土地賃貸借契約は、建物所有の目的があるかどうかによりルールが大幅に異なります。特に、契約期間や契約更新のルールが複雑です。

この記事では、契約書の作成・審査の担当者にむけて、土地賃貸借契約書の作成やチェックのポイントや注意点を解説します。

よく検討しないで賃貸借契約書を作成してしまうと、思ってもいない不利益を受けることもあります。悩んだら、まずは詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。

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1. 土地賃貸借契約とは?

土地賃貸借契約とは、貸主(地主)が土地を貸し、借主が賃料を支払って一定期間その土地を使用できる契約のことです。

借主は契約終了後、土地を元の状態に戻して返す義務があります。

たとえば、住宅を建てるために土地を購入するのが難しい場合でも、土地を借りることで建物を所有しながら敷地を確保できます。

購入よりも初期費用を抑えられるため、資金面での負担を軽減できるのが特徴です。

土地賃貸借契約は、口約束でも成立します。しかし、契約内容を文書にしておかないと、後で「言った・言わない」のトラブルが起こる可能性があります。
そのため、契約書を作成し、契約の条件や期間、賃料などを明確にしておくことが重要です。

 

2. 土地賃貸借契約は建物所有目的の有無で大きく2種類

土地を借りる契約には、大きく2つの種類があります。
ポイントは「その土地上に建物を建てる目的があるかどうか」です。この違いによって、契約のルールや借主の権利が変わります。

 

2.1 建物所有目的のない土地賃貸借契約

建物を建てる予定がない場合、契約は一般的な土地の賃貸借契約となります。この契約では、借主は土地を駐車場や資材置き場、農地などとして利用することができます。

このタイプの契約には、「借地借家法」という法律が適用されません。借地借家法とは、住まいや仕事のために建物を建てて土地を借りる人を守るための法律で、借主を保護するルールが多く定められています。

一方、建物を建てない契約にはこの法律が適用されないため、契約の内容は貸主と借主が原則として自由に決められます。

契約期間が終われば、借主は原則として土地を返さなければなりません。契約の更新についても、地主の判断によるため、延長を希望する場合は交渉が必要になります。
 

2.2 建物所有目的のある土地賃貸借契約

建物を建てることを前提に土地を借りる場合、「借地権」が発生します。この契約には借地借家法が適用され、借主の権利が強く保護されます。

借地権にはいくつかの特徴があります。

① 契約期間が長い

借地借家法により、借地契約の期間は最低でも30年と定められています(定期借地権を除く)。

② 契約更新の権利がある

通常の借地契約では、契約期間が満了しても借主には契約更新の権利が認められます。貸主は「正当な理由」がないと拒否できません。

③ 契約解除の条件が厳しい

地主が契約を終了させるには、「土地を返してほしい」と言うだけでは契約解除はできず、「正当な理由」(建物の老朽化、再開発など)が必要です。

このように、建物を建てる目的で土地を借りる場合、借主は法律によって手厚く保護されます。そのため、地主側が契約のルールを慎重に検討することが重要です。
 

2.3 建物所有目的となるかどうかの判断基準

では、どのような場合に「建物所有目的」と判断されるのでしょうか?ここでは、①「建物の定義」と②「主たる利用目的の判断基準」の2つのポイントを解説します。

2.3.1 「建物」の定義とは?

借地借家法の適用を受けるためには、まず「建物」が存在していることが前提となります。しかし、「建物」とは具体的にどのようなものを指すのでしょうか?

「不動産登記法」では、建物を「屋根と壁があり、土地に定着し、住居や事業用に使用できるもの」と定義しています。

これをもとに、借地借家法でも次のような条件を満たすものが「建物」と認められます。

  • 屋根と壁があり、風雨をしのげる構造であること
  • 土地に固定されていて、簡単に移動できないこと
  • 住宅や店舗、事務所、倉庫などの用途に使われること

一方で、次のようなものは「建物」に該当しないと判断される可能性が高いです。

  • 簡易な掘っ立て小屋(例:地面に丸太を立て、屋根をトタンで覆っただけの車庫)
  • 事業の補助的に建てられたすぐに撤去できるプレハブ(例:仮設の事務所や倉庫)
  • 屋根だけの構造物(例:壁のない倉庫や駐輪場)

2.3.2 土地の主たる利用目的の判断基準

次に、土地の利用目的が「建物の所有」であるかどうかを見ていきます。

たとえ建物が存在していても、利用目的が「建物を所有すること」でなければ、借地借家法の適用はありません。

建物所有目的と認められるかどうかは、「その建物を所有することが主たる目的であるか、それとも補助的な役割なのか?」がポイントになります。

たとえば、次のような場合は「建物所有目的」と認められやすいです。

  • 住宅を建てるために土地を借りる場合
  • 店舗や事務所を建てて営業するために借りる場合
  • 倉庫や工場などを建てて事業に使用する場合

一方で、土地の利用目的が次のようなものであれば、建物所有目的とは認められません。

  • 駐車場や資材置き場として借りた場合(事務所があっても補助的な役割なら認められない)
  • ゴルフ練習場やスポーツ施設として借りた場合
  • 仮設の管理事務所があるだけの自動車展示場

 

3. 土地賃貸借契約のチェックポイント

土地賃貸借契約では、契約内容によって貸主・借主の権利義務が大きく異なります。
契約締結前に、契約期間や更新、賃料、禁止事項などの重要ポイントをしっかり確認しましょう。

 

3.1 契約当事者

契約の当事者には、土地を貸す「貸主」と土地を借りる「借主」がいます。

契約を結ぶ際には、それぞれが契約を締結する正当な権限を持っているかを確認する必要があります。

① 貸主の確認

貸主が本当に土地の所有者であるかどうかを確認するため、法務局で登記事項証明書を取得し、所有者の情報を確認します。

もし貸主が土地の所有者でない場合(たとえば、第三者が地主の代理人として契約する場合)、適切な権限があるかを確認しなければなりません。

② 借主の確認

借主が法人の場合、その代表者が契約を締結する権限を持っているかどうかを確認することが必要です。

また、借主の信用情報(支払い能力)を確認することで、将来的なトラブルを防ぐことができます。

 

3.2 契約の対象となっている土地の情報

契約する土地の情報は、具体的に記載する必要があります。次の情報を契約書に明記することが一般的です。

  • 所在地:地番とともに明記
  • 地目:宅地、農地、雑種地など
  • 地積:土地の面積
  • 境界:隣接地との境界が明確かどうかなど

土地の登記事項証明書を取得し、最新の情報を確認することが重要です。

古い登記情報では、契約締結時点での正確な権利関係がわからないため、必ず最新の証明書を用意しましょう。
 

3.3 賃貸借契約の目的

契約を締結する際には、「どのように土地を使用するのか」を明確にすることが重要です。

契約の目的が明確でないと、契約期間中や更新時に貸主・借主の間で認識のズレが生じ、トラブルの原因になることがあります。

契約書には、具体的な使用目的を明記し、契約内容を双方で十分に確認することが必要です。

3.3.1 建物を建てる目的があるか?

土地を借りる理由が「建物を建てるため」なのか、それとも「建物を建てずに利用するのか」によって、契約の種類や適用される法律が変わります。

建物所有を目的とする場合は、借主が長期にわたり土地を利用できるよう借地借家法という法律で保護されています。

契約期間や契約更新のルールが厳格であり、貸主が契約解除を希望しても、正当な理由がなければ認められません。

一方、建物を建てずに土地を利用する場合は、借地借家法の適用がなく、契約期間や更新の条件を貸主・借主間で自由に設定できます。

具体的な違いは、次の表を参考にしてください。

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項目建物所有目的(借地契約)建物所有目的でない(一般土地賃貸借)
契約期間借地借家法の規定により、契約期間は最低30年(定期借地権を除く)借地借家法が適用されないため、貸主・借主の合意によって自由に設定可能
契約更新通常の借地契約では、契約期間満了後も借主が希望すれば原則として契約が自動的に更新借主は契約満了後に更新の請求ができない。貸主が合意しない限り契約は終了
契約解除の制限貸主が契約を終了させるには「正当な理由」が必要借地借家法の保護がないため、貸主は比較的自由に契約を終了できる

3.3.2 事業用か居住用か?

土地の利用目的が「事業用」なのか「居住用」なのかによっても、契約の内容が異なります。

事業用の土地利用は、営業活動の影響や用途地域の制限を考慮する必要があり、特約が設定されることが一般的です。

一方、居住用の土地利用では、借地借家法による保護が強く、貸主は契約更新を拒否しにくい傾向があります。

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項目事業用居住用
用途制限都市計画法による用途地域の制限を受ける場合がある住宅地としての利用が主であり、商業利用は制限されることが多い
特約の設定営業活動の影響に応じて、「営業時間の制限」「看板設置の可否」「第三者への転貸の可否」などの特約が必要住宅用のため、特約は比較的少ないが、建物の増改築やペットの飼育制限などがある
契約期間事業の安定性を考慮し、借主は長期契約を希望するケースが多い。貸主は短期契約を希望するケースもある。長期の居住を考慮し、借主は長期契約を希望するケースが多い。貸主は短期契約を希望するケースもある。
定期借地権の活用事業用定期借地権(10年以上50年未満)の場合は更新が認められない定期借地権(50年以上)の場合は更新が認められない

事業用として土地を借りる場合、事業の種類や規模に応じた契約条件を決める必要があります。

特に、土地の用途地域による制限を確認し、契約内容に特約を設定することが一般的です。

たとえば、飲食店や工場などを開業する場合、騒音や臭気の問題を考慮し、貸主との間で制限を設けるケースがあります。

一方、居住用として土地を借りる場合は、借主の権利が法律で強く保護され、貸主は正当な理由なしに契約更新を拒否できません。

住宅を建てる場合、普通借地権が適用され、契約期間が長くなる傾向にあります。

ただし、定期借地権を利用する場合は、契約期間終了後に土地を更地にして返還する必要があるため、契約内容をよく確認することが重要です。
 

3.4 契約期間と契約更新

土地の賃貸借契約では、契約期間や更新のルールを明確に定めることが重要です。
特に、借地借家法が適用される場合と、適用されない一般の土地賃貸借契約では、大きく異なる点があります。

まず、契約期間や更新のルールをまとめた表を確認しましょう。

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項目普通借地権定期借地権一般の土地賃貸借
(建物を建てない場合)
契約期間30年以上10年以上50年未満(事業用)
50年以上(居住用)
当事者の合意で自由に設定可能
契約更新借主が希望すれば自動更新(法定更新)契約期間満了で終了(合意なければ更新なし)契約期間満了で終了(合意なければ更新なし)

ルールが確認できたら、次の点に注意して契約期間と契約更新について決めましょう。

3.4.1 契約期間の決め方

① 長期間の契約になるため慎重に設定する

土地の賃貸借契約は通常、数十年単位で締結されます。契約期間を決める際には、借主・貸主双方が将来の土地利用計画を考慮し、慎重に設定する必要があります。

② 短すぎる契約期間は法律上認められない場合がある

普通借地権の場合、最低契約期間は30年と定められています。30年未満の契約を結んでも、法律上は30年とみなされるため、貸主は契約期間の設定に注意が必要です。

3.4.2 契約更新のルールを明確に

① 普通借地権は契約更新が前提

普通借地権では、契約満了後に借主が引き続き土地を使用する意思を示せば、自動的に更新されます。

貸主が契約の更新を拒否するには「正当な理由」が必要となるため、契約締結時に更新の可能性を考慮することが重要です。

② 定期借地権は契約期間満了で終了する

定期借地権は契約満了で終了し、更新の権利はありません。

借主は契約終了後の対応(事業の移転や住宅の買い替えなど)を事前に計画しておく必要があります。

3.4.3 地代や更新料の設定に注意

① 更新時の条件を事前に決める

普通借地権では契約更新時に更新料の支払いや地代の見直しが発生することがあります。

更新料の有無や金額については、契約締結時にしっかり取り決めておくことでトラブルを回避できます。

② 定期借地権は終了時の費用負担が発生する

定期借地権では、契約満了後に借主が建物を解体し、更地にして返還する義務があります。

建物の解体費用は高額になる場合があるため、契約前に費用負担について十分に確認することが大切です。
 

3.5 賃料

土地を借りる際の賃料は、契約の重要な要素の一つです。
賃料の設定方法や支払い条件を明確にしないと、後々トラブルが発生する可能性があります。
特に、契約期間が長くなるケースが多いため、賃料の改定や更新時の対応についても、事前にしっかりと取り決めておくことが重要です。

3.5.1 賃料の基本

土地の賃料は月額で設定するのが一般的です。契約書には、次のような事項を明記しておきましょう。

  • 賃料の金額
  • 支払い方法(銀行振込・口座引き落とし・現金払いなど)
  • 支払い期日(毎月○日まで)
  • 遅延時のペナルティ(延滞利息や契約解除の条件)

特に支払い方法は、貸主・借主の間でトラブルが起きやすいポイントです。

たとえば、口頭の約束だけでなく、契約書に詳細を記載しておくことで、未払い時の対応がスムーズになります。

3.5.2 敷金・保証金について

賃料の他に、契約時に敷金や保証金を支払う場合があります。これは、契約終了時の原状回復費用や未払い賃料の補填として利用されます。

また、契約書には敷金・保証金の返還条件を明確に記載しておくことが重要です。

特に、原状回復の範囲について曖昧な記載があると、トラブルの原因になります。

3.5.3 賃料の改定・更新料

長期間の契約では、経済状況や地価の変動によって賃料を変更するケースがあります。

そこで、契約書に賃料改定の条件を盛り込んでおくことが大切です。

  • 賃料改定のタイミング:○年ごとに見直すのか、契約更新時に変更するのか
  • 改定の基準:近隣相場などに応じて変更するかどうか
  • 更新料の有無:更新時に支払う追加料金が発生するか

賃料の改定は、貸主・借主双方の合意が原則として必要なため、契約時に詳細を取り決めておくことで、後のトラブルを回避できます。

3.5.4 第三者への譲渡・承諾料

土地を借りた後、借主がその権利を第三者に譲渡することもあります。

たとえば、借地上に建物を建ててから売却する場合、借地権も購入者に引き継がれることになります。

この際、貸主の承諾が必要となる場合があるため、契約時に譲渡の可否と承諾料の取り決めを明記しておきましょう。

  • 譲渡時の貸主の承諾要否
  • 承諾料の金額(譲渡価格の○%など)
  • 無断譲渡時の対応(契約解除の可能性など)

貸主の承諾なしに借地権を譲渡すると、契約違反となり、契約解除のリスクが高まります。

そのため、事前に貸主と交渉し、適切なルールを設定しておくことが重要です。
 

3.6 禁止事項

土地の賃貸借契約には、「借主がやってはいけないこと」が禁止事項として定められています。
これらのルールは、土地の適切な利用を守るために重要です。
禁止事項に違反すると、契約の解除や損害賠償の請求を受ける可能性があるため、内容を十分に理解しておきましょう。

禁止事項を設ける理由は、次のようなトラブルを防ぐためです。

  • 土地の価値が損なわれる(原状回復が困難な改変など)
  • 貸主の意図しない用途で使用される(危険物の貯蔵、違法営業など)
  • 無断で第三者に貸し出される(転貸や権利譲渡)

契約違反が発覚した場合、貸主は借主に是正を求めたり、契約を解除することができます。

違反によるトラブルを避けるため、禁止事項は契約書で明確に定め、事前に十分に確認しておきましょう。

禁止事項の内容は、契約ごとに異なりますが、一般的に次のようなものが含まれます。

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禁止事項内容
無断譲渡・転貸貸主の許可なしに、借地権を第三者に譲渡したり、また貸したりすることはできません。
用途の変更農地として借りた土地を駐車場にするなど、契約で決めた用途以外の目的で利用することは禁止されることが多いです。
建物の増改築・大規模修繕借地上の建物の増築・改築、または大規模な修繕を行う場合は、貸主の承諾が必要なことが一般的です。
危険物の持ち込み・使用ガソリン、ガスボンベ、化学薬品などの危険物を貯蔵・使用することは禁止されている場合が多いです。
環境や近隣に迷惑をかける行為産業廃棄物の投棄や悪臭・騒音を発生させるような事業を行うことは、多くの契約で禁止されています。
土地の形状や設備の無断変更地面を掘り起こす、井戸を掘る、フェンスを設置するなど、土地の形状を大きく変える行為は、貸主の承諾が必要になることが一般的です。

契約時には、次のポイントを意識して禁止事項を確認し、トラブルを防ぎましょう。

3.6.1 契約前に禁止事項をしっかり確認する

契約を結ぶ前に、どのような禁止事項が設定されているのかをしっかりと確認しましょう。

特に、事業用途や土地の活用方法によっては制限が厳しくなることがあります。

契約書の内容に疑問がある場合は、貸主に確認し、必要があれば交渉を行うことが大切です。

3.6.2 貸主の承諾が必要な項目を明確にする

契約書には、借主が自由にできることと、貸主の承諾が必要な事項が記載されています。

たとえば、建物の増改築や転貸などは、貸主の許可が必要なケースが多いため、事前に合意を取っておくことが重要です。

3.6.3 用途変更の制限に注意する

契約時に決めた用途(たとえば「駐車場として利用する」「資材置き場として使用する」など)を変更したい場合、契約上問題がないか確認しましょう。

用途の変更が禁止されている場合、無断で変更すると契約違反になる可能性があります。

3.6.4 違反すると契約解除のリスクがある

禁止事項に違反すると、貸主は契約を解除する権利を持ちます。故意ではなくても、知らずに禁止事項を破ってしまうと、契約の継続が難しくなることもあります。

特に、無断譲渡や転貸、重大な用途変更などは、契約解除の原因になりやすいので注意が必要です。

3.6.5 禁止事項の変更は貸主と相談する

契約後に禁止事項を変更したい場合は、貸主と相談し、合意を得たうえで契約を改定しましょう。

たとえば、契約当初は駐車場として借りた土地を資材置き場に変更したい場合、貸主の許可が必要なことがほとんどです。

勝手に用途を変更すると、トラブルの原因となります。
 

3.7 中途解約や解除

土地の賃貸借契約は、貸主と借主の双方の権利を守るため、契約期間中に解約することは基本的にできません。
契約が途中で解約されると、貸主は安定した収入を失い、借主も生活や事業が影響を受けるためです。

もっとも、次の3つのケースでは中途解約ができます。

3.7.1 例外的に中途解約ができるケース

契約期間中でも、次のようなケースでは例外的に解約が認められる可能性があります。

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解約の申し出をする側解約が認められる主な条件
借主建物の老朽化や災害により使用が困難な場合
貸主借主が契約違反をした場合(例:地代の長期滞納、無断増改築、無断転貸、契約目的外の利用)

貸主が借主の契約違反を理由に解約する場合、事前に催告(違反の是正を求める通知)を行い、それでも改善されない場合に契約解除が可能となります。

3.7.2 合意による中途解約

貸主と借主が双方合意した場合、契約期間中でも解約することが可能です。

ただし、貸主が解約に応じる条件として「解約承諾料(違約金)」を求めることがあります。

解約を希望する場合は、事前に貸主と交渉し、解約条件を明確にしておくことが重要です。

3.7.3 特約(解約権留保特約)がある場合

契約書に「解約権留保特約」(中途解約を可能にする条項)がある場合、借主は特定の条件を満たせば解約できます。
通常、この特約には次のような内容が含まれます。

  • 何か月前までに解約の申し出が必要か
  • 解約の際に解約承諾料の支払いが必要か
  • 解約の際の土地の返還条件(更地にするなど)
  • 解体費用の負担

契約書をよく確認し、特約の有無をチェックしましょう。
 

3.8 連帯保証人

土地の賃貸借契約では、借主が賃料を支払えなくなった場合に備えて、連帯保証人を設定することが一般的です。
連帯保証人は、借主と同じように債務を負い、未払い賃料や原状回復費用などを支払う義務があります。

もっとも、保証人保護のためのルールがあります。契約を結ぶ際には、連帯保証人の責任範囲や注意点を正しく理解しておくことが重要です。

3.8.1 連帯保証人が負う責任の範囲

連帯保証人は、借主が負う義務を肩代わりする立場にあります。具体的には、次のような費用が含まれます。

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項目保証対象
賃料毎月の地代
更新料契約更新時の支払い
原状回復費用退去時の修繕費用
損害金契約違反による損害賠償など

ただし、連帯保証人が借主の代わりに土地を明け渡す義務はありません。

借主が立ち退きを拒否した場合でも、連帯保証人が明け渡しを直接求められることはありません。

3.8.2 契約更新や相続の場合の連帯保証人の責任

契約更新時の連帯保証人の責任

契約期間が満了し、借主が更新を希望した場合、通常は連帯保証人の責任も自動的に継続します。

ただし、契約書に「更新時には新たな保証契約が必要」といった特約がある場合は、改めて契約を結び直す必要があります。

連帯保証人が亡くなった場合

連帯保証人が死亡すると、その連帯保証債務は相続の対象になります。相続人は連帯保証人が死亡するまでに発生した債務については責任を引き継ぐことになりますが、相続放棄をすることで連帯保証人の義務を免れることができます。

連帯保証人が死亡すると保証すべき元本が確定するので、その後に発生した債務を相続人が負担することはありません。

借主が亡くなった場合

借主が亡くなった場合、その時点までに発生した債務を連帯保証人が負担することになります。借主の相続人が賃貸借契約を引き継ぐことになりますが、連帯保証人は相続開始後に発生した債務についての責任を負うことはありません。

3.8.3 貸主は極度額の設定をしなければならない

連帯保証人の負担を軽減するため、保証人の責任範囲を制限するルールがあります。

個人の連帯保証人には責任の上限(極度額)を設定することが必須となりました。

  • 保証契約を締結する際、契約書に極度額を記載しなければ無効になる
  • 極度額は一般的に賃料の12〜24か月分が妥当とされる

連帯保証人との保証契約が無効になることを防ぐため、この極度額の設定は非常に重要です。

3.8.4 貸主は連帯保証人への情報提供義務がある

貸主は、連帯保証人から求められた場合、借主の賃料滞納状況や未払い金額について情報提供をする義務があります。

これは、連帯保証人が自分の責任範囲を事前に把握し、想定外の負担を回避できるようにするための制度です。

しかし、現実的には貸主側が積極的に情報を提供するケースは少ないため、保証人になる場合は事前に契約内容をよく確認することが重要です。

 

4. 建物所有目的の土地賃貸借契約に特有のチェックポイント

建物を所有する目的で土地を借りる場合、一般の土地賃貸借契約とは異なる重要なポイントがあります。
借地借家法の適用、契約期間の制約、更新のルール、借地権の譲渡や建物の増改築の可否などを理解しておくことが、契約後のトラブルを避けるうえで重要です。

 

4.1 契約期間

建物所有目的の土地賃貸借契約の期間は、借地借家法により最低30年以上と定められています。
ただし、契約の種類によって適用される期間が異なるため、契約時にしっかりと確認する必要があります。

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契約の種類最低契約期間
普通借地権(一般的な借地契約)30年以上
定期借地権(一般)50年以上
事業用定期借地権10年以上50年未満
建物譲渡特約付借地権30年以上
  • 普通借地権の場合、契約期間を30年未満に設定しても、法律上30年とみなされます。
  • 事業用定期借地権の場合、契約期間は10年以上50年未満です。契約期間が満了すると、契約は終了します。
  • 建物譲渡特約付借地権の場合、契約期間は30年以上です。契約期間が満了すると、契約は終了します。

    借地人は建物を地主に譲渡する義務があり、土地を更地にして返還する必要はありません。

 

4.2 契約更新

建物所有目的での土地の賃貸借契約は、契約期間が満了しても自動的に終了するわけではなく、借地人が引き続き使用する意思を示せば更新されるケースが一般的です。

契約更新のルールは、次の表のとおりです。

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更新回数更新後の存続期間
1回目の更新20年以上
2回目以降の更新10年以上

普通借地権の更新

契約期間が満了すると、借地人が引き続き土地を使用する意思を示せば、法的に契約は自動更新されます(法定更新)。

ただし、更新の際に、地主に「正当な理由」が認められれば更新を拒否することができることもあります。

また、更新の際には、借地人から更新料を求められることがあります。

さらに、更新時に地代の値上げが行われることがあるため、契約時に更新時の条件を明確にしておくことが重要です。

定期借地権の更新

定期借地権の場合、契約期間満了時に契約は終了し、更新は認められません。借地人は建物を解体し、更地にして返還する必要があります。

ただし、当事者が合意すれば、新たに契約を締結することはできます。

 

4.3 借地権の譲渡

借地権を第三者に譲渡する場合、地主の承諾が必要です。

地主が承諾しない場合は、裁判所に申し立てることで承諾に代わる許可を得ることができます。

借地権の譲渡に関するルールは、次の表のとおりです。

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項目内容
地主の承諾が必要・借地権を第三者に売却・譲渡するには、地主の承諾が必要
・借地権の譲渡には「譲渡承諾料」が必要となることが多い
無断譲渡は契約違反無断で借地権を譲渡すると契約解除のリスクがある
裁判所の許可地主が承諾しない場合、裁判所の許可を得ることができる

借地権の譲渡には「譲渡承諾料」が必要となることが多いです。一律の基準はありませんが、相場は借地権価格の10%程度と言われています。
 

4.4 建物の増改築

建物所有目的の土地賃貸借契約では、借地人が自由に建物を増改築できるわけではありません。

契約によっては、地主の承諾が必要とされるケースもあります。

建物の増改築に関するルールは、次の表のとおりです。

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項目内容
特約がない場合
  • 借地人は自由に増改築が可能
  • ただし、耐用年数が延びるような改築を行った場合、地代の増額要因になることがある
増改築禁止特約がある場合地主の承諾が必要。承諾料が必要となることが多い。
(増改築禁止特約がある場合に)
無断増改築をした場合
契約違反となり、契約解除の可能性あり

増改築の可否を事前に契約書で確認しましょう。増改築が可能だったとしても、重要な改築を行う場合は、地主と協議しておくと安心です。

なお、増改築禁止特約がある場合の承諾料の一律の基準はありませんが、相場は土地価格の1~10%と言われています。

 

5. 土地賃貸借契約に関するよくあるご質問

ここでは、土地賃貸借契約に関するよくあるご質問にお答えしています。
 

5.1 契約書は必要ですか?

契約書の作成は必須ではありませんが、作成を強く推奨します。

口頭の約束でも土地賃貸借契約は成立します。しかし、契約内容を明確にするため、書面で契約を交わすのが一般的です。

契約書がないと、将来的なトラブルの際に、契約内容の証明が難しくなります。
 

5.2 土地賃貸借契約と借地契約はどう違いますか?

土地賃貸借契約と借地契約は、法律上は同じものですが、一般的には次のように使い分けられることが多いです。

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契約の種類特徴
土地賃貸借契約一般的な土地の貸し借りの契約。借主が建物を建てる場合と建てない場合の両方を含む。
借地契約借主が建物を建てることを前提とした契約。借地借家法が適用され、契約期間が最低30年以上と定められている。

 

5.3 土地賃貸借契約と土地使用貸借契約はどう違いますか?

土地賃貸借契約と土地使用貸借契約は、法律上の取り扱いが異なります。

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契約の種類特徴
土地賃貸借契約
  • 借主が賃料(地代)を支払う契約。借地借家法または民法が適用される
  • 貸主が一方的に契約解除することは難しい
土地使用貸借契約
  • 無償で土地を貸す契約。借地借家法は適用されず、民法が適用される
  • 貸主の事情によって契約を自由に解除できる場合がある

 

5.4 通常の借地契約と定期借地契約はどう違いますか?

通常の借地契約と定期借地契約の主な違いは次の表のとおりです。

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契約の種類契約期間更新の可否契約満了後の対応
普通借地契約最低30年以上更新可能(借主の保護が強い)更新が繰り返され、実質的に長期間借り続けることができる
定期借地契約
  • 10年以上50年未満(事業用)
  • 50年以上(一般居住用)
更新なし(契約満了で終了)契約終了後、借主は建物を解体し、更地にして返還する義務がある

 

5.5 土地を一度貸すと、返ってこなくなりませんか?

土地を貸した場合、通常の借地契約では契約更新が認められるため、貸主が一方的に返還を求めるのは難しいです。

借地借家法により、契約期間満了後も借主が更新を希望すれば、契約が継続されるのが基本です。

しかし、次のような場合には、貸主側から契約の解除や更新拒絶をすることが可能です。

① 借主の契約違反による契約解除

借主が地代の長期滞納、無断での転貸・譲渡、用途変更などの契約違反をした場合、貸主は契約を解除し、土地の返還を求めることができます。

ただし、まずは是正を求め、それでも改善されない場合に限られます。

② 貸主の「正当事由」による契約更新拒絶

貸主自身が自宅を建てるために土地を使用する場合や、公共事業のために土地を提供する必要がある場合など、やむを得ない事情があるときは、契約の更新を拒否できる可能性があります。

ただし、正当性を示すためには、借主への立ち退き料の支払いなど、一定の補償が求められることが一般的です。

③ 確実に土地を返してもらう方法

期間満了で確実に土地を返還してもらいたい場合は、「定期借地契約」を結ぶのが最善策です。

この契約では、契約期間が満了すれば自動的に契約が終了し、借主は土地を返還する義務を負います。

土地を貸す際は、通常の借地契約と定期借地契約の違いを理解し、どちらが適しているかを慎重に検討することが重要です。
 

5.6 収入印紙は必要ですか?

土地賃貸借契約書は、原則として収入印紙が必要です。印紙税の額は、次の表のとおりです。

※以下のコンテンツは左右にスワイプしてご確認ください。

契約書に記載された契約金額印紙税額
1万円未満非課税(※)
10万円以下200円
10万~50万円以下400円
50万~100万円以下1,000円
100万~500万円以下2,000円
500万~1千万円以下1万円
1000万~5000万円以下2万円
5000万~1億円以下6万円
1億~5億円以下10万円
5億~10億円以下20万円
10億~50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

※契約金額が1万円未満であっても、土地賃貸借契約書に金額が記載されていない場合は200円の印紙税が課されます。

契約書に必要な印紙を貼らなかった場合、税務署の指摘を受けると本来の印紙税額の3倍の過怠税が課せられることがあります。

適切に収入印紙を貼り、消印(割印)をすることで、印紙税のトラブルを防ぐことができます。

6. まとめ:土地賃貸借契約で悩んだら弁護士に相談

土地賃貸借契約は、一見シンプルに見えても、契約内容によって貸主・借主の権利や義務が大きく変わります。

特に、契約期間や更新の条件、契約終了後の取り扱いを十分に理解していないと、思わぬトラブルに発展する可能性があります。

賃貸借契約書や売買契約書のひな型は簡単に手に入りますが、多くの場合、中立的な内容で作成されています。

そのため、当事者のどちらかに有利になるように調整されているわけではありません。契約書の内容は、貸主・借主の交渉次第で有利にも不利にもなり得ます。

一般的なひな型を使って契約をしている場合は、定期的に内容を見直し、自社にとって最適な条件となっているかを確認することが重要です。

また、契約内容に不安がある場合や、具体的なリスクを軽減したい場合には、弁護士への相談を検討しましょう。

よつば総合法律事務所では、不動産会社や企業の契約に関する豊富な実績があり、宅地建物取引士の資格を持つ弁護士も在籍しています。

契約書の作成・チェックの際に不明点がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

監修者:弁護士 加藤貴紀

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