「適切」にハラスメント対応をするために必要なこと-ハラスメント対応の注意点

1. はじめに

当事務所では、顧問先からの依頼や、外部相談窓口の立場から、これまでハラスメント案件に多く携わってきました。
特に、パワハラ防止法が改正され、2022年4月1日から中小企業にも施行されることもあり、ここ最近、外部相談窓口のご相談が増えています。

ハラスメント案件で最も難しいのは、「事後対応」、すなわち、ハラスメントの被害申告を受けた後の「ヒアリング(調査)・事実認定・法的評価・具体的処分」のプロセスかと思います。なぜこのプロセスが難しいかというと、「法的な判断」を含むからです。特に、事実認定(どのような事実が認定できるか)⇒法的評価(認定できた事実を前提)のプロセスは、裁判官的な目線も必要になるため、弁護士でも悩むときが多くあります。

今回は、ハラスメントの事後対応を行う際の注意点について、お話させていただきます。

2. ヒアリング(調査)を行う際の注意点

ヒアリングを行う際には、特に以下の①~⑤を注意しています。

  • ①5W1Hを意識する。「評価」や「感想」ではなく、何があったかという「事実」を聞く。
  • ②相談者の意向(会社に何を望むか/相談内容を第三者・行為者等に伝えてもよいか等)を必ず聞く。
  • ③裏付となる資料があれば、ヒアリングの段階で提出を求める。
  • ④とにかく話を聞く、決めつけない(事実認定・評価はヒアリングの後に行うもの)。
  • ⑤特に行為者が否定している場合には、相談者・行為者だけでなく、第三者(目撃者・関係者等)にも必ずヒアリングを行う。

上記①~⑤はいずれも重要ですが、特に、②の「相談者の意向」は、その後のヒアリングの進め方にも関わるので、非常に重要です。

ヒアリングや調査方法に問題があったとして、使用者に損害賠償請求が認められた事案もあります。
例えば、京丹後市事件(京都地裁令和3年5月27日判決)では、「パワーハラスメント(以下「パワハラ」)があったこと」自体は否定されたものの、パワハラの調査過程に問題があったとして、30万円の慰謝料請求が、使用者(国)に対して認められています。この事案では、被害申告者が提出した日記(パワハラ被害を記録していたもの)を、被害申告者の許可なく行為者とされる人物に交付したという点等が、プライバシーを侵害するものとして、違法と判断されています。

このように、「ハラスメントがあったか否か」に関わらず、調査対応に問題があったことが理由で、予期せぬ損害賠償請求を受ける可能性もあるため、注意が必要です。このような事態を回避するためにも、ヒアリングの進め方を含め、相談者の意向をよく確認することが重要となります。

3. 事実認定を行う際の注意点

事実認定を行う際に最も重要なのは、「客観的証拠」の有無です。
被害申告を裏付ける客観的証拠(録音、メール、LINEのやり取り等)があれば、事実認定はそれほど苦労しません。

ただし、実際には、客観的証拠が乏しく、目撃者も存在せず、被害申告以外の手がかりがないケースの方も多くあります。行為者が行為を認めてくれればよいのですが、行為を否認している場合には、事実認定は困難を極めます。このような事案では、ヒアリングを行ったものの、「行為自体が認定できなかった」となることもしばしばあります。

ここで大事なのは、「認定できなかった」という結果ではなく、その結果に至るまでの過程です。「会社として必要な調査を十分に行ったか」(客観的証拠の確認、目撃者の確認等)という点が、非常に重要となります。
この過程が不十分であれば、適切な事実認定を行うことはできず、ひいては「被害申告を行ったのに、会社が適切な調査を行わず、ハラスメントを野放しにした」と捉えられ、新たな労使紛争に発展する可能性や、賠償リスク(安全配慮義務違反)もあります。

なお、上記とは逆の話で、「行為を認定する」場合にも、慎重な対応が求められます。これは主に「行為者(加害者)」への懲戒処分との関係で問題になります。

前提となる事実認定自体に問題があることに起因して、その後の懲戒処分が無効とされたケースは少なくありません。
例えば、社会福祉法人ファミーユ高知事件(高知地裁令和3年5月21日判決)は、行為者のパワハラを理由とする懲戒解雇の有効性が争われた事案ですが、裁判所は、第三者委員会の事実認定が不合理(存在するはずの客観的資料による裏付けがなされていない等)であり、懲戒の対象となる事実自体が認定できないため、懲戒解雇は無効と判断しています。

この事案のように、事実認定の過程に問題があった場合、その後に科された懲戒処分も無効と判断される可能性が極めて高いため、特に重い懲戒処分を科す場合には、より慎重な事実認定が求められます。

4. 法的評価・具体的処分等を行う際の注意点(特にパワハラ事案)

注意点ではありませんが、「指導」と「パワハラ」の線引きは、非常に難しいです。
「全く問題ない」「明らかにパワハラ」という事案は意外に少なく、実際には、「パワハラに当たるとまでは断言できないものの、指導としては不適切」という事案が多いため、弁護士としても、評価に悩むことが多々あります。

これは私見ですが、「パワハラに当たるか否か」という観点よりも、「相談者のケアや再発防止のために、会社としてどのような対処を取るのが相当か」という観点の方が、より重要と考えています。

パワハラ防止法改正により、パワハラが発生した場合には、行為者に対する処分や、再発防止のための措置(研修)等を行う「法的義務」が会社に発生します。裏を返せば、「パワハラ」に当たらない程度の行為であれば、これらの処分・措置を行う「法的義務」まではありません。

ただし、「全く問題ない」事案ではなく、「指導としては不適切」な事案では、パワハラに当たるか否かを問わず、「何らかの対処」をすべきと考えます。例えば、注意・指導の方法につき、懲戒処分に至らないまでも、行為者に口頭又は書面にて注意・指導を行う、啓発活動を兼ねてハラスメント研修を行う、といったことが考えられます。

他方で、「パワハラ」に当たると判断した事案でも、直ちに懲戒処分を科すかは検討が必要です。明らかにパワハラに当たるケースは別としても、「指導がやや行き過ぎてしまった」というケースでは、あえて懲戒処分を科さず、口頭又は書面での注意・指導に留めるのが相当なケースも多くあります。

5. 懲戒処分を科す際の注意点

4の具体的処分と関連し、行為者に懲戒処分を行う際は、最低限以下の①~⑤には注意が必要です。

  • ①そもそも就業規則があるか
  • ②就業規則上の懲戒事由に該当するか
  • ③本人の言い分を聞く機会(弁明の機会)を与えたか
  • ④処分が重すぎないか/他の従業員と不平等な取り扱いではないか
  • ⑤同じ行為につき、実質的に二重処分をしていないか

6. 当事務所でサポートできること

当事務所では、以下のように、①顧問弁護士の立場からハラスメント対応に当たることも、②会社から独立した外部相談窓口としてハラスメント対応に当たることも可能です。

①顧問弁護士の立場からハラスメント対応に当たる場合

  • ハラスメント防止に係る社内規程、周知文書等の作成
  • 被害申告があった場合の調査、事実認定、法的評価、処分の決定・サポート
  • 配置転換、懲戒処分を命じる際の書面作成
  • 労働者への退職勧奨(直接の退職勧奨又はサポート)
  • 紛争化した場合の交渉・労働審判・訴訟等の対応
  • ハラスメント防止にかかる社内研修

②外部相談窓口としてハラスメント対応に当たる場合

  • ハラスメント防止に係る社内規程、周知文書等の作成
  • 外部相談窓口としての表示
  • 被害申告があった場合の調査、事実認定、法的評価
  • 配置転換、懲戒処分を命じる際の書面作成
  • ハラスメント発生状況の社内調査(アンケート等)
  • ハラスメント防止にかかる社内研修

初回相談、お問い合わせは無料となっておりますので、ハラスメント問題でお困りの企業様は、ぜひ一度、ご相談ください。

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文責:弁護士 村岡つばさ

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。