建設業界からみた“働き方改革“

1.“働き方改革”が2019年4月1日から順次実施されています

2019年4月1日から働き方改革関連法案の一部がすでに施行されています。

残業時間の上限規制、有給休暇の取得義務化、非正規労働者の待遇改善、高度プロフェッショナル制度など、働き方改革に関するニュースをよく目にするようになりました。

働き方改革については、これまで当事務所のブログでも何度かご紹介させて頂きました。

2.建設業界からみた働き方改革

今回は、少し視点を変えて、“建設業界からみた働き方改革”について触れたいと思います。

国土交通省が公表している「建設業における働き方改革」という資料によれば、“建設工事全体でみると、約65%が4週間あたり4休日以下で就業している状況”とのことです。建設業の現場では長時間労働が常態化しているため働き方改革が急務だといわれています。

働き方改革関連法のうち、建設業界で一番影響がありそうなのは残業の上限規制の改正だと思います。

今回の法改正により、時間外労働に新しい上限規制が規定され、新たに罰則も設けられました。

改正労働基準法で新たに規定された時間外労働の上限規制は、原則として、大企業については2019年4月1日から、中小企業については2020年4月1日から適用されます。

時間外労働の上限規制の内容については、別のブログで詳しくご紹介していますのでぜひご参照ください。(「残業時間の上限規制はいつから?違反したら罰則?」)

ただし、改正された時間外労働の上限規制について、建設業に対する適用は、企業の規模に関係なく5年間猶予することになっています。つまり、建設業に対しては2024年4月1日から適用されることになります。
(なお、猶予対象となる事業の範囲は改正労基法施行規則で決まっています。たとえば、建築設計や建設コンサルなどの建設技術サービス業については、猶予期間はなく一般企業と同様の扱いです。)

建設業において、働き方改革といっても急には実現できません。

たとえば、工期が短く設定されてしまうと、現場は工期に間に合わせるためにどうしても長時間労働が必要になってしまいます。そのため、建設業界における構造的な問題を解決する施策が必要だといわれています。

3.建設業法及び入契法の改正法案が3月15日に閣議決定されました

そこで、先日2019年3月15日に、「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されています。

改正内容の詳細は、国土交通省のホームページの説明がとてもわかりやすいです。

概要としては、①建設業の働き方改革の促進、②建設現場の生産性の向上、③持続可能な事業環境の確保、の三点に関する改正案がでています。

働き方改革の点でいうと、上記「①建設業の働き方改革の促進」に関する改正法案について、次のような概要の説明がされています。

  • ア 中央建設業審議会において、工期に関する基準を作成・勧告する。
    著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、違反者に対しては必要な勧告等の措置を実施する。
  • イ 公共工事の発注者に、必要な工期の確保と施工時期の平準化を図るための方策を講ずることを努力義務化する。
  • ウ 建設業の許可基準を見直し、社会保険への加入を要件化する。
  • エ 下請代金のうち労務費相当分については、現金払とするよう配慮する。

今後、あらゆる業種で法令順守の要請がますます高まることが予想されます。

建設業界では、これまでの慣行に配慮しつつ、これから注目の働き方改革、民法改正などの新しい施策に対応できるよう、引き続き情報に敏感であることが重要だと思います。

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文責:弁護士 今村公治

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