取締役等役員の責任は一定の条件のもと制限できる

取締役等役員の任務懈怠責任は、一定の条件のもとに減免し得る旨の規定が存在します。それではさっそく、役員等の責任を制限する具体的な方法について解説していきます。

責任の免除

役員等の任務懈怠の責任は、総株主の同意があれば、免除することができます(424条)。

責任の軽減

役員等の任務懈怠責任の免除に総株主の同意を要するということは、上場会社など株主数が多い会社では、責任の免除が事実上はできないことを意味します。それではあまりにも役員等にとっては酷であるし、責任をおそれて思い切った経営判断ができなくなってしまいます。 そのため、会社法は、より緩やかな要件で、役員等の任務懈怠責任の一部を免除することを認めています。

株主総会決議による軽減

株主総会決議の特別決議によって、責任を軽減することができます。(425条)

軽減できるのは、賠償額から最低責任限度額を控除した額までです。

最低責任限度額は、「役員等の数年分の報酬等の額(何年分かは役職等によって異なります)+新株予約権を行使したことによる利益」と計算されます。つまり、数年分の報酬等の額と、新株予約権を行使したことによる利益の全部にあたる額について、役員等は任務懈怠責任を免れることはできません。

以上の責任軽減のための議案を株主総会に提出する際には、監査役ないし監査委員全員の同意を要します。(425条第3項)

定款の定め+取締役会決議による軽減

特に必要と認めるときには取締役会の決議によって責任の軽減を行うことができる旨を定款で定め、それに基づいて責任を軽減することができます。 軽減できる額は、上記<株主総会決議による軽減>の場合と同じです。

定款の定め+責任限定契約による軽減

社外取締役・会計参与・社外監査役・会計監査人については、責任限定契約による責任軽減も認められます。

この契約は、上記最低責任限度額を限度として社外取締役等が責任を負う旨の契約です。責任限定契約を締結できる旨は、定款で定めておく必要があります。(427条1項2項)