働き方改革関連法案ー派遣のあり方が変わる!?

働き方改革といっても、何が変わるのかいまいちピンとこない…こういった企業様も多いと思います。巷では、長時間労働の規制と、有給休暇の取得の部分が大きく報道されていますが、実は、労働者派遣法(正式名称は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律)についても、非常に大きな改正がなされました。

以前のブログで、有給休暇の取得義務のお話をさせていただきましたが、今回は労働者派遣法の改正についてお話させていただきます。

1 そもそも労働者派遣とは?

労働者派遣とは、「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。」と定義付けられています(労働者派遣法第2条1項)。

何ともややこしい定義ですが、図にするとこんな感じです。

ここでポイントとなるのは、下記2点です。

①労働者と雇用契約を結んでいるのは、派遣先ではなく、あくまでも派遣元であること
②派遣元ではなく、派遣先が労働者に指揮命令(指示等)を行うこと(業務委託との区別)

②については、今回のブログの内容とはあまり関わらないのでここでの説明は割愛しますが、①の部分が、今回の派遣法改正と関わってきます。

2 派遣法改正で何が変わる?

1.上記①からもわかるように、労働者にとっての雇用主は、あくまでも「派遣元」であるため、賃金等の労働条件については、派遣元企業が決定することとなります。そして、派遣先企業の正社員がいくらお給料を貰っているか、といった点は、派遣元企業-労働者との関係においては、これまでは(ほぼ)考慮されておりませんでした。

2.今回、労働者派遣法の改正がなされ、①派遣先の情報提供義務と、②派遣先従業員との均等・均衡待遇が、新たに設けられることとなりました。他にも改正がなされた点はありますが、紙面の都合上、ここでは①②のみを解説します。

①派遣先の情報提供義務

派遣先・派遣元企業とで労働者派遣契約を締結する場合には、派遣先企業は、派遣労働者が従事する業務ごとに、派遣先労働者の賃金その他の待遇に関する情報をあらかじめ提供しなければならない(改正労働者派遣法26条の7)こととなりました。これは、後記②の前提として、必要となるものです。

また、これらの情報の提供がない場合には、派遣元企業は、その派遣先企業との間で労働者派遣契約を締結してはならない(同条の9)という規定も設けられております。

仮に、情報提供を受けないで派遣契約を締結した場合には、派遣先は、厚生労働大臣の助言・指導の対象となります(48条)。また、派遣先が情報提供をしない場合の不利益(厚生労働大臣の助言指導・勧告・企業名公表)も定められています(48条、49条)。

②派遣先従業員との均衡・均等待遇

派遣元企業は、派遣労働者の労働条件について、派遣「先」労働者の条件と比較して、不合理と認められる相違を設けてはならない(30条の3第1項)こととなりました。
また、さらに進んで、派遣「先」労働者と、仕事内容・配置の変更の範囲が同一の派遣労働者については、正当な理由がない限り、労働条件に相違を設けてはならない(第2項)ことになりました。

ただし、派遣先との均衡・均等待遇(派遣先基準といいます)を前提としますと、派遣先が変わるごとに労働条件を変更しなければならなかったり、派遣先労働者の労働条件の良し悪しで、派遣労働者の労働条件も大きく異なる可能性があり、特に派遣労働者が多く在籍し、取引先(派遣先)を多く抱えている派遣元会社においては、現実的ではありません。

そこで、一定の要件を満たす場合には、労使協定を締結することにより、派遣先基準ではなく、派遣元の基準により、派遣労働者の労働条件を決定することができます(30条の4)。

ただし、この「一定の要件」はかなり厳密で、㋐同種の業務に従事する一般労働者の平均賃金以上の賃金額(この金額は厚生労働省令で定められます)であることや、㋑職務内容、成果、能力、経験等の向上に伴い、賃金が改善されるものであること等が要求されます(その他にも要件がありますが、ここでは割愛します。)。これらの要件を満たさない場合には、原則に立ち返り、派遣先基準により、労働条件を設定する必要があります。

3.上記①②は、派遣元会社、派遣先会社の両方にとって、非常に大きな影響が生じます。
派遣元会社としては、派遣労働者の労働条件を、派遣先の労働者の労働条件に近づけなければならず、人件費の増大は避けられません。また、派遣先・仕事内容が変わるごとに情報提供を受け、労働条件を設定しなければならず、労務管理上のコスト(手間)も非常にかかります(この点は、②で記載した派遣元基準を活用することで、一定程度縮減できます。)。

他方、派遣元会社に生じた人件費の増大は、労働者派遣契約の料金の増大を意味するので、派遣先会社にとっても、大きな影響があります。

3 施行日

改正法は、平成32年4月1日に施行されます(附則1条2号)。

4 おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました。

労働者派遣法の改正は、派遣事業を行っている会社のみならず、派遣労働者を受け入れているすべての会社にも関わる問題です。
本件に限らず、労務管理でお困りの際は、お気軽にお声がけください。

以上

文責:弁護士 村岡つばさ