株主総会と取締役会は簡略化できる内容と簡略化できない内容があります

株主総会と取締役会それぞれの手続きにおいて、簡略化できる内容とそうでないものとがあります。

まず株主総会と取締役会は、

  1. 招集して
  2. 決議する

という手続きは共通していますが、簡略化するための条件が異なります。

招集手続きを簡略化するための条件

株主総会も取締役会も、株主や取締役全員の同意があれば招集手続きを簡略化することができます。
株主総会と取締役会を開催するためには、会社法で定められた招集手続きを経る必要があります。例えば以下のような場合は、招集手続きを欠く行為となります。

  • 招集権のない者が株主総会の招集通知をする
  • 招集通知の時期までに通知をしていない
  • 書面投票と電子投票を定めているにもかかわらず口頭や電話によって招集通知が行われた

上記のような経緯で株主総会や取締役会が開催された場合であったとしても、株主全員(取締役会の場合は取締役と監査役)の同意があれば招集手続きに不備があっても、決議は有効に成立します(会社法第300条、第368条第2項)。しかし次に解説する書面投票と電子投票によって議決権が行使できる場合は、招集手続きを簡略化することができません。

株主総会・取締役会の決議を省略できる条件

株主総会も取締役会も、書面投票と電子投票を採用することで議決権の簡略化を図ることができます(会社法第298条第1項第3号、第4号)。 株主総会と取締役会に出席しなくても議決権を行使することができるため、議決権者にとっては簡略化を図ることができます。しかし前にも述べたとおり、書面投票と電子投票を採用する場合は招集手続きを省略することができません。決議は簡略化することができても招集手続きは省略することができない点で注意が必要です。

株主総会の決議は、株主全員の同意があれば省略することができます。株主総会の決議事項について書面やメールで同意する意思表示をすれば、それがそのまま決議としてみなされることになるからです。

取締役会の決議は、書面やメールによって決議が成立することを取締役全員が同意すれば省略し、定款に定めることができます。ただし監査役設置会社では監査役が異議の申立てを行わないことが条件となります。監査役に異議があれば、取締役全員の同意があったとしても、決議を省略することはできません。

特別取締役による決議の簡略化

取締役会で決議される「重要な財産の処分や譲受け」と「多額の借財」については、特別取締役だけで決議することができます(会社法第373条第1項)。ただしこの特別取締役による決議の簡略化は、以下すべての条件を満たす取締役設置会社だけに有効です。

  • 取締役の数が6人以上
  • 取締役のうち社外取締役が1人以上存在すること

特別取締役は取締役から3人以上が互選され、過半数が出席し過半数によって決議します。取締役が多い会社の場合は特別取締役を有効に機能させることによって、迅速に意思決定することができるようになります。