として,株式会社では株式の譲渡が中心であるのに対して,持分会社では,社員は退社して,持分の経済的価値に相当する財産を会社から受け取る(持分の払い戻し)権利を認められています。

株式会社では,株主は会社の経営にあまり影響を与えませんが,持分会社では社員は原則として会社経営に関与します。

持分会社の特徴

各持分会社の社員(出資者)が,会社債権者に対して負う責任の性質は異なります。

<合名会社>

全ての社員が,会社債権者に対して無限責任を負う。

<合同会社>

全ての社員が,会社債権者に対して,会社設立時などに会社に対して支払った出資額を上限として、その責任を負う(有限責任)。

<合資会社>

無限責任社員と有限責任社員とが混在する。

株式会社のメリットとデメリット

株式会社のメリットは、資金調達しやすいことです。株式会社には「公開会社」と「非公開会社」の2種類がありますが、上場しているか店頭登録しているかに関わらず、どちらも募集株式を発行することで長期間かつ多額の資金を調達することが可能となります。

株式会社のデメリットは、会社の支配関係に影響を与える可能性が高くなることです。株主には「所有と経営の分離」という原則があるため、株主は直接的に会社経営を行なうわけではありません。しかし株主総会の決議によって取締役の選任などを行なうため、会社経営の根源を支配していると考えることができます。

非公開会社であれば、定款によって取締役の資格を株主に限定することができるため、外部からの影響を受けにくくなります。しかし株主の持株比率を維持しながら募集株式を行なうためには株主総会の特別決議が必要となり、手間がかかるデメリットもあります。

合名会社のメリットとデメリット

合名会社のメリットは、会社設立コストがもっとも安く抑えるメリットがあります。金銭ではなく信用や労務を出資目的にできるからです。株式会社であれば必ず金銭で出資する必要がありますが、合名会社は信用があり労務に服すことができれば、業務執行社員として合名会社の代表となることができます。

合名会社の業務執行役員として権限が与えられる代わりに、すべての責任を引き受けるデメリットもあります。個人財産をもって、会社債務の責任をとらなければなりません。

合資会社のメリットとデメリット

合資会社のメリットは、金銭で出資すればすべての責任を負うことなく業務執行役員として会社経営に関与できることです。合資会社は、一切の責任をとる無限責任社員と一定の限度でもって責任を有する有限責任社員で構成されるからです。

無限責任社員と有限責任社員は、責任をとる範囲に違いはあるものの、合名会社同様に会社債権者に対して直接責任をとらなければならないデメリットがあります。第三者に対する損害賠償責任を負うことになります。

合同会社のメリットとデメリット

合同会社は金銭でしか出資できない点で株式会社と共通していますが、定款によって意思決定や剰余金の分配を自由に決められるメリットがあります。合同会社に出資しても、会社債務に対して一定の限度内で責任をとることになっているため、リスクを抑えることも可能です。

株主総会や取締役会などで決議しなくても定款で自由に意思決定できる小回りの良さが魅力ですが、資金調達を行なう場合は社債発行によることになります。株式とは異なり利息を償還し満期になれば全額返済しなければならないデメリットがあります。

平成26年会社法改正により新しくできた監査等委員会設置会社とは何ですか?

監査等委員会とは?

会社法改正によって新設された監査等委員会とは、過半数の社外取締役を含む取締役3名以上の監査委員で構成される委員会のことです。監査等委員会は取締役の業務執行を監査する役割があります。監査等委員会設置会社とは、この監査等委員会が設置された会社のことをいいます。

これまでの会社法で公開会社である大会社は、監査役設置会社か指名委員会等設置会社のどちらかしか選択することができませんでした。今回会社法が改正され、この中間に監査等委員会設置会社が加わることになり、3種類から選択することができるようになっています。

これまでの監査役(監査役会)や指名委員会等設置会社と新設された監査委員(監査等委員会)の違いは?

これまでの監査役と監査委員会と、新設された監査委員のそれぞれの違いを解説します。

監査役(監査役会)と監査委員(監査等委員会)の違い

監査役と監査委員は、身分保障や権限についてはほとんど同じです。監査役の任期が4年であるのに対し監査委員は2年任期であるという違いがあります。

監査役は取締役と兼任していなければ1人でも問題ありませんが、監査役会を設置しなければ社外監査役が不在となるため、コーポレートガバナンスが充分に機能しない可能性が出てきます。

指名委員会等設置会社と監査等委員会の違い

氏名委員会等設置会社は、「指名委員会」「監査委員会」「報酬委員会」の3つが設置された会社のことで、「監査委員会」が取締役や執行役などの職務監督責任を負います。どの委員会も過半数の社外取締役で構成しなければならないため、コーポレートガバナンスが機能するメリットがあります。しかし社外取締役が自分たちの報酬を決定することや、代表取締役ではなく代表執行役という名称になることが心理的抵抗となるデメリットがあります。

監査等委員会を設置するメリットとは?

監査等委員会を設置するメリットは、これまでの制度のデメリットが解消されていることです。コーポレートガバナンスが充分に機能していないデメリットや業務の執行者が代表執行役になってしまうデメリットを、監査等委員会を設置することによって解消することができます。 また、監査等委員会を設置することによって、監査内容が充実します。監査等委員会では指名委員会等設置会社同様に、適法であるか(違法性がないか)だけでなく、妥当性についても監査を行うからです。

株式には様々な内容と種類があると聞きました。どのような株式があるのですか?

株式には「普通株式」と「種類株式」の2つに分けることができます

株式には、「普通株式」と「種類株式」の2つに分けることができます。「種類株式」とはそれぞれ内容が異なる権利が付与された株式のことで、種類株式を利用することによって企業は柔軟に資金調達できるようになります。

種類株式には、以下の9種類があります。

  • 剰余金の配当について内容の異なる種類株式
  • 残余財産の分配について内容の異なる種類株式
  • 議決権制限種類株式
  • 譲渡制限株式
  • 取得請求権付株式
  • 取得条項付株式
  • 全部取得条項付種類株式
  • 拒否権付株式
  • 取締役・監査役選解任に関する種類株式
  • 剰余金の配当について内容の異なる種類株式

剰余金の配当について内容の異なる種類株式は、他の株式より配当を優先したり劣後したりする株式のことです。配当優先権が付与された株式の場合は、普通株式よりも配当が優先されるメリットがあります。

残余財産の分配について内容の異なる種類株式

残余財産の分配について内容の異なる種類株式は、他の株式より残余財産の分配を優先したり劣後したりする株式のことです。残余財産優先分配権付株式は、会社清算のときに残余財産を優先的に受け取ることができます。ベンチャー投資のリスクが低くなるため、投資家が投資しやすくなるメリットがあります。

議決権制限種類株式

議決権制限種類株式は、株主総会の議決権の内容が異なる株式のことです。全部議決権制限株式は議決権がないため、会社経営に関与されることがありません。一部議決権制限株式は、一定事項だけの議決権を株主総会で行使することができます。

譲渡制限株式

譲渡制限株式は、株式の所有権者(株主)が株式市場での売買等(譲渡)によって自由に取得することができず、会社の承認が必要となる株式のことです。譲渡制限株式を発行すれば、会社にふさわしくない者を株主にすることを阻止することができます。

取得請求権付株式

取得請求権付株式は、株主が会社に対して株式や新株予約権、社債などの取得を請求できる権利のある株式です。株主は会社によって買取りが保証されているため、投資しやすくなるメリットがあります。

取得条項付株式

取得条項付株式は、会社が強制的に株主から株式を取得できる株式です。会社が強制的に株主から株式を取得するためには、ある一定の条件を定めておき、その条件が満たされたときにその権利を行使することになります。例えば相続を条件にすることで、株主が変更した場合に会社は強制的にその株式を取得することができるため、外部者による影響を受けずに済むメリットがあります。

全部取得条項付種類株式

全部取得条項付種類株式とは、株主総会の特別決議で会社がその株式をすべて取得できる株式です。倒産状態になり、100%減資を行なうときに有効な株式となります。

拒否権付株式

拒否権付株式は、株主総会の決議に対して種類株主総会の決議で覆すことのできる株式です。議決権割合が少ない株主に、決定権を与えることになります。

取締役・監査役選解任に関する種類株式

取締役・監査役選解任に関する種類株式は、取締役と監査役の選任と解任できる権利が付与された株式です。拒否権付株式同様に、議決権割合の少ない株主が、会社経営へ影響を与えることができるようになります。

取締役等役員の報酬はどのように決定すればいいですか?
また一度決めた報酬を変更することはできますか?

取締役等役員の報酬は定款または株主総会で決定します

取締役等役員の報酬は、会社設立時に作成する定款で決定することができます。取締役等役員の報酬について定款で定めることができる事項は、「確定している報酬の金額」「具体的な算定方法(報酬が確定していない場合)」「金銭以外による具体的な報酬内容」の3つです。(会社法第361条)

定款に取締役の報酬事項について定めていない場合には、株主総会の決議が必要となります。(会社法第361条第1項)取締役会で決めることができれば、自分たちにとって都合良く決定することができるようになってしまうからです。

取締役等役員の報酬は一定基準に該当すれば節税対策になります。

取締役等役員へ支払う具体的な報酬金額は、一定基準に該当すれば法人税を抑えることができます。従業員へ支払う給与は、労働の対価として支払うものであれば全額を損金算入することができます。しかし役員報酬は、一定基準に該当するものだけが損金算入できると認められています。

取締役等役員の報酬における一定基準とはどのようなものですか?

取締役等役員の報酬における一定基準には、

  1. 利益連動給与
  2. 事前確定届出給与
  3. 定期同額給与

の3種類があります。

1.の利益連動給与であれば、業績に応じて役員報酬を変更しても損金算入することができます。しかし、有価証券報告書に利益連動給与に関する事項を記載することが条件となっているため、上場企業でなければ適用することができません。

2.の事前確定届出給与は税務署への届出が必要となり、増額した場合や業績悪化で減額する場合でも変更に関する届出がなければ損金算入することができません。

3.の定期同額給与であれば、届出不要で役員報酬を損金算入することができます。ただし、毎月一定金額を役員報酬として定めることが条件となっているため、臨時改定事由や業績悪化事由に当てはまらない増額や減額は、設定した金額との差額が損金不算入となります。

一度決めた取締役等役員の報酬を変更することはできますか?

一度決めた取締役等役員の報酬は、変更することができません。 定款または株主総会決議によって取締役の報酬が具体的に定められた場合,その報酬額は,会社・取締役間の契約内容となり,会社と取締役を拘束します。 そのため,そのあとで株主総会がその取締役の報酬を無報酬とする旨の決議をしても,取締役は,それに同意しない限り,報酬請求権を失いません。

最近,粉飾決算で問題となる会社が多く,内部統制システムという言葉をよく聞きます。内部統制システムとは何ですか?また内部統制システムは設置しなければいけないものですか?

内部統制システムとは、会社の不祥事を防止するために体制を整備することです

内部統制システムとは、

  • 粉飾決算
  • 不正取引
  • 違法行為の隠ぺい

といった会社の不祥事を、未然に防ぐために体制整備を図ることです。

会社が行なう業務や役員が執行する職務について管理体制を整えていなければ、上記のような不祥事が起こるリスクを適切に管理することができません。たとえば部門ごとで職掌を分離させることによって、売上の架空計上などが行われるリスクを低くすることができるというようなことです。

もし内部統制システムがなければ、架空計上や不正取引が横行されることになり、リスク管理体制を整備しなかったとして会社が損害賠償責任を負うことになるのです。つまり、従業員や役員による不祥事を防ぎ、損害賠償責任のリスクを軽減し会社の信用を失わないようにすることが、内部統制システムを設置する目的なのです。

内部統制システム設置会社

内部統制システムを設置しなくてもよい株式会社は、以下3つの条件をすべて満たした中小会社となります。

  1. 資本金5億円未満もしくは負債総額が200億円未満である
  2. 監査等委員会非設置会社である
  3. 指名委員会等非設置会社である

内部統制システムは取締役会で決定します

内部統制システムは、取締役会にて決議することになっており(会社法第362条第5項)、代表取締役に委任することができません(同条第4項)。これは、独任で意思決定することを阻止することが目的となっています。

内部統制システムは、会社法と金融商品取引法の2つで定められています

内部統制システムは、「会社法」と「金融商品取引法」の2つの法律によって定められており、それぞれ異なる内容が規定されています。

例えば、会社法の内部統制システムは「業務の適正」を確保することが目的となっている一方で、金融商品取引法では「財務計算の書類やデータの適正」を確保することが目的となっています。

また金融商品取引法では毎年内部統制報告書を有価証券報告書と一緒に内閣総理大臣へ提出する義務がありますが、会社法では株主総会で決議があった場合に株主総会へ提出すればよく、関係省庁へ提出する必要はありません。

取締役等役員の責任を制限する方法を教えてください

取締役等役員の責任は一定の条件のもと制限できる

取締役等役員の任務懈怠責任は,一定の条件のもとに減免し得る旨の規定が存在します。それではさっそく、役員等の責任を制限する具体的な方法について解説していきます。

責任の免除

役員等の任務懈怠の責任は,総株主の同意があれば,免除することができます(424条)。

責任の軽減

役員等の任務懈怠責任の免除に総株主の同意を要するということは,上場会社など株主数が多い会社では,責任の免除が事実上はできないことを意味します。それではあまりにも役員等にとっては酷であるし,責任をおそれて思い切った経営判断ができなくなってしまいます。 そのため,会社法は,より緩やかな要件で,役員等の任務懈怠責任の一部を免除することを認めています。

株主総会決議による軽減

株主総会決議の特別決議によって,責任を軽減することができます。(425条)

軽減できるのは,賠償額から最低責任限度額を控除した額までです。

最低責任限度額は,「役員等の数年分の報酬等の額(何年分かは役職等によって異なります)+新株予約権を行使したことによる利益」と計算されます。つまり,数年分の報酬等の額と,新株予約権を行使したことによる利益の全部にあたる額について,役員等は任務懈怠責任を免れることはできません。

以上の責任軽減のための議案を株主総会に提出する際には,監査役ないし監査委員全員の同意を要します。(425条第3項)

定款の定め+取締役会決議による軽減

特に必要と認めるときには取締役会の決議によって責任の軽減を行うことができる旨を定款で定め,それに基づいて責任を軽減することができます。 軽減できる額は,上記<株主総会決議による軽減>の場合と同じです。

定款の定め+責任限定契約による軽減

社外取締役・会計参与・社外監査役・会計監査人については,責任限定契約による責任軽減も認められます。

この契約は,上記最低責任限度額を限度として社外取締役等が責任を負う旨の契約です。責任限定契約を締結できる旨は,定款で定めておく必要があります。(427条1項2項)

株主総会・取締役会の手続きを簡略化することはできますか?

株主総会と取締役会は簡略化できる内容と簡略化できない内容があります

株主総会と取締役会それぞれの手続きにおいて、簡略化できる内容とそうでないものとがあります。

まず株主総会と取締役会は、

  1. 招集して
  2. 決議する

という手続きは共通していますが、簡略化するための条件が異なります。

招集手続きを簡略化するための条件

株主総会も取締役会も、株主や取締役全員の同意があれば招集手続きを簡略化することができます。
株主総会と取締役会を開催するためには、会社法で定められた招集手続きを経る必要があります。例えば以下のような場合は、招集手続きを欠く行為となります。

  • 招集権のない者が株主総会の招集通知をする
  • 招集通知の時期までに通知をしていない
  • 書面投票と電子投票を定めているにもかかわらず口頭や電話によって招集通知が行われた

上記のような経緯で株主総会や取締役会が開催された場合であったとしても、株主全員(取締役会の場合は取締役と監査役)の同意があれば招集手続きに不備があっても、決議は有効に成立します(会社法第300条、第368条第2項)。しかし次に解説する書面投票と電子投票によって議決権が行使できる場合は、招集手続きを簡略化することができません。

株主総会・取締役会の決議を省略できる条件

株主総会も取締役会も、書面投票と電子投票を採用することで議決権の簡略化を図ることができます(会社法第298条第1項第3号、第4号)。 株主総会と取締役会に出席しなくても議決権を行使することができるため、議決権者にとっては簡略化を図ることができます。しかし前にも述べたとおり、書面投票と電子投票を採用する場合は招集手続きを省略することができません。決議は簡略化することができても招集手続きは省略することができない点で注意が必要です。

株主総会の決議は、株主全員の同意があれば省略することができます。株主総会の決議事項について書面やメールで同意する意思表示をすれば、それがそのまま決議としてみなされることになるからです。

取締役会の決議は、書面やメールによって決議が成立することを取締役全員が同意すれば省略し、定款に定めることができます。ただし監査役設置会社では監査役が異議の申立てを行わないことが条件となります。監査役に異議があれば、取締役全員の同意があったとしても、決議を省略することはできません。

特別取締役による決議の簡略化

取締役会で決議される「重要な財産の処分や譲受け」と「多額の借財」については、特別取締役だけで決議することができます(会社法第373条第1項)。ただしこの特別取締役による決議の簡略化は、以下すべての条件を満たす取締役設置会社だけに有効です。

  • 取締役の数が6人以上
  • 取締役のうち社外取締役が1人以上存在すること

特別取締役は取締役から3人以上が互選され、過半数が出席し過半数によって決議します。取締役が多い会社の場合は特別取締役を有効に機能させることによって、迅速に意思決定することができるようになります。

株主総会の決議が取消されたり,無効・不存在とされたりするのは,どういう場合ですか?

株主総会の決議に法令違反や取消事由がある場合は、無効や不存在になります

株主総会の決議において法令違反や取消事由がある場合は、無効となったり取消しとなったりすることがあります。

株主総会の決議には、

  • 取消しの訴え(会社法第831条)
  • 無効確認の訴え(会社法第830条第2項)
  • 不存在確認の訴え(会社法第830条第1項)

の3つが認められています。

株主総会決議取消しの訴え

株主総会決議に以下のような取消事由がある場合は、取消しの訴えをすることができます。

  • 招集方法や決議方法に法令・定款違反があったため不公平な決議になった場合
  • 決議の内容そのものが定款に違反している場合
  • 特別利害関係者による議決権行使によって不公平な決議になった場合

上記のような総会決議があった場合、ただちに取消しとなるわけではなく、法的安定性を維持するためにその決議は一応有効となります。そして取消判決が確定すれば、株主総会の決議があった日に遡って総会決議が無効になります。

総会決議の取消しは、株主総会の決議があった日から3ヶ月以内に提訴することができます(会社法第831条第1項)。提訴できる人は、株主、取締役、監査役、清算人となっています。自分にとって不公平な決議でなくても他の株主にとって不公平な決議であれば、取消しの訴えをすることができます。

株主総会決議無効確認の訴え

株主総会決議内容が法令違反となっている場合に、無効確認の訴えをすることができます(会社法第830条第2項)。先ほどの取消しの訴えでは「定款に違反している」場合なのに対し、無効確認の訴えでは「法令に違反している」場合の訴えとなります。

法令に違反していれば、判決が確定するまでもなく当然に無効となります。提訴期間の定めや提訴権者の制限もなく、いつでも誰でも、決議内容の法令違反に対して無効確認の訴えをすることができます。

ただし、総会決議の動機や目的が公序良俗に反していたとしても、総会決議の内容そのものが法令違反となっていない場合は無効とはなりません。

株主総会決議不存在確認の訴え

以下のような場合に、株主総会決議不存在確認の訴えをすることができます(会社法第830条第1項)。

  • 総会決議が物理的に存在しない場合
  • 総会決議が法的に存在すると認められない場合
  • 招集通知が著しく漏れている場合

上記のような場合はもともと株主総会決議が存在していないため、無効確認の訴えと同様にいつでも誰でも主張することができます。

株主代表訴訟とは何ですか?

株主代表訴訟とは、会社の代わりに役員等の責任追及を行なうことです

取締役等役員は、会社と委任契約を締結している関係にあります。そのため役員は会社に対して、

  • 善管注意義務(民法第644条)
  • 忠実義務(会社法第330条)

といった義務を果たす責任があります。

役員がこれらの義務責任を果たさなかった場合は、委任者である会社がこの役員に対して義務違反を追及することになります。しかし実際には会社そのものが役員に対して責任追及することはできないため、取締役同士によって不適切な行為をしていないかを取締役会にて監督することになります(会社法第327条第1項1号)。しかし取締役同士が同僚で親密な関係にある場合は、違法行為を見逃す可能性もあります。そこで会社法第847条によって株主代表訴訟について定めて、株主が役員の責任について追及できるようにしたのです。

代表訴訟の提起権利がある株主とは?

代表訴訟を提起できる株主は、6か月前から現在に至るまでその会社の株式を所有している株主です(会社法第847条第1項)。非公開会社では株式の保有期間に関係なく、すべての株主が代表訴訟の提訴権者となります。(会社法第847条第2項)。

定款によって、以下のような例外規定を定めることもできます。

  • 株式保有期間を6ヶ月より短くする(公開会社の場合)
  • 単元未満株主には代表訴訟権を与えない

株主代表訴訟の手順

株主代表訴訟の流れは、原則として以下のような手順で行われます。

  • 株主が会社に対して、責任を怠った役員へ責任追及ことを請求する
  • 60日を経過しても会社が責任を怠った役員へ責任追及しない場合は、株主が代表訴訟を提起する

義務違反の役員がいる場合でも、株主はすぐに代表訴訟によって責任追及することはできず、まずは会社へ責任追及の請求をする必要があります(会社法第847条第1項)。60日経過してなお会社が当該役員に責任追及を行わない場合は、株主自ら代表訴訟を通じて責任追及を行なうことになります。

しかし60日という期間が経過することによって回復困難な損害が起こる可能性がある場合は、例外として会社への請求を省略することが認められています(会社法第847条第5項)。

株主代表訴訟から会社を守るために

取締役等の役員同士による監視体制を強化し、違法行為があれば取締役会にて決議すれば、株主から代表訴訟を起こされる可能性は低くなります。

また、会社や株主の利益を守ることが目的とはなっていない代表訴訟は、提訴することができません(会社法第847条第1項)。株主や第三者の利益を図ることや会社にダメージを与えることが目的となっている代表訴訟は、訴訟要件が満たされていないため却下されます。