取締役会は、すべての取締役で組織される機関であり(会社法362条1項)、会社の業務執行の決定を行い、取締役の職務の執行を監督し、代表取締役の選定・解職を行います(同条2項)。

1. 取締役会の権限について

業務執行の決定については、重要でないものは取締役に委任することができますが、以下の事項の決定は、必ず取締役会で決定しなければなりません(362条4項)。

  1. 重要な財産の処分・譲り受け
  2. 多額の借財
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任・解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止
  5. 社債の募集
  6. 内部統制システムの整備
  7. 定款規定に基づく取締役等の責任の一部免除
  8. その他の重要な業務執行の決定

2. 取締役会の招集について

(1) 招集権者

取締役会は、各取締役が招集することができます。ただし、招集権者を定款または取締役会で定めることができます(366条1項)。

(2) 招集期間

取締役会を招集する者は、会日の1週間前までに各取締役および各監査役に招集通知を発するのが原則です。招集期間は定款の定めで短縮することができます。また、取締役全員の同意があるときには、招集手続を省略することができます(368条)。招集通知は書面である必要はなく、招集通知には議題を示す必要はありません。

3. 取締役会の議事・決議について

取締役会の議事は、定款および慣行に従って行われます。取締役会の決議の定足数、多数決要件は以下の通りです(369条1項)。

定足数   → 議決に加わることができる取締役の過半数
多数決要件   → 出席取締役の過半数

4. 取締役会決議の瑕疵について

(1) 取締役会決議に瑕疵がある場合の効力

株主総会の場合と異なり、取締役会については瑕疵のある決議の効力について会社法 は特別な規定がありません。一般原則に従い、瑕疵のある決議は原則として無効であり、その無効はいつでも、誰から誰に対しても主張できると解されています。

(2) 取締役会決議に瑕疵がある場合の例

瑕疵の例として、招集手続(招集権者・招集期間等)の違反、定足数不足、特別利害関係人の参加などがあります。もっとも、無効な決議に基づく代表取締役の行為が当然に無効になるわけではなく、また、軽微な瑕疵の場合には、決議を有効と解すべき場合もあると解されています。

Ex) 判例は、一部の取締役に対する招集通知が欠けていた場合であっても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、その瑕疵は決議の効力に影響がないとしています。

5. 議事録について

取締役会の議事については、議事録を作成し、出席した取締役・監査役は署名または記名押印しなければなりません(369条3項)。決議に反対した取締役は、議事録に異議をとどめておかないと決議に賛成したものと推定されてしまいます(369条5項)。異議をとどめなかった取締役も決議に反対したことの証明をすることは可能ですが、証明に失敗して不利益を受けることをおそれるのであれば、自己が反対したことが明記されていない議事録への署名(同条3項)を拒み、記述の訂正を求めるべきです。

議事録の記載事項は、以下の通りです(会社法施行規則101条3項)。

  1. 取締役会が開催された日時及び場所
  2. 特別取締役会(373条2項)であるときはその旨
  3. 招集者及び招集根拠
  4. 取締役会の議事の経過の要領及びその結果
  5. 特別の利害関係を有する取締役があるときは、当該取締役の氏名
  6. 取締役会において述べられた意見又は発言があるときは、その意見又は発言の内容の概要
  7. 取締役会に出席した執行役、会計参与、会計監査人又は株主の氏名又は名称
  8. 取締役会の議長が存するときは、議長の氏名

会社法上の規制は、細かく複雑な点が特徴です。これらの法的規制を適法に遵守するためにも、顧問弁護士をつけておくと安心かもしれません。