業務委託契約書を作成・チェックするときは、①委託業務の特定、②契約期間、③報酬額や支払時期、④成果物の知的財産権、⑤成果物の検査や契約不適合責任、⑥再委託の可否や条件、⑦損害賠償、⑧解約・解除、⑨秘密保持や個人情報保護などの条項に注意しましょう。

この記事では、契約書を作成・審査する法務担当者に向けて、業務委託契約書のチェックポイントや注意点を解説します。

契約書は、当事者間の約束ごとを書面化するものですので、一度結ぶと簡単には変更できません。取引先企業から提示された契約書でそのまま契約したり、ネットで見つけたひな形をそのまま利用してしまうと、予期せぬトラブルが発生することもあります。

契約書の作成・チェックの場面では、契約審査に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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1. 業務委託契約書とは?

業務委託契約書とは、企業が自社の業務を外部に委託する際に取り交わす契約書です。委託する仕事の内容や範囲、報酬、支払い条件、秘密保持、責任の所在などを明確に定めることで、後のトラブルを防ぐ役割を果たします。

1.1 業務委託は請負・委任・準委任の3パターンがある

「業務委託」は法律上の正式な契約類型ではなく、民法上の「請負契約」「委任契約」「準委任契約」を総称する契約と位置付けられています。

ここでは、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」の特徴や相違点について解説します。

1.1.1 請負契約

請負契約は、「仕事の完成」を目的とする契約です。

たとえば、建設会社に建物の建設を依頼する契約は、基本的に請負契約に該当します。

1.1.2 委任契約

委任契約は「法律行為」の実行を依頼する契約です。法律行為とは、単なる作業ではなく、法的な権利や義務の発生を伴う行為を指します。

たとえば、たとえば、弁護士に訴訟対応を依頼する場合、弁護士は依頼者の代理人として法廷で法的な手続きを行うため、委任契約と考えられます。

1.1.3 準委任契約

準委任契約は、法律行為ではなく、特定の業務の遂行を依頼する契約です。

たとえば、企業が外部業者に「オフィスを清掃して欲しい」と指示した場合、単に清掃作業が行われるだけで、新たな権利や義務は発生しません。このように、法的効果を伴わない、単なる事実行為を依頼する契約は、準委任契約と呼ばれます。

一言で「業務委託」といっても、このように、「請負」「委任」「準委任」の3つのパターンがあり、契約の目的や業務の性質も異なる点に、注意が必要です。

1.2 請負・委任・準委任の区別は難しい

「請負」「委任」「準委任」には共通点も多く、明確に区別するのは困難な側面があります。業務委託契約には、請負契約と委任・準委任契約の両方の側面を有する契約もあるため、注意が必要です。

たとえば、ある企業が他の企業に、自社で利用するソフトウェアの開発を委託したとします。この場合、企業間で「ソフトウェア開発業務委託契約」が締結されるのが通常です。

しかし、ソフトウェア開発には、請負契約の側面もあれば、準委任契約の側面もあります。

契約書で明確に、「請負型」「準委任型」と記載されることもあります。

2. 業務委託基本契約と個別契約の違い

業務委託契約には、「基本契約」と「個別契約」の2つの形があります。

「基本契約」とは、企業同士が継続的に取引を行う際に、共通のルールを予め定めておく契約です。

契約の目的、支払い条件、秘密保持、損害賠償、契約期間、契約の解除方法、反社会的勢力の排除条項などが含まれることが多いです。最初に基本契約を結んでおけば、同じ相手と何度も取引をする際に、毎回新たに契約を結ぶ手間を省くことができます。

これに対して、「個別契約」とは、具体的な業務内容や取引条件を定めるための契約です。基本契約を土台として、その都度、業務の詳細や納期、報酬、納品方法などを決めます。

たとえば、あるデザイン会社と業務委託基本契約を結んだ後に、実際に製作業務を依頼する際には、具体的な仕様、納期、代金額などを、個別契約で定めることになります。

基本契約を先に結んでおけば、その後の取引では個別契約だけを結ぶことで、細かい条件を柔軟に調整できます。また、個別契約で明記されていない内容は、基本契約の規定が適用されます。

ただし、基本契約と個別契約とで、内容に食い違いがある場合には注意が必要です。「個別契約が優先される」と基本契約に明記されているケースが多いですが、逆もありますので、契約書を確認することが大事です。

3. 業務委託契約書のチェックポイントや注意点

業務委託契約書は、取引をスムーズに進めるために重要な書類です。しかし、内容に不備があるとトラブルの原因になりかねません。契約を結ぶ際には、次のポイントをしっかり確認することが大切です。

3.1 委託業務の特定

業務委託契約では、どのような業務を委託するのかを明確に記載することが重要です。業務内容が曖昧だと、「どこまでが委託の範囲なのか」「追加で作業が発生した場合はどうするのか」などの認識のズレが生じ、トラブルにつながる可能性があります。

契約書には、業務の詳細を具体的に記載するか、別紙で業務範囲をまとめておくのが望ましいです。

また、委託業務の遂行方法や遂行場所についても、明記すべきケースがあります。

たとえば、コンサルティングに関する業務を他社に依頼したとします。コンサルティングの遂行方法や遂行場所は様々なものが考えられますが、契約書に明記されていないと、双方の認識に齟齬が生じます。委託者への定期訪問や、定期的な打ち合わせが予定されている場合には、契約書に明記することをお勧めします。

3.2 契約期間

契約期間は、「いつからいつまで有効なのか」を明確に定める必要があります。特に継続的な業務委託では、契約の自動更新の有無や、契約満了後の対応についても記載しておくことが望ましいです。

また、契約期間の途中で解約できるかどうかも、非常に重要なポイントです。

たとえば、業務委託契約の内容が、委任契約または準委任契約だったとします。民法上は、委任契約も、準委任契約も、いつでも解除可能と定められていますので、仮に中途解約を禁止するのであれば、契約書に明記が必要です。

また、中途解約を可能とする場合でも、「どちらの当事者が解約できるのか」「どれくらい前に通知すればよいのか」「解約時に違約金は発生するのか」などの条件を明確にしておくと、後々のトラブルを防ぐことができます。

3.3 報酬額や支払時期

報酬に関する条件は、契約の根幹となる部分です。報酬額だけでなく、特に「いつ、どのように報酬を支払うか」を決めておくことが大事です。

たとえば、報酬の支払い方法には、次のようなケースがあります。

  • 毎月固定額を支払う(定額型)
  • 作業時間に応じて支払う(タイムチャージ型)
  • 成果が達成されたときに支払う(完全成果報酬型)
  • 作業依頼時と成果が達成されたときに支払う(着手金+報酬金型)

特に「成功報酬型」「着手金+報酬金型」の契約では、成果の基準が曖昧だとトラブルになりやすいため、報酬の支払条件や、検査・合格基準を明確に定めることが重要です。

3.4 成果物の知的財産権の帰属

業務委託の成果物(デザイン、ソフトウェア、企画書など)に関する知的財産権の扱い、特に著作権の取り扱いは非常に重要です。

たとえば、①著作権は受託者に帰属するものの、委託者が契約目的の範囲で利用することを承諾するパターン、②著作権は委託者に原始的に発生すると定めるパターン、③報酬の支払い日をもって、受託者から委託者に著作権を移転させるパターンなどがあります。

知的財産権の帰属を決めずに契約を結ぶと、後に大きなトラブルに発展することがあります。たとえば、業務委託契約の終了後、納品されたシステムを委託者が改修したところ、受託者から著作権侵害を主張される可能性もあります。

成果物の納品を予定している業務委託契約の場合には、契約書にて、かならず知的財産権の取り扱いを明記することが重要です。

3.5 成果物の検査・契約不適合責任

業務委託契約では、納品された成果物が契約内容に適合しているかを確認する「検査(検収)」と、納品後に不具合が見つかった場合に受託者が責任を負う「契約不適合責任」のルールを決めておくことも必要です。

3.5.1 成果物の検査(検収)とは?

成果物の検査とは、受託者が納品した成果物が、契約内容(品質・数量・仕様など)に適合しているかを、委託者が確認する手続きです。

検査(検収)のルール設定は、特に受託者側にとって重要です。検査方法や、検査期間を契約書で定めておくことで、「納品当時、成果物が契約内容に適合していたか」というトラブルを回避することができます。

検査期間中に、委託者から何も応答がないケースも想定されるため、「検査期間内に委託者が合否を通知しなかった場合、自動的に合格とみなす」といった条項を設定することもあります。これにより、いつまでも検査が完了しない事態を回避することが可能となります。

3.5.2 契約不適合責任とは?

検査を実施した後でも、後になって成果物が契約内容と異なっていたことが判明する場合があります。このような場合に、受託者が負う責任が契約不適合責任です。

たとえば、「納品されたソフトウェアにバグが見つかり、正常にシステムが作動しない」「製作されたホームページに誤記がある」場合には、この契約不適合の問題になります。

契約不適合が発生した場合、委託者は受託者に対して、成果物の修正や代替品の提供、報酬の減額、損害賠償請求などを行うことができます。ただし、契約書において、「修正や代替品の提供を求めることはできるものの、報酬の減額や損害賠償請求を求めることはできない」と定めた場合には、原則として契約内容が優先されます。

そのため契約書において、契約不適合が生じた場合に、委託者がどのような請求をすることができるかを定めておくことも重要です。

3.5.3 契約不適合の請求期限について

契約不適合があった場合、委託者がいつまで受託者に対応を求められるかも重要なポイントです。

民法では、契約不適合を知ったときから1年以内に通知しなければ、契約不適合責任を追及できないと定められています。あくまでも基準は「知ったとき」から1年なので、例えば成果物の引き渡しから3年が経っていても、契約不適合責任を追及することが可能です。

ただし、受託者からすれば、引渡しから一定期間経過してから責任追及された場合、引渡し時の記録が残っていない、担当者が退職しているなど、対応に苦慮する可能性があります。

そこで、たとえば契約書で、「納品日から6ヶ月以内に限り、契約不適合責任を追及できる」と定めておくことで、契約不適合責任の終期を明確に定めることが可能となります。

3.6 再委託の可否や条件

民法上、請負契約では原則として再委託が可能ですが、委任契約では原則として禁止されています。そのため、業務を受託した側が、さらに別の業者に仕事を委託する「再委託」が可能かどうかも確認が必要です。

委託者としては、「信頼できる受託者に依頼したのに、知らない第三者が実際に業務を行っていた」という事態を避けるため、再委託を禁止するケースもあります。もし再委託を認める場合でも、「事前に書面で許可を得ること」「守秘義務を遵守させること」などの条件を定めておくことが重要です。

他方、受託者とすれば、再委託を予定しているにもかかわらず、契約書で再委託が禁止されていると、それだけで契約違反となり、場合によっては解除や損害賠償のリスクを負うこととなります。

そのため、契約締結前に契約書をしっかり確認し、必要に応じて条文の修正を依頼する必要があります。

3.7 損害賠償

契約違反やトラブルが発生した場合、契約当事者がどこまでの責任を負うのかを明確にしておく必要があります。

特に受託者側としては、リスクコントロールの観点から、損害賠償責任を負う場面を限定したり、損害賠償額に一定の制限を付けたいところです。このような目線から、「重大な過失」がある場合に限り損害賠償責任を負う、「支払われた業務委託料の額を損害賠償の上限額とする」といった条項が設定されることがあります。

委託者側は、取引から想定される各種リスク、特に「どのような損害が生じ得るか」を慎重に検討した上で、契約交渉に臨む必要があります。

3.8 解除

業務委託契約では、契約を終了するためのルールを明確にしておくことが重要です。契約を解除する方法には、大きく分けて「法定解除」と「約定解除」の2種類があります。

3.8.1 法定解除

法定解除は、民法の規定に基づく解除であり、契約に明記されていなくても、一定の条件を満たせば解除が可能です。

法定解除が認められる代表的なケースには、次のようなものがあります。

  • 契約違反があった場合(納期の大幅な遅れ、成果物の不備など)
  • 代金などの支払いが長期間滞っている場合

法定解除をするには、原則として相手に対して「契約どおりに履行するよう催告(要求)」し、それでも対応がなかった場合に解除が可能です。ただし、契約違反が重大である場合や、履行が不可能になった場合は、催告を行わずに解除できることもあります。

3.8.2 約定解除

約定解除は、契約書に解除の条件を定めることで、当事者がスムーズに契約を終了できるようにする仕組みです。法定解除が適用される場面は限られているため、それ以外の理由で契約を解除できるようにするには、約定解除を契約書に定めておく必要があります。

たとえば、以下の事由が生じた場合でも、契約書に解除事由として明記されていなければ、解除するのはなかなか難しいです。

  • 相手方の代表者が逮捕された場合
  • 他の取引先への代金未払いなどがあり、事業継続や財務状況に不安がある場合
  • 相手方の株主や役員構成に大きな変動が生じた場合

そこで、これらの事由を約定の解除事由として定めておくことで、契約解除を検討できる場面を拡げることができます。

3.8.3 解除後の対応

解除後の当事者の対応も、契約書に定めておくことが望ましいです。

たとえば、契約書に何も定めていない場合、契約解除後に次のような問題が生じることがあります。

  • 委託者が受託者に貸与していた物品の取り扱い
  • 途中まで製作していた成果物の取り扱いや権利帰属
  • 業務委託料や実費の精算
  • 機密情報の取り扱い

3.9 秘密保持・個人情報保護

業務委託契約では、委託者の機密情報や個人情報を扱うことが多いため、情報漏えいや目的外利用を防ぐためのルールを契約書に明記しておくことが大切です。

3.9.1 秘密保持

契約書には「契約遂行の目的以外で秘密情報を使用しない」「第三者に秘密情報を開示又は漏えいしない」「契約終了後に秘密情報を適切に処分する」など、秘密情報の取り扱いを定めておくことが重要です。これにより、外部に公開されたくない秘匿性の高い情報を、取引の相手方に開示することが可能となります。

特に、「どのような情報を秘密情報とするか」を明確にすることが重要です。

情報を提供する側は、「開示又は契約遂行の過程で知り得たすべての情報」を秘密情報と定めることにより、取引に関連する情報を広く、秘密情報として保護することが可能です。

他方、情報を受領する側は「秘密と明示された情報のみを秘密情報として扱う」などと秘密情報の範囲を限定することで、責任を追及されるリスクを軽減したいところです。

このように、情報を開示する側、情報を受領する側とで、異なる目線があるため、自社の立場を意識した上で、契約書を確認することが大事です。

3.9.2 個人情報保護

業務を委託することに伴い、委託者などの個人情報が受託者に提供される場合には、個人情報の取り扱いについても、契約書で定めておくことが重要です。

たとえば、個人情報保護法では、個人データの取り扱いを第三者に委託する場合には、委託先(受託者)に対して必要かつ適切な監督を行わなければならないことが定められています。

そのため委託者としては、受託者における個人情報の管理体制や取扱方法につき、契約書で明確に定めておくことが重要です。

4. よくあるご質問

業務委託契約に関するよくある質問と回答をまとめました。

4.1 業務委託契約書なしで業務してもよいですか?

業務委託契約書を交わさずに業務を行うことは避けるべきです。

契約書がないと、契約の重要な要素である、業務内容、報酬やその発生条件、納期などがすべて曖昧になってしまい、大きなトラブルに発展することがあります。

これは委託者・受託者どちらにとっても、大きなリスク要因となりますので、必ずしっかりとした契約書を締結してから、業務を開始しましょう。

4.2 基本契約を結んでおけば、個別契約は不要ですか?

基本契約が締結済みであれば、契約書の形式を取らず、注文書・請書などで個別の業務を進めることは可能です。「個別契約書」を必ず交わさなければならないわけではありません。

ただし、しっかりとした基本契約が締結されていることが大前提となりますし、基本契約において、個別業務を依頼する際のルールが定められている場合には、そのルールに従う必要があります。

たとえば、「個別契約の成立には、必ず契約書面の取り交わしが必要」と定められている場合には、個別契約書の取り交わしが必要となります。

また、業務内容、報酬やその発生条件、納期などの重要な条件が、個別業務の依頼時に定められていないと、結局個別契約の内容が良くわからないため、大きなトラブルに発展することがあります。

4.3 どのような取引でも、必ず基本契約を結ぶ必要がありますか?

基本契約はあくまでも、当事者間で継続的な取引を予定している場合に、取引に共通して適用されるルールを定めるために締結されるものです。

そのため、たとえば「単発の業務委託取引」のみを予定している場合には、あえて基本契約を結ぶ必要はありません。

4.4 委託者側で特に注意すべき点は?

委託者は、契約を結ぶ際に業務範囲・損害賠償・知的財産権の扱いなど、重要なポイントをしっかり確認することが大切です。

4.4.1 想定している業務内容などが正しく記載されていますか?

想定している業務内容や、業務遂行方法・業務遂行場所が、契約書に正確に反映されているかを確認する必要があります。

特に、定期訪問や定期的なミーティングの実施など、業務遂行方法につき一定のルールを設ける場合には、必ず契約書に明記しておくことをお勧めします。

4.4.2 損害賠償の設定は適切ですか?

特に、受託者が契約書案を作成している場合、受託者の賠償義務を制限する旨の条項が設定されていることも多いです。たとえば、次のような条項が設定されている場合には、条項の修正を含めて検討する必要があります。

  • 「受託者の故意や重過失がある場合」にしか請求できない規定になっている。
  • 「業務委託料が損害賠償の上限額」など、賠償額の上限が設定されている。

4.4.3 成果物の知的財産権の帰属は?

成果物の権利、特に知的財産権の帰属がどのように定められているかを、必ず確認する必要があります。たとえば著作権については、次のようなパターンがあります。

  1. ① 成果物の著作権は受託者に帰属する。ただし、委託者は契約に基づき、成果物を利用することができ、受託者は著作者人格権を行使しない。
  2. ② 成果物の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、発生と同時に委託者に帰属する。受託者は、著作者人格権を行使しない。
  3. ③ 成果物の著作権(著作権法第27条及び第28条の権利を含む。)は、業務委託料全額が受託者に支払われた時点をもって、受託者から委託者に譲渡される。受託者は、著作者人格権を行使しない。

4.5 受託者側で特に注意すべき点は?

受託者は、契約を結ぶ際に業務範囲・損害賠償・再委託の可否・知的財産権の扱いなど、重要なポイントをしっかり確認することが大切です。

4.5.1 想定している業務内容などが正しく記載されていますか?

全く想定していなかった業務内容が、契約書で記載されていることもあります。

たとえば、電話やメールなどでコンサルティング業務を行う想定だったのが、経営会議への出席や、委託者の指定する資料の作成まで、業務内容に含まれていることもあります。

4.5.2 損害賠償の設定は適切ですか?

特に受託者側では、「万が一損害賠償義務を負うことになった場合、負担が大きすぎないか」を検討する必要があります。

たとえば、業務委託料の金額が10万円程度なのに、単なる過失で1億円の損害賠償責任を負担し得る場合、委託料と責任の重さが釣り合っていないという目線もあり得ます。

そのため、軽過失があるに過ぎない場合には損害賠償義務を負わない、損害賠償額の上限を設定する、といった契約修正が可能かを検討することとなります。

4.5.3 業務の再委託はできますか?

契約書に「受託者は第三者に再委託してはならない」と定められている場合、業務の一部を他の事業者などに依頼することができません。

どうしても再委託が必要になる可能性がある場合は、事前に委託者と協議し、契約内容を調整する必要があります。

4.5.4 成果物の知的財産権の帰属は?

特に、受託者側に成果物の知的財産権を残しておきたい場合には、知的財産権の条項に細心の注意を払う必要があります。特に、システム開発などの大規模案件の場合には注意が必要です。

4.6 フリーランスに委託する場合の注意点は?

2024年11月より施行されている「フリーランス保護新法」により、フリーランスとの取引について、企業側に一定の義務が課されるようになりました。

たとえば、契約書などの書面で取引条件を明示することや、成果物や役務(サービス)を受領した日から原則60日以内に報酬を支払うことが義務付けられています。

4.7 収入印紙は必要ですか?

業務委託契約書のうち、収入印紙が必要なのは「請負契約」と「継続的取引契約」に関する書類です。それぞれについて説明します。

4.7.1 請負契約

仕事の完成を約束する請負契約では、契約書に収入印紙を貼る必要があります。

たとえば、建築工事、ホームページ制作、機械の修理・保守などの契約が、請負契約に該当します。契約の名称が「業務委託契約」となっていても、「仕事の完成を目的とする契約」と判断されれば、請負契約として、印紙税がかかることとなります。

契約金額が1万円未満なら非課税ですが、それ以上になると金額に応じた印紙税がかかります。契約金額を記載しない場合は、1通につき200円の印紙が必要です。

4.7.2 継続的取引契約

継続的な取引の基本となる契約書で、一定の条件を満たす場合には、1通につき4,000円の印紙を貼らなければなりません。

たとえば、継続的な請負契約を前提として、「請負基本契約」を当事者間で結ぶ場合には、この継続的取引契約に該当する可能性があります。ただし、契約期間が3か月以内で、かつ契約更新の定めがない場合は、対象から除かれます。

4.7.3 電子契約は印紙不要

印紙貼付が必要なのは、あくまでも「紙の契約書」に限定されています。そのため、電子契約にて契約を締結した場合には、印紙は不要となります。

また、紙の契約であっても、契約書の「写し」には、印紙を貼る必要はありません。たとえば、契約書として原本1通を作成し、その写しを契約の一方当時者が保有する場合には、原本1通にのみ印紙を貼れば足ります。

5. まとめ:業務委託契約で悩んだら弁護士に相談

業務委託契約は、「自社の立場」によって注意すべき点が大きく異なります。

現在活用しているひな型や、相手方から提示された契約書案が適切かを、取引ごとに、自社の立場を踏まえてしっかりと検証することが非常に重要です。

よつば総合法律事務所では、多くの企業の契約サポートを行っており、事業者向けの法務相談にも対応しています。業務委託契約の作成や見直し、トラブル防止策について相談したい方は、お気軽によつば総合法律事務所までお問い合わせください。

監修者:弁護士 村岡つばさ

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