「不動産の持ち主が亡くなったが、相続手続きをどうすればいいのか?」
「不動産をどう分ければよいのか?」
「不動産相続で争いとなり遺産分割協議が進まないが、何か方法はあるか?」
この記事では不動産の相続でお悩みの方にむけて、不動産を相続する手続きや不動産の分け方を解説します。
不動産分野は、詳しい弁護士と、そうでない弁護士がいます。悩んだら、まずは詳しい弁護士へのご相談をおすすめします。
目次
1. 相続が発生したときの不動産の取扱い
人が亡くなると故人の所有していた不動産はどうなるのでしょうか?
相続が発生すると、遺産は相続人が全員で共有している状態に原則としてなります。
そのため、相続人が何人もいるときは、遺産分割協議をするまで不動産を自由に売ったり貸したりすることができません。
相続人間でどのように分割するかが決まらないと、いつまで経っても不動産を活用することができなくなってしまいます。
遺産に不動産があるときは、適切に相続の手続きを進めていくことが必要です。
2. 不動産を相続する手続き
不動産を相続するときには、いくつかの手続きを踏んでいく必要があります。具体的には、次のような流れです。
- ① 遺言書の有無の確認
- ② 相続人の確定
- ③ 相続財産の把握
- ④ 相続財産の評価
- ⑤ 遺産分割協議
- ⑥ 相続登記の申請
- ⑦ 相続税の申告と納税
では、1つずつこれから詳しくご説明していきます。
① 遺言書の有無の確認
相続が発生したときは、故人が遺言書を作成していないかを確認することが大切です。
なぜなら、遺言書が作られていれば、遺産分割協議をすることなく特定の相続人が不動産を取得することもあるからです。
遺言書があれば、不動産について遺産分割協議をせずに、特定の相続人が自由に売買したりできます。
遺産分割協議をした後に遺言書が見つかると、再度相続手続きをやり直したり、相続人の間で争いが発生してしまうこともあります。
そのため、必ず最初に遺言書があるかを確認しましょう。
なお、公証役場で遺言書を作っているときは、公証役場で遺言書があるかを確認できます。
自筆の遺言書を作成して法務局に預けているときは、法務局で遺言書があるかを確認できます。
② 相続人の確定
相続人が確定しないと遺産分割協議ができない
遺産分割協議は相続人全員でしなければなりません。 一人でも足りていないと遺産分割協議が成立しないため、誰が相続人なのかを最初に確認することが大切です。
相続人の確定には戸籍の取得が必要
相続人を確定するためには、故人やその家族の戸籍を市役所などで取得しなければなりません。
故人が結婚や引っ越しなどで本籍地を移転させていると、色んな場所の市役所などから戸籍を取り寄せることになり手間がかかることがあります。
もっとも、戸籍の広域交付制度を使えば、近くの市役所などで一括して戸籍を集めることができます。手間を減らすために広域交付制度を利用してもよいかもしれません。
③ 相続財産の把握
不動産に漏れがないかの調査が重要
遺産分割をする前に、分割する相続財産の範囲を決めておく必要があります。
故人がどのような不動産を所有していたかを確認するうえでは、次のような資料で確認することが多いです。
- 名寄帳
- 固定資産評価証明書
- 固定資産税課税明細書
- 不動産登記
- 所得税の申告書類
名寄帳による調査が効果的
名寄帳には、故人が所有していた不動産が一覧で載っています。また、課税の対象とならない山林なども載っていることから、相続財産を探すのに役立ちます。
ただし、名寄帳には同じ市区町村内の不動産しか載っていません。
そのため、特定の市町村の名寄帳だけですべての不動産が判明するわけではないという点に注意しなければなりません。
遺産が後日見つかった場合の扱い
後日新たに遺産が見つかったときは、その遺産だけ改めて遺産分割協議をすることで解決することができます。
何度も遺産分割協議をするのが面倒なときは、後日新たに見つかった遺産を特定の相続人が取得するということを事前に決めておくこともできます。
④ 相続財産の評価
遺産分割をする際には、相続財産がどれくらいの価値を持っているものであるかを決めなければなりません。
もっとも、不動産については、現金や預金と違ってその価値を評価することが簡単ではありません。
不動産の価値は一物五価(いちぶつごか)と言われています。一物五価とは、「一つの不動産に対して価格を示す指標が五つあること」を意味します。
具体的には、公示価格(公示地価)、実勢価格、基準地価、路線価、固定資産税評価額の五つを指します。
遺産分割をするときには、相続人間でどの基準で不動産を評価するのかを決める必要があります。
不動産の評価が決まらないときは、不動産業者の査定や不動産鑑定士の鑑定を参考にして決めることも方法の一つです。
⑤ 遺産分割協議
相続人の間で遺産の分け方が決まったら、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書を作成すれば、相続人の間で決まった分け方が明確になるので、後で争いになりにくくなります。
また、不動産の相続登記をするときに遺産分割協議書が必要となってきますので、内容に誤りが無いように作成する必要があります。
記載が間違っていると作り直すことになってしまうため、弁護士や司法書士の確認を受けて作成することをおすすめします。
⑥ 相続登記の申請
不動産が遺産にある場合、遺産分割協議書を作成した後は、司法書士に依頼して相続登記をしてもらいます。
相続登記をしないまま放置すると、行政上のペナルティである過料を支払う必要が出てくることもありますので、早めに手続きをすることをおすすめします。
⑦ 相続税の申告と納税
10か月以内に相続税を申告して納税
故人が一定以上の相続財産を持っていた場合、相続が発生してから10ヶ月以内に原則として相続税の申告と納税しなければなりません。
相続税の申告と納税をするときは、相続人に有利になる様々な特例があります。特例を使うためにも期限を守る必要があります。
相続税の申告と納税を忘れてしまうと、延滞税などのペナルティを負担しなければならなくなるので注意が必要です。
遺産分割が合意できないときは暫定的に申告と納税
相続人の間でどのように遺産を分けるかが決まらないときは、ひとまず法定相続分で相続する前提で相続税の申告と納税をします。
そして、遺産分割協議が成立した後に、実際の分け方に応じて修正申告をすることが一般的です。
相続税申告が必要かどうかわからないときは税理士に相談
故人の財産の金額によっては、相続税を申告しなければいけないかどうかがはっきりしないことがあります。
どのように相続税の申告手続きを進めるかについては、故人が亡くなった後お早めに税理士に相談することをおすすめします。
3. 相続した不動産の4つの分け方
不動産を相続するときの取得の方法は、次の4つのパターンがあります。
- ① 現物分割
- ② 代償分割
- ③ 換価分割
- ④ 共有分割
これらについて1つずつ説明していきます。
① 現物分割
現物分割は、不動産をそのまま特定の相続人が取得する分割方法です。
たとえば、相続人が兄弟2人で、遺産にA不動産とB不動産があった事例で考えてみます。兄がA不動産を取得、弟がB不動産を取得という分割方法が現物分割です。
② 代償分割
代償分割は、基本的には現物分割と似ていますが、特定の相続人が法定相続分よりも多くの遺産を取得したときに、差額を代償金として他の相続人に支払うという分割方法です。
たとえば、兄弟2人が相続人で、遺産は1000万円の土地だけがあるという事例で考えてみます。
本来、兄弟は1人あたり500万円分の遺産を取得することができます。もっとも、片方が土地全てを取得すると500万円多く取得することになってしまいます。
そこで、差額500万円をもう片方の相続人に代償金として支払うという分割方法が代償分割です。
③ 換価分割
換価分割は、不動産をそのまま誰かが取得するのではなく、売却してお金に換えた後、その現金を分割する方法です。
相続人が誰も遺産の不動産を欲しがらなかったり、取得したときの代償金が支払えないようなときに換価分割にすることが多いです。
相続人の間で不動産の評価が決まらないときは、不動産を売却すればその点に争いがなくなるので、そういった争いが生じているときも有益な分割方法です。
④ 共有分割
共有分割は、不動産を共有で取得する分割方法です。 相続人全員が遺産の不動産を欲しがらなかったものの、売ってお金に換えることもできないというようなケースで最終手段として選ばれる分割方法です。
不動産を共有すると、自分だけで自由に売ったり貸したりできなくなります。
また、共有者の相続が発生して権利者が増えてしまうと、さらに不動産の利用が難しくなってしまいます。
そのため、共有での分割はおすすめしていません。 結果として共有分割になってしまったときは、共有物分割訴訟で解決する方法が残っています。
4. 不動産相続のトラブル例
例①:不動産を誰が取得するか?
遺産に不動産があるとき、相続人の間で取得したい不動産がかぶってしまうことがよくあります。
たとえば、実家の土地建物や評価の高い土地建物のような魅力のある不動産があるときは、このようなトラブルが発生しやすいです。
反対に、山林や農地などの売ったりすることが難しい不動産があるときは、相続人の間で押し付け合ったりすることになって取得する人が決まらないことが多いです。
裁判所での遺産分割審判の手続きを行えば、裁判所が分割方法を決めてくれます。誰が取得するかが全く決まらないときは、審判の手続きを検討するとよいでしょう。
例②:分割時の不動産の評価額はいくらか?
遺産分割の前提となる不動産評価についても争いが発生することが多いです。
自分自身が有利になるためには、自分が取得する不動産は低く、他の相続人が取得する不動産は高く評価されてほしいと思ってしまうからです。
また、不動産は色々な評価方法があるため、簡単に評価を決めることが難しいというのもトラブルになりやすい原因のひとつです。
遺産分割調停において不動産の評価額が決まらないときは、裁判所が選んだ不動産鑑定士に不動産の鑑定をしてもらい、不動産の評価額を決めることが多いです。
例③:相続税の支払いはできるか?
相続が発生したときは、10ヶ月以内に相続税の申告と納税をしなければなりません。
しかし、遺産分割協議を成立させて遺産の現金預金を手に入れないと、相続税を支払うことができないということもしばしばあります。
そのようなときは、預貯金の仮払い制度を利用して相続税の納税資金を作ることも可能です。
預貯金の仮払い制度とは、遺産分割協議が成立していなくても、次のどちらか低い金額を受取ることができる制度です。
- 相続発生時の預貯金の残高×法定相続分×1/3
- 150万円
5. どのような時に弁護士に相談すべき?不動産相続における弁護士相談のメリット
不動産分割トラブルに発展したとき
相続人の間で遺産の分け方が決まらないときは、遺産分割協議を成立させるために交渉をしたり、調停や審判などの裁判手続をする必要が出てきたりします。
そのような場合には、弁護士に相談していただくことをおすすめします。
不動産価値の把握
不動産の評価方法はいくつもあり、どのように評価するべきかを決めるのは難しいです。
不動産の評価方法は、地域の特色なども踏まえて考える必要があります。弁護士にご相談いただきながら、どのようにするべきかを決めるのがおすすめです。
また、不動産鑑定士や不動産業者の意見を聞きつつ評価を決めるのが適切なことも多いので、これらの専門家と連携している弁護士に相談することが大切です。
相続人との交渉
相続人同士で仲が悪いと相続のトラブルが発生しやすくなります。
そのようなときには他の相続人と直接やり取りをするのがストレスになることも多いです。
そのため、交渉の窓口を弁護士に依頼することで問題の解決に当たるという方法も一つの方法です。
6. まとめ:遺産に不動産があるときの相続の法的対応は詳しい弁護士へ
不動産の関係する相続手続きは専門的な判断が必要になることが多いです。
そのため、様々な専門家と連携してワンストップで問題解決に対応できる当事務所にご相談いただければ、皆様の問題を迅速に解決することが可能になります。
お困り事があればお早めにご相談ください。