1.建設工事標準請負契約約款が改正されました
民法制定以来約120年ぶりの大改正といわれている改正民法が、いよいよ2020年4月1日に施行されます。原則として、2020年4月1日より後に締結された契約については改正後の民法が適用されることになります。
以前に「民法改正により請負契約書の見直しが必要です」という記事で、民法改正に伴う建設工事標準請負契約約款の改正についてご案内させていただきました。
請負契約書は当事者一方に有利に作成されやすい面があります。そのため、建設業法に基づいて、中央建設業審議会が標準請負契約約款を作成し、その実施を勧告しています。
その中央建設業審議会が、2019年12月13日に「建設工事標準請負契約約款」の改正内容を決定しました。
各建設業団体には通知されていると思いますが、国土交通省のホームページ上で、民法改正に伴い内容を改正した標準請負契約約款が公表されています。民法改正に対応した請負契約書のひな型のようなものですので、建設業者にとってとても参考になる内容だと思います。
従前どおり、公共工事用と、大規模工事を想定した民間建設工事用、小規模工事を想定した民間建設工事用、下請契約用の、4種類の標準請負契約約款が公表されています。
2.改正民法に対応した請負契約書に変更しましょう
建設業者の皆様は、改正民法の施工が2020年4月1日ですので、今回公表された建設工事標準請負契約約款の内容をもとに、早急に自社の請負契約書の内容をチェックする必要があります。
改正民法に対応しているかどうか簡単にチェックする方法として、契約書内に「瑕疵」という単語が入っていないか、自社の請負契約書を確認してみてください。
従来の請負契約書には、「瑕疵担保責任」に関する規定が入っていることが一般的ですが、改正民法では「瑕疵」という用語は廃止されたため、契約書の中にこの「瑕疵」という単語が入っている場合には改正民法に対応していない可能性があります。(なお、改正民法に対応した請負契約書の中にも、いわゆる「品確法」や「住宅建設瑕疵担保責任保険」などに関する記載で「瑕疵」の文言が使われていることはあります。)
3.民法改正に伴う標準請負契約約款の改正内容
標準請負契約約款の種類によって改正点が多くありますので、ここでは改正の概要だけご紹介します。
(1)まず大事な点として、債権の譲渡制限特約に関する規定が改正されました。
請負報酬や下請代金といった債権を他者に債権譲渡して資金調達等することを制限する特約についてです。
改正民法では、譲渡制限特約が付いていても債権譲渡の効力は妨げられないことになりました(改正民法466条2項)。
請負契約の場合は、債権譲渡後(資金調達後)に請負者が適正に施工を継続するか不安が残るなどの問題があります。そのため、請負契約における債権の譲渡制限特約を維持するために契約約款の内容を変更しています。
(2)従来の瑕疵担保責任に関する契約約款が改正されました。
改正民法では、従来使用していた「瑕疵」という文言はなくなり、「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物」(契約不適合)という文言に改正されました。
目的物に欠陥や不備があった場合には、「瑕疵」の有無ではなく、「契約不適合」かどうかを検討することになります。この民法改正に伴い、契約約款における文言も修正されています。
また、完成物が契約内容に適合しない場合の責任内容についても規定が改正されています。従前の瑕疵担保責任の場合には修補請求と損害賠償請求ができましたが、改正後は契約不適合の責任内容として、修補、代替物の引渡し等の履行の追完請求、代金の減額請求が加わっています。
(3)その他にも建設業に関わる点が改正されています
建物その他土地の工作物に関する請負契約の解除に関する規定が改正されました。催告解除と無催告解除とを分けて、解除できる場合を列挙して規定しています。
また、契約不適合責任の担保期間に関する規定も改正されています。
その他、民法改正に伴い、保証人欄に保証極度額の欄が設けられるなどしています。
4.自社の法的リスクを予防しましょう
健康診断は定期的に受けている方が多いかと思います。(ちなみに、法律上、事業者は労働者に対して医師による健康診断を年1回行わなければならないとされています(労働安全衛生法66条、労働安全衛生規則44条)。)健康でなければ仕事の質も落ちてしまいますので、私も年に1回は健康診断を受けています。
では、会社の健康診断はどうでしょうか。自社が健全に発展していけるかどうかのチェックは定期的にされていますでしょうか。3月決算の会社は多いと思いますが、事業年度などの区切りごとに自社の契約書チェックをされてみてはいかがでしょうか。
契約書チェックなど、法的リスクの予防をするには、顧問弁護士に継続して相談するのがおすすめです。民法改正の内容を知りたい、改正民法に対応した契約書になっているかわからない、といったお悩みがございましたら、お気軽に弁護士にご相談ください。
※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。