不動産は高額な資産です。その売買は人生のみならず、事業にとっても大きな取引であることが多いです。だからこそ、契約で失敗は許されないのです。
一度トラブルが発生すれば、莫大な損失につながるだけでなく、その後の事業継続にも支障をきたす可能性があります。こうした事態を未然に防ぎ、万が一問題が生じても対応できる仕組みが不動産売買契約書です。
本記事では、契約の基本知識から実務的な手続き、よくあるトラブル事例まで、弁護士が網羅的に解説します。安全な不動産取引を実現するため、ぜひ最後までご一読ください。
目次
1. 不動産売買契約とは?まず知っておきたい3つの基本
契約書に署名する前に、不動産売買契約の性質と仕組みを理解しておくことが大切です。ここでは売買契約の法的な位置づけ、重要事項説明との違い、契約成立のタイミングについて説明します。
1.1 売買契約の目的と法的な位置づけ
売買契約は、企業活動や個人の取引において、最も基本的かつ広く用いられる契約類型の1つです。その目的は、売主が物品や権利などの財産を買主に移転し、買主がその対価として代金を支払うことで、取引の安全性を法的に担保することにあります。
とりわけビジネスの現場においては、契約内容を文書として明文化し、トラブル防止や証拠確保の観点から契約書を取り交わすことが一般的です。
また、売買契約は次のような法的性質を有しています。
- 有償契約:商品の提供に対して対価(代金)が発生する契約であること
- 双務契約:売主と買主の双方が義務を負い、互いに履行を条件とすること
- 諾成契約:物の引渡しなど実際の履行がなくても、当事者の合意のみで契約が成立すること
- 形式自由の原則:契約の成立に特定の形式を必要とせず、書面・口頭・メールなど様々な方法による合意で成立可能であること
とりわけ不動産売買契約は、売買契約の中でも特別な位置づけです。登記、所有権の移転、契約不適合責任、引渡しなど多くの法的手続きが絡み合うため、通常の売買契約以上に慎重な対応が求められます。
不動産は代替性のない資産であり、一度の取引が当事者に大きな影響を及ぼすからこそ、契約内容の明確化と法的リスク管理が他の契約以上に重要です。
1.2 「重要事項説明」と「売買契約」の違い
不動産売買においては、「重要事項説明」と「売買契約の締結」という2つの重要な手続きが行われます。
これらは密接に関連していますが、その目的と法的な位置づけは異なります。
① 重要事項説明
不動産会社が仲介に入る場合、買主が物件に関する十分な情報を得て、購入するかどうかの的確な判断ができるように、契約締結「前」に行われる説明です。不動産取引の全体像や専門的な内容を分かりやすく説明することが求められます。
② 売買契約
売主と買主が、物件の売買条件について最終的に合意し、法的な権利と義務を発生させる行為そのものです。
つまり、重要事項説明は契約を結ぶかどうかの「判断材料」を得るための手続きであり、売買契約は取引を法的に「確定」させる手続きであるという違いがあります。
1.3 契約成立のタイミングはいつ?
法律上、売買契約は「諾成契約」とされ、当事者双方の意思表示が合致した時点、つまり「売ります」「買います」という口約束だけでも成立するのが原則です。
具体的には、次の2点が合意されれば契約は成立します。
- 目的物の確定:どの不動産を売買するかが特定されていること。
- 代金額の確定:いくらで売買するかが決まっていること、または代金の決定方法が定められていること。
しかし口頭での合意だけでは、後になって「言った、言わない」という紛争に発展するリスクが極めて高くなります。
不動産のような高額取引では、ほぼすべての場合において、合意内容を明確にし、契約成立の事実を証明するために契約書が作成されます。

2. 不動産売買契約の全体像|申し込みから引渡しまでの7ステップ
不動産売買は、申し込みから物件の引渡しまで、複数のステップを経て進められます。契約書を作成する際も、この取引の全体的な流れに沿って条項を配列するのが一般的です。
ここでは、不動産取引の全体像を7つのステップに分けて解説します。
2.1 STEP1:購入の申し込みと申込証拠金
買主が物件を見つけたら、まずは売主に対して「購入したい」という意思を示すために購入の申し込みを行います。この「申込み」は、法的には契約を成立させるための意思表示の1つです。
購入意思を明確にするため、この段階で申込証拠金を支払うケースも存在します。ただしその法的性質や返還条件については、事前に不動産会社に確認しておくことが重要です。
2.2 STEP2:住宅ローンの事前審査
多くの買主は、住宅ローンを利用して不動産を購入します。売買契約を締結する前に、金融機関に対してローンの「事前審査」を申し込むのが一般的です。
これにより、自身がどの程度の融資を受けられるかの見通しが立ち、その後の資金計画や契約交渉をスムーズに進めることができます。
2.3 STEP3:重要事項説明
不動産会社が仲介する場合、宅地建物取引士が買主に対して、物件の権利関係や法令上の制限、インフラの整備状況など、契約に関する重要な事項を説明します。
この手続きは宅地建物取引業法で義務付けられたもので、買主が不利な契約を結ぶことを防ぐ目的があります。オンラインでの説明も可能です。
2.4 STEP4:不動産売買契約の締結と手付金の支払い
重要事項説明の内容に納得したら、売主と買主の間で正式に不動産売買契約を締結します。契約書に双方が署名・押印し、このタイミングで買主から売主へ「手付金」を支払うのが通例です。
契約書には、手付金の金額や、それが売買代金の一部に充当されるかどうかなどを明確に記載しておくことが望まれます。
2.5 STEP5:住宅ローンの本審査・契約
売買契約締結後、金融機関に対して住宅ローンの「本審査」を申し込みます。事前審査を通していても、本審査で否決される可能性はゼロではありません。
こうしたリスクに備えるため、多くの契約では「ローン特約(ローン審査が下りなければ契約が白紙になる特約)」が設けられます。本審査承認後、金融機関との間で金銭消費貸借契約(ローン契約)が成立します。
2.6 STEP6:残代金の決済と物件の引渡し
金融機関から融資が実行されると、買主は売主に対して売買代金の残額を支払います(残代金決済)。この決済と同時に、売主から買主へ物件の鍵などが渡され、物件の「引渡し」が行われるのが一般的です。
契約書には、この残代金の支払日と引渡しの時期を明確に定めておきます。
2.7 STEP7:登記手続き
不動産の所有権が自分のものであることを第三者に対して主張するためには、「所有権移転登記」という手続きが必要です。
売買契約が成立しただけでは、この対抗力が得られません。たとえば、悪意のある売主が同じ不動産を別の人にも売却し、その人が先に登記を済ませてしまうと、元の買主は所有権を主張できなくなってしまうのです。
そのため、残代金の決済と引渡しと同時に、司法書士の立ち会いのもと、所有権移転登記の申請手続きを行うのが通例です。この登記に関する事項も、契約書に記載される重要な内容です。
3. 不動産売買契約を結ぶ前に!必須の確認事項7選
不動産売買契約は、一度署名・押印してしまうと法的な拘束力を持ち、簡単には後戻りできません。契約を締結する前に、物件や権利関係について十分に調査・確認することが、後のトラブルを防ぐ上で極めて重要です。
ここでは、契約前に必ず確認すべき事項を7つご紹介します。
3.1 登記簿謄本(登記事項証明書)のチェックポイント
登記簿謄本(登記事項証明書)は、その不動産の「戸籍」のようなものです。契約書に記載される物件の表示(所在、地番、地目、地積など)が登記簿の記載と一致しているか、必ず確認しましょう。
特に注意すべきは権利関係です。その不動産を担保にお金を借りている場合の「抵当権」や、他人に利用する権利を与えている「賃借権」などが登記されていないかを確認する必要があります。
これらの権利は所有権が移転しても自動的には消滅しません。引き渡しまでに売主の責任で抹消されることを契約で定めておくことが重要です。
3.2 現地・物件の確認
書類上の確認だけでなく、必ず現地に足を運び、ご自身の目で物件の状態を確認することが大切です。
特に土地の売買では、隣地との境界が曖昧なことが原因で、後日トラブルになるケースがあります。可能であれば、隣地所有者の立ち会いのもとで境界を確認しておくと、将来の紛争予防につながります。
また、建物については、雨漏りやシロアリの害など、契約内容に適合しない点がないか、専門家による建物状況調査を利用することも有効な手段です。
3.3 用途地域と関連法規の確認
土地には、都市計画法によって「用途地域」が定められており、建てられる建物の種類や規模に制限があります。
たとえば、工場を建てる目的で土地を購入したのに、その土地が工場建設を認められていない地域であった場合、契約の目的を達成できません。
このように、不動産には様々な法令による「権利の制限」が付されている場合があります。
買主としては、自身の利用目的に合致しているか、使用収益を妨げるような法的な制限がないかを事前に確認することが不可欠です。こうした調査は、仲介の不動産会社が行う重要事項説明でも説明されます。
3.4 道路付けの確認(接道義務)
建物を建てるためには、その敷地が建築基準法に定められた道路に一定の長さ以上接していることが必要です。これを「接道義務」といいます。
前面の道路が法律上の道路と認められない場合や、接道義務を果たしていない場合は、原則として建物の新築や建て替えができません。
また、私道に面している場合は、その通行や利用に関して所有者との間でトラブルになる可能性もあります。売買の対象に私道部分が含まれているかどうかも含め、道路との関係は慎重に確認すべきポイントです。
3.5 ハザードマップで災害リスクを確認
不動産購入の際には、事前に各自治体が公表しているハザードマップを確認し、購入予定の土地の洪水・土砂災害・津波などのリスクを把握しておきましょう。
これは長期的な資産価値と安全性を判断するうえで役立ちます。
3.6 農地の場合は農地法の許可を確認
売買の対象が「農地」(田や畑)である場合、特に注意が必要です。
農地を宅地などに転用して売買するには、原則として農地法に基づく都道府県知事などの許可が必要です。この許可を得ないと、所有権移転の効力は生じません(契約自体は、許可申請への協力義務等を定めるものとして有効です)。
そのため、農地売買契約書には「許可の取得を停止条件とする(許可の取得で効力が発生する)」条項が盛り込まれるのが一般的です。
3.7 契約に必要な書類と持ち物リスト
不動産売買契約の締結日には、一般的に次のものが必要となります。事前に不動産会社に確認し、忘れずに準備しましょう。
- 本人確認書類:運転免許証、マイナンバーカードなど
- 印鑑:実印が求められることが多い
- 印鑑証明書:実印を使用する場合に必要
- 手付金:現金または預金小切手で用意することが多い
- 収入印紙:契約書に貼付、印紙税額は売買代金によって異なる
契約書は通常2通作成され、売主と買主がそれぞれ記名押印の上、1通ずつ保管します。
4. 【重要】不動産売買契約書のチェックポイント12選
不動産売買契約書は、取引の根幹をなす最重要文書です。条項の一つ一つが当事者の権利と義務を定めています。ここでは特に注意すべき12のポイントを解説します。
4.1 売買物件の表示は正確か(登記簿通りか)
契約の第一歩は、売買の対象となる「目的物」を正確に特定することです。これは契約が成立するための必須要件です。
契約書に記載された物件の表示(土地の所在・地番・地目・地積、建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積など)が、登記簿謄本の記載と完全に一致しているかを確認してください。
また、私道部分や付属建物が売買の対象に含まれるのか、その範囲も明確になっているかを確認することが重要です。
4.2 売買代金、手付金、支払日は明確か
「代金額」の確定も、契約成立のための必須要件です。契約書には、次の点が明確に記載されているかを確認しましょう。
- ① 売買代金の総額
- ② 手付金の金額
- ③ 残代金の金額
- ④ それぞれの支払時期と支払方法
また、土地の価格算定の根拠が、登記簿上の面積(公簿面積)なのか、実際に測量した面積(実測面積)なのか、そして両者に差異があった場合に代金を精算するのかしないのか、といった点も重要な確認事項です。
4.3 所有権の移転と引渡しの時期
「いつからその不動産が法的に自分のものになるのか(所有権の移転時期)」と、「いつから実際にその不動産を使い始められるのか(引渡しの時期)」は、買主にとって極めて重要な問題です。
通常は、売買代金の全額を支払ったとき(残代金決済時)に、所有権が移転し、同時に物件の引渡しが行われると定められます。この時期が契約書に明確に記載されているかを確認してください。
4.4 負担の消除
買主は、完全な所有権を取得することを期待して不動産を購入します。しかし、対象物件に抵当権や賃借権といった第三者の権利が設定されたままでは、買主が自由に使用・収益することが妨げられます。
そのため契約書には「売主は、所有権移転の時期までに、これらの負担を自らの責任と費用で完全に消滅させる」という趣旨の条項(負担の消除義務)を設けるのが一般的です。この条項がきちんと盛り込まれているかを確認しましょう。
4.5 手付解除の期限と条件
不動産売買契約では、契約成立時に買主から売主へ手付金が支払われるのが通例です。
この手付金には、一定期間内であれば、買主は手付金を放棄し、売主は手付金の倍額を買主に支払うことで、一方的に契約を解除できるという機能(手付解除)があります。
契約書では、この手付解除が可能な期間や、手付金の具体的な取り扱い(代金に充当されるか、契約が解消された場合にどうなるか等)について明確に定めておくことが、後の紛争を避けるために望ましいです。

4.6 契約違反による解除(違約金)の規定
当事者の一方が、代金の支払いや物件の引渡しといった契約上の義務を履行しない場合に、もう一方の当事者が契約を解除できる旨の規定です。
契約違反時の対応を事前に定めることは、紛争解決の方法をあらかじめ明確にするもので、円滑な取引終了のために重要になります。通常、契約違反による解除の場合には違約金(損害賠償額の予定)も発生します。契約違反の条件が明確に記載されているか確認しましょう。
4.7 住宅ローン特約の内容と期限
買主が住宅ローンを利用して代金を支払う場合、ローン審査が通らないというリスクに備えるのが「住宅ローン特約(融資利用特約)」です。
この特約の内容は「定められた期限までに、予定していた金融機関からの融資が承認されなかった場合には、買主は無条件で契約を解除でき、支払済みの手付金も全額返還される」というものになります。この特約により、買主は融資が受けられないリスクを回避できます。
特約の適用条件、特に「期限」がいつまでなのかを正確に確認することが極めて重要です。
4.8 契約不適合責任の範囲と期間
引き渡された物件が、種類、品質、数量に関して契約の内容に適合しない状態であった場合(例:土地の面積不足、建物に雨漏りなど)、売主が買主に対して負う責任を「契約不適合責任」といいます。
契約書では、この契約不適合責任の範囲と期間を定めます。売主が個人の場合では、特約によってこの責任を免除または軽減することも可能です。
ただし、売主が欠陥を知りながら買主に告げなかった事実については、免責特約があっても責任を免れることはできません。
4.9 設備の引渡しと付帯設備表
中古物件の売買では、エアコンや照明器具、給湯器といった設備がどの状態で引き渡されるのかがトラブルの原因になることがあります。
どの設備を物件に残し、どの設備を撤去するのか、また、残される設備の現在の状態(故障の有無など)を一覧にした「付帯設備表」を契約書に添付するのが一般的です。この付帯設備表の内容と、契約書本文の記載が一致しているか、現状と相違ないかを必ず確認しましょう。
4.10 公租公課の精算に関する取り決め
売買対象の不動産には、固定資産税や都市計画税といった税金がかかります。これらは通常、その年の1月1日時点の所有者に課されますが、売買に際しては「引渡し日」を境に、税負担を日割りで按分する取り決めが行われるのが一般的です。
契約書にはこの清算に関する条項が盛り込まれているか、事前に必ず確認しましょう。
4.11 引渡し前の物件の滅失・毀損時の対応
売買契約締結後、物件の引渡し前に自然災害などで物件が滅失・毀損した場合の取り扱いをどうするかを定める条項です。
売買契約締結後、物件の引渡し前の滅失・毀損は、契約上は「売主が修復して引き渡す」ことを基本としつつ、修復不能な場合に契約解除とする旨が記載されることが多いです。
4.12 特約事項
「特約事項」とは、民法の規定や一般的な契約条項とは異なる特別な合意内容を定める条項です。たとえば、「登記簿面積と実測面積に差異があっても代金の精算は行わない(公簿売買)」という定めや、「契約不適合責任を免除する」といった定めがこれにあたります。
特約は当事者間の合意を優先させる強力な効力を持つため、自分にとって一方的に不利な内容になっていないか、その意味を正確に理解した上で合意する必要があります。ただし、あまりに一方的な条項は法令により無効とされる可能性もあります。
5. 不動産売買契約でよくあるトラブル事例と対処法
どれだけ慎重に進めても、不動産売買にはトラブルがつきものです。ここでは実際によくあるトラブル事例と、その基本的な対処方法を紹介します。
5.1 引渡し後に欠陥(契約不適合)が見つかった
これは最も多いトラブルの一つです。たとえば、引渡し後に雨漏りやシロアリ被害が発覚した場合、物件が契約内容に適合していないとして、買主は売主に対して「契約不適合責任」を追及できる可能性があります。
具体的には、修理の請求(追完請求)、代金の減額請求、損害賠償請求、そして最終的には契約の解除が考えられます。
ただし、契約書で契約不適合責任の期間が限定されていたり、責任が免除されている場合もあるため、まずは契約書の内容を確認することが第一歩となります。
5.2 ローン特約で解除になった
買主が住宅ローンの本審査で承認を得られなかった場合、契約書に「住宅ローン特約」があれば、買主はペナルティなく契約を解除できます。この場合、支払った手付金は全額返還されます。
売主にとっては、売れるはずだった物件の契約が白紙に戻るため、買主が誠実にローン審査手続きを進めていたかどうかが問題になることがあります。トラブルを避けるためにも、買主は速やかに審査手続きを進め、売主は買主の状況を適宜確認することが望ましいです。
5.3 手付解除をしたい(された)
契約後、買主側の事情で契約をやめたくなった場合、契約書で定められた期限内であれば、支払った手付金を放棄することで契約を解除できます。
逆に、売主側の事情で解除したい場合は、受け取った手付金の倍額を買主に支払うことで解除が可能です。
この手付解除の権利をいつまで行使できるのか、その期限は契約書で明確に定められているはずです。手付解除をめぐるトラブルを防ぐためにも、契約書における手付金の取り扱いに関する条項を正確に理解しておきましょう。
5.4 隣人トラブルや聞いていなかった事実が発覚した
購入後に、隣地との境界をめぐって争いになったり、騒音などの隣人トラブルが発覚したりするケースがあります。
境界に関するトラブルは、事前に隣人立ち会いのもとで境界確認を行うことで予防しやすくなります。
また、売主が物件に関する重要な事実を知りながら買主に告げなかったとき、たとえ契約書で契約不適合責任が免除されていても、売主は責任を免れることはできません。たとえば、過去に事件・事故があった、近隣に迷惑施設があるなどの事実です。買主は、損害賠償請求や契約解除を検討することができます。
6. 契約で不安な時の相談先
不動産売買契約は専門的な内容が多く、不安を感じることも少なくありません。そんな時は、一人で抱え込まずに専門家に相談することをおすすめします。
6.1 仲介してくれている不動産会社
まずは、取引を仲介している不動産会社(宅地建物取引業者)に相談しましょう。
不動産会社には、取引の全体像を分かりやすく説明し、依頼者の意向を踏まえながら適切な助言を行うという、総合的な調整役としての役割が期待されています。媒介業務の一環として、契約内容に関する疑問にも答えてくれるはずです。
6.2 弁護士や司法書士などの専門家
不動産取引には、不動産会社だけでなく、金融機関、司法書士など多くの専門家が関わります。
特に、契約書の内容に法的なリスクがないか、自分に不利な条項が含まれていないかといった点を詳細にチェックしたい場合は、弁護士に相談するのが最適です。
また、所有権移転登記の専門家である司法書士も、登記に関連する事項について頼りになる相談相手です。
法律実務家は、契約が有効に成立するための要件を熟知しており、個別の事案に応じた適切なアドバイスを提供できます。
6.3 各都道府県の宅地建物取引業協会
不動産取引に関する一般的な相談や、仲介業者との間でトラブルが生じた場合には、各都道府県に設置されている宅地建物取引業協会などの業界団体に相談窓口が設けられていることがあります。
これらの団体は、業界の適正な運営を指導する立場から、消費者からの相談に応じています。国土交通省も、これらの業界団体に対し、消費者保護のための指導を行っています。
7. まとめ:悩んだらまずは弁護士に相談
不動産売買契約は、その金額の大きさから、企業にとっても個人にとっても極めて重要な取引です。
契約書は、その取引を成功に導くための設計図であり、同時に、万一のトラブルから身を守るための盾でもあります。しかし、その内容は複雑で専門的な知識を要するため、すべてのリスクをご自身で把握し、判断するのは容易ではありません。
契約書にサインする前に少しでも不安や疑問を感じたら、ぜひ一度、企業法務や不動産取引に詳しい弁護士にご相談ください。専門家の視点から契約書をレビューし、潜んでいるリスクを指摘し、お客様の状況に合わせた最適な条項を提案することで、安心・安全な不動産取引の実現をサポートします。
よつば総合法律事務所には、不動産取引に詳しい弁護士が在籍しています。ぜひ一度、お気軽にご連絡ください。











