【建設業】偽装請負にご注意を!

1.偽装請負とは??

「2019年11月、労働局が、大手ゼネコン会社に対して、雇用契約がない労働者を指揮命令して働かせたことについて是正指導をした。」という旨の報道がありました。

雇用契約や派遣契約がないのに現場で直接業務を指示するという、いわゆる「偽装請負」の問題です。偽装請負は労働者派遣法による規制の潜脱になり、労働者の雇用を不安定にしたり、労災発生時の責任の所在の問題がでたりするため、偽装請負の問題がニュースで取り上げられるようになりました。

建設業者が外部に下請けや業務委託をする場合には、「偽装請負」といわれないように注意する必要があります。

偽装請負とは、業者間で形式上は請負契約や業務委託契約を締結していながら、実態は労働者派遣や労働者供給であることをいいます。

簡単にいうと、たとえば、ある現場を下請け業者に外注したはずなのに、下請け業者の現場作業員に対して直接作業命令しているような場合です。

偽装請負をしていると判断されると、労働者派遣法違反として「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に処せられる可能性があります(労働者派遣法4条、5条、59条)。また、行政指導や是正勧告を受ける可能性があります(労働者派遣法48条、49条)。

2.偽装請負の判断基準について

では、どのような場合に偽装請負といわれてしまうのでしょうか。

簡単にいうと、請負契約であれば、注文主や元請業者は、現場にいる他社の労働者に対して指揮命令権を有していません。それにも関わらず、注文主や元請業者が現場作業員に対して業務に関して直接指揮命令をしている場合に偽装請負の疑いがでてきます。

偽装請負の判断基準として、厚生労働省が「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」というものを公開しています。

労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準

同基準だけ読むと少し内容がわかりづらいのですが、請負事業者が次の1、2を両方満たさないと、仮に業者間で請負契約を締結していても実態は請負ではなく労働者派遣であると判断されうることになります。

  1. 自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること
    (具体的には、①業務の遂行方法、評価や、②労働時間等、③企業における秩序の維持、確保等(服務上の規律、労働者の配置等)について、指示その他の管理を自ら行うこと。)
  2. 請負契約により請け負った業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること
    (具体的には、①業務の処理に必要な資金調達、支払を自らの責任ですること。②業務の処理について法律に規定された事業主としての全ての責任を負うこと。③単に肉体的な労働力を提供するものでないこと(自己の責任と負担で準備・調達する機械、設備、器材、または材料、資材により業務処理する。あるいは、自ら行う企画または自己の専門的な技術、経験に基づいて業務処理すること)。)

また、厚生労働省が『「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集』というQ&Aを厚労省のHP上で公開しているので、判断に迷うときは参考になります。

「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)に関する疑義応答集

同資料のQ&Aは全部で30問ありますが、具体的な場面を想定して説明されているのでわかりやすいです。

たとえば、労働者の作業服について、「請負労働者の作業服について発注者からの指示があった場合は、偽装請負となりますか。また、発注者と請負事業主のそれぞれの労働者が着用する作業服が同一であった場合は偽装請負となりますか。」というような質問が掲載されています。

発注者が請負労働者に対して直接作業服の指示を送ることは、請負事業主が自己の労働者の服務上の規律に関する指示その他の管理を自ら行っていないことになり、偽装請負と判断されうることになります。もっとも、製品の製造に関する制約のため、労働者の安全衛生のため等の特段の合理的な理由があれば、特定の作業服を着用することのみで偽装請負とはならないこともあります。

3.さいごに

今回は偽装請負についてご説明しましたが、建設業界は行政指導が入るケースが多い業種だと思います。請負契約の契約書チェック、行政指導の対応、労働者とのトラブルなどの問題が生じた場合はもちろん、問題が生じる前に予防法務として現在の会社の体制について、弁護士に相談してみるのがおすすめです。

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文責:弁護士 今村公治

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。