業務委託だと思ったら実は労働者??

1. はじめに

企業が労働力を確保する際、形式上、外注(業務委託)という形を取ることがよくあります。

しかし、業務委託の形を採っていたとしても、法律上は労働基準法上の労働者であると判断されることがあり、その結果会社として大きなリスクを抱えることになる場合があります。

そこで、今回は雇用契約の代わりに業務委託契約を締結した場合のリスクについてお話をさせていただきます。

2. そもそも「労働者」って何?

労働基準法9条によると、「…「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」 とされています。

 そして、この労働者は、会社の指揮監督下に置かれていて、会社から仕事の対価として賃金を支払ってもらう人のことを指します。

3. 業務委託契約を結んだのに労働者と判断された??

労働者性を判断するに当たっては、実際にどのような形式の契約を結んだか、ではなく、どのような働き方をしているのか、という点が重要になってきます。

そのため、業務委託契約を結んでいた場合であっても、会社との間に指揮監督関係が認められてしまうと、労働者と認められる可能性があります。

具体的には、①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無②業務遂行上の指揮監督の有無③拘束性の有無④代替制の有無⑤報酬の労務対価性⑥機械、器具の負担関係⑦報酬の額⑧専属性の程度等の事情から労働者であるか否かを判断することになります。

したがって、一概には言えませんが、業務委託契約を結んでいたとしても、その人の働き方が、例えば9時から18時の間、特定の場所で業務を行うことや、上司に指示された仕事をこなすことを義務付けられており、仕事の進捗状況に関わらず固定給がもらえるような人は「労働者」と判断される可能性があります(もちろん、従事する業務の内容からこれらの事情が致し方ない場合には労働者と判断されない場合もあります)。

フリーの映画カメラマンが労働者と認定された裁判例もあります。

4. 労働者と認められた場合のリスク

上記の事情から労働者であると認められた場合、以下のようなリスクが生じてきます。

①残業代の支払い

通常業務委託契約の場合、残業代の支払いを行っていないことが多いです。

しかし、労働者と判断された場合、残業を行っていればその分の残業代を最大で3年分支払う必要が出てきます。

そして、この様な場合、業務委託の報酬全額が残業代を計算する上でのベースの金額(基礎賃金)になりますので、残業代が高くなってしまうこともありえます。

②社会保険料の納付

労働者であると判断された場合には、社会保険料を遡及して徴収される可能性があります。

社会保険料は最大で2年まで遡って徴収される可能性がありますので、①の残業代の支払いと合わせてかなり高額になる可能性もあります。

5. まとめ

業務委託契約をしていたが労働者と認定されてしまい、上記の残業代などの支払いを強いられるという案件はしばしばあります。

労働者と認定されるリスクを軽減するためには、契約を締結する際の契約書の内容や、業務に従事する際の権限などを事前に明確にした上で、そのとおりに運用する必要があります。

上記の要件との関係では、仕事の依頼を拒否できる権限や、仕事のやり方について大きな裁量を与えるなどの権限付与や運用方法を検討していく必要があります。

これらの事情は企業によって異なってきますので、業務委託契約について見直しを検討されている方は弁護士までご相談いただくことをおすすめいたします。

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文責:弁護士 加藤貴紀

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。