第1 手続き
1. 就業規則への解雇事由の列挙
就業規則において「解雇の事由」を絶対的記載事項とされ、解雇の事由をあらかじめ明示する必要があります(労基法89条3号)。
また、会社は、労働者に対し労働条件の明示が定められ、労働条件の一項目として解雇の事由の明示も求められています(労基法15条1項労基法規則5条4号)。
2. 解雇予告について
使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません(労基法20条1項)。
3. 解雇権濫用法理について
労契法16条に、解雇権濫用法理が定められました。解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります。
4. 解雇禁止期間
以下の例の場合など、特別の事由がある場合の解雇禁止が定められています。
- 産前産後の休業中・業務上災害による療養中の解雇の禁止(労基19条1項)
- 国籍・信条・社会的身分による不利益取扱としての解雇の禁止(労基法3条)
- 不当労働行為としての解雇の禁止(労組7条1号4号)。
- 雇用機会均等法による解雇の禁止
- 育児・介護休業法による解雇の禁止
- パートタイム労働法による解雇の禁止
- 労働保護立法の違反の申告をしたことを理由とする解雇の禁止(労基法104条2項)
- 個別労働関係紛争促進法による解雇の禁止
- 公益通報をしたことを理由とする解雇の禁止
第2 解雇権濫用法理について – 成績不良社員の解雇
成績不良社員の解雇は、どのような場合に認められるのでしょうか。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。そして、成績不良社員の解雇においては、裁判例等で、長期雇用・長期勤続の実績に照らして単に成績が不良というだけでなく、それが企業経営に支障を生ずるなどして企業からは排斥すべき程度に達していることを要するとされています。
そのため、労働能率、勤務成績不良に関する使用者の客観的な評価だけでなく、労働能力勤務成績向上のために指導注意などを行ったか、人事管理に不適切なところはなかったか、採用時に特段の能力があることを条件としていたか、他に配置する部署が存在したか、本人の雇用を継続することによって、会社業務の正常な遂行に与える影響は大きいか等の諸要素について立証する必要があります。
第3 解雇権濫用法理について – 整理解雇の法理
整理解雇は、どのような場合に認められるのでしょうか。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効となります(労働契約法16条)。そして、整理解雇においては、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務を尽くしたこと、③被解雇者選定の妥当性、④手続きの相当性の4つの要素から判断されるのが通常です。
- 人員削減の必要性については、人員削減の実施が不況、斜陽化、経営不振などによる企業経営上の十分な必要性に基づいていることを立証する必要があります。
- 解雇回避努力義務を尽くしたことについては、人員削減を行う前に、使用者は配転、出向、希望退職の募集等、他の手段によって解雇回避の努力をしたことを立証する必要があります。
- 被解雇者選定の妥当性については、使用者は客観的で合理的な基準を設定し、これを公正に適用して選定したことを立証する必要があります。
- 手続きの相当性については、使用者は労働組合や労働者に対して、整理解雇の必要性とその時期・規模・方法につき、納得を得るために説明を行い、さらにそれらの者と誠意をもって協議したことを立証する必要があります。
第4 最後に
これらの立証を要することから、事前準備の段階から弁護士が関与した方が望ましい場合が多いといえます。