最終更新日:2026年6月8日

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 三井伸容

従業員が病気やけがで長期間働けなくなった場合、会社にはどのような対応が求められるのでしょうか。

「すぐに解雇できるのか」

「給与はどうなるのか」

「復職の判断はどうすればよいのか」

現場の担当者が抱えるこうした疑問は、後のトラブルを防ぐうえで非常に重要なテーマです。

本記事では、休職開始から復職・退職に至るまでの手続きの流れと、給与・社会保険料の取り扱いについて、弁護士の視点から解説します。

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1. 休職とは

休職とは、業務外の傷病などの理由で従業員が労務を提供できない状態になった際、雇用契約を維持したまま、会社がその従業員の就労を免除または禁止する措置です。

本来、雇用契約が続いている以上、従業員には労務を提供する義務があります。この義務を果たせない状態が続けば、解雇の対象となり得ます。

しかし休職制度は、「いきなり解雇するのではなく、一定期間治療に専念させ、回復後に職場復帰するチャンスを与える」という、解雇を猶予する制度として機能しています。裏を返せば、会社が休職期間を通じて十分な配慮をしたにもかかわらず復職が叶わなかった場合、その後の解雇の正当性が認められやすくなるという側面もあります。

なお、休職制度は法律で一律に義務付けられたものではありません。多くの会社では正社員を対象に就業規則で休職を定めていますが、試用期間中の従業員やパート・有期契約社員には適用しない(または正社員より短期間とする)ケースも多く見られます。

自社の就業規則がどのように規定されているかを、まず確認することが重要です。

2. 休職開始時の会社の対応

従業員から「体調不良で休みたい」という申し出があった場合、会社は次の手順で対応を進めていきます。

2.1 就業規則を確認する

従業員から「体調不良で休みたい」という申し出があった場合、会社がまず行うべきことは、自社の就業規則を確認することです。

休職制度の有無や対象となる従業員の範囲、休職に入るための要件(例:1か月以上欠勤が続いた場合など)、休職期間の長さなどは会社ごとに異なります。

なお、就業規則の要件を「1か月以上の欠勤」のように定めている場合、出勤と欠勤を断

続的に繰り返す従業員には要件を満たさないケースも生じます。このような事態に備え、一定期間の欠勤日数が一定基準に達した場合を要件とする、欠勤の中断期間が一定期間内の場合は通算して連続とみなす、労務提供自体が不完全であることも要件とするなどの方法もあります。

「とりあえず休職させる」という判断は避け、就業規則の規定に沿った対応をとることが基本です。

2.2 診断書の提出を求める

休職命令を出すにあたっては、従業員が本当に療養を必要とする状態にあるかどうかを客観的に確認する必要があります。そのため、会社は医師の診断書の提出を求めることができます。診断書は、休職の必要性を判断するための重要な根拠となるだけでなく、トラブル防止にもつながります。

特にメンタルヘルス不調(うつ病など)は外見からは深刻度が判断しづらく、本人が病院を受診していないケースも少なくありません。放置すると症状が悪化するだけでなく、会社の安全配慮義務違反が問われるリスクもあるため、早期に受診を促すことが重要です。

なお、就業規則に診断書提出を義務付ける規定がある場合、受診の必要性が認められる状況であれば、業務命令として受診を求めることもできます。業務命令として提出を求めたにもかかわらず、従業員が提出を拒否した場合の扱いについても、事前に規定を整備しておくことが望ましいです。

2.3 休職命令を発令する

欠勤が一定期間続いたからといって、自動的に休職に移行するわけではありません。休職に関する就業規則の定め方によって解釈の問題は生じますが、通常、会社として正式に「休職命令」を発令することが必要となる場合が多いです。

休職命令は、口頭ではなく書面またはメール等の記録が残る方法で通知することが必要です。命令書には、①休職事由、②休職開始日(起算日)、③休職期間、④休職中の報告義務、⑤給与の取り扱い(無給の場合はその旨)、⑥復職できない場合の取り扱いなどを明記しておくことで、後のトラブルを防ぐことができます。

また、傷病手当金や社会保険料の扱いについても、命令発令時に従業員へ説明しておくことが望ましいです。

命令を出すタイミングが遅れると、休職期間のカウントが後ろにずれ込み、その分だけ復職・退職の判断も先延ばしになります。適切なタイミングで命令を発令し、休職開始日を明確にしておくことが重要です。

3. 休職中の会社の対応

休職が開始された後も、会社は放置することなく、従業員の状況を定期的に把握しましょう。休職期間の満了時に「復職できるかどうか」を判断するためには、療養中の経過を継続的に確認しておく必要があります。

具体的には、本人の負担になりすぎないように配慮しつつ、1~2か月に1回程度を目安に症状の推移を確認する方法が一般的です。就業規則や休職命令書に定期報告の義務を明記しておくとよいでしょう。

また、必要に応じて、従業員の同意を得た上で主治医から直接状況を聞き取ることも考えられます。

なお、連絡の頻度や方法については、休職者の体調に配慮した検討が必要です。特にメンタルヘルス不調の場合、電話や面談での連絡が心理的な負担になることがあります。メールや郵送での報告を認めるなど、柔軟な対応を検討しましょう。

休職開始直後なのか、復職前の準備期間なのかといった休職期間中のどの時点なのかによっても個別の検討が必要ですが、連絡の際は具体的な業務の話題を避け、あくまで療養の経過確認にとどめるといった配慮も必要です。

こうした継続的な関与は、単なる確認作業ではなく、復職判断の精度を高め、後のトラブルを防ぐための重要なプロセスです。

4. 復職を判断する際の会社の対応

休職期間の満了が近づいたら、会社は復職の可否を判断し、その結果に応じた手続きを進める必要があります。

4.1 復職の可否を判断

休職期間の満了が近づいた際、会社が行うべき最も重要な判断が「復職を認めるかどうか」です。

復職の判断基準は、原則として「休職前の通常業務をこなせる程度に回復しているか」です。ただし、当初は軽い業務から始めれば、近い将来に通常業務に戻れる見込みがある場合には、会社側が可能な範囲で配慮(軽減業務の提供など)を行う必要があるとされています。

また、特に職種や業務内容の限定がない従業員の場合は、他の業務への配置転換ができないかどうかも検討しなければなりません。

復職の判断は、従業員が提出した診断書(主治医の意見)だけでなく、産業医の意見、本人との面談内容などを総合的に踏まえて行う必要があります。主治医の診断に疑問がある場合は、会社が指定する医師の受診を命じるか、主治医との直接面談を求めることが有効です。

こうした手続きを円滑に進めるためにも、就業規則に協力義務を明記しておくことが望ましいです。

なお、復職が認められた場合も、最初から元の業務・フルタイム勤務に戻すのではなく、時短勤務や負担の軽い業務から段階的に復帰させる配慮が、特にメンタルヘルス不調の場合には再発防止の観点から重要です。復職後の支援体制についても、あらかじめ検討しておきましょう。

4.2 復職できない場合は自然退職・解雇を検討

休職期間が満了しても回復が見込めず、復職が困難と判断された場合は、就業規則の定めに従って雇用契約の終了(自然退職や解雇)を検討することになります。

実務上は、「休職期間満了時に復職できない場合は自然退職とする」という規定を設けておくことが一般的です。この場合、会社による解雇という形ではなく、当然に退職の効果が生じます。一方、このような規定がない場合や「復職できない場合は解雇する」と定めている場合は、別途解雇の手続きが必要です。

なお、法的には「自然退職」も解雇と同様に適法性が問われる点に注意が必要です。復職可否の判断に時間を要する場合は、休職期間を一定期間延長した上で判断する措置も検討すべきです。

また、傷病の原因が業務上のけがや疾病(労災)に当たる可能性がある場合、労働基準法19条 により労災での療養期間中およびその後30日間は解雇が禁止されていることから、解雇や自然退職処理が無効となるリスクがあります。

うつ病などは一見すると私傷病(業務外の原因によるけがや病気)のように見えても、長時間労働やハラスメントが背景にあれば労災と認定される可能性があります。私傷病として対応していても、実際は労災だと認定されるリスクがないか、初動の段階でしっかり確認しておくことが必要です。

5. 休職中の給与や手当

ここでは、休職中の給与や各種手当について、会社として押さえておくべきポイントを解説します。

5.1 休職中の給与

労働法には「ノーワーク・ノーペイの原則」があります。労務の提供がない期間については、会社側の都合や帰責事由によるものでない限り、会社は賃金を支払う法的義務を負いません。そのため、就業規則に特段の定めがない限り、休職期間中は無給としても違法ではありません。

一方で、福利厚生の観点から「一定期間は基本給の〇%を支給する」といった設計も可能です。どのような扱いにするにせよ、就業規則に明記しておくことがトラブル防止の観点から必要です。

5.2 休職中の傷病手当

会社から給与が支払われない期間中、健康保険に加入している従業員は「傷病手当金」を申請することができます。支給額はおおむね給与の3分の2相当で、最長1年6か月間受け取ることが可能です。無給であっても、この制度によって従業員の生活がある程度保障される仕組みになっています。

注意が必要なのは、会社が一定額の給与を支払い続けている場合です。その場合、給与額が傷病手当金の額を上回っていれば手当金は支給されず、給与額が傷病手当金の額を下回っていれば差額分のみが支給される仕組みになっています。給与支払いの有無・金額の設計は、傷病手当金との関係を踏まえて検討することが重要です。

会社側としては、従業員がスムーズに申請できるよう、手続きの案内や証明書類の作成といったサポートを行うことが一般的です。

5.3 休職中の社会保険料

給与が発生しない期間でも、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は免除されません。会社が会社負担分・従業員負担分の両方を一旦立て替えて納付するため、従業員負担分については本人から回収する必要があります。

休職が長期化すると未回収額が数十万円に達するケースもあるため、休職開始時に徴収方法を本人と合意しておくことが重要です。

また、社会保険料は制度が複雑であり、内容を十分に把握していない従業員も少なくありません。休職命令を発令する際に、社会保険料の扱いについてもあわせて丁寧に説明しておくことが、トラブル防止につながります。

6. よくあるご質問

ここでは、休職制度における給与の取り扱いや会社側の手続きについて、よくいただくご質問にお答えします。

6.1 休職期間中の給与を支給する必要がある?

原則として、法律上、休職期間中の給与を支払う義務はありません。労務の提供がない以上、ノーワーク・ノーペイの原則が適用されるためです。

ただし、就業規則で「休職開始から○か月は基本給の○%を支給する」と定めている場合は、その規定に従う必要があります。また、後に従業員側から会社側の都合や帰責事由によるものだと主張されるリスクがないか念のため確認が必要です。

6.2 休職期間中の社会保険料(従業員負担分)はどうする?

休職期間中の社会保険料(従業員負担分)は会社が立て替えているため、本人に請求できます。

後になって「払えない」というトラブルを防ぐためにも、休職開始時に徴収方法(振込口座・期限など)を記載した書面を取り交わすことをおすすめします。

6.3 休職を繰り返す社員を発生させないためには?

就業規則に「通算規定(クーリング期間)」を設けることが有効です。

一度復職しても、短期間(例:3か月以内)に同じ理由で再度欠勤した場合、前後の期間を合算して休職期間をカウントする仕組みです。安易な復職と再欠勤の繰り返しを防ぐ効果があります。

また、復職後の段階的な職場復帰(時短勤務や業務軽減)を制度として定めておくことも、再発・再休職のリスクを下げるうえで有効な場合があります。

6.4 休職と欠勤の違いは何?

欠勤は、労働の義務があるにもかかわらず自己都合で休んでいる「契約上の義務違反」に近い状態です。これに対して休職は、会社が「今は働かなくていい」と就労義務を免除または禁止している特別な状態です。

一般的には、一定期間の欠勤が続いた後に休職へ移行するという流れで休職制度が設計されている場合が多いです。

6.5 休職と有給休暇の違いは何?

有給休暇は、労働基準法39条 で定められた労働者の権利であり、取得しても給与は支払われます。休職は、法律上の義務ではなく会社が任意で設ける制度であり、通常は無給です。

私傷病で休む場合、従業員本人の希望がある場合には、まず残りの有給休暇を使い切り、それ以降は欠勤を経て休職へ移行するケース実務上は多いです。

なお、有給休暇の付与日数の算定基礎となる勤続期間については、休職期間中も含めなければなりません(労働基準法39条 )。これは法律のルールであり、就業規則でも変更できません。

ただ、有給休暇が発生する要件となる出勤率を算出する場面では、私傷病休職は通常出勤扱いとはならず、出勤日数としてカウントされません。

6.6 私傷病と労災の違いは何?

私傷病は仕事とは関係のない病気やけが、労災は仕事や通勤が原因で生じたものであるとして一定の要件を満たす傷病です。

労災の場合は、労働基準法19条 により療養期間中およびその後30日間は解雇が禁止されるなど、強力な保護が与えられています。なお、いわゆる通勤災害の場合はこの条文の適用はありません。

また、うつ病などは一見私傷病に見えても、長時間労働やハラスメントが背景にあれば労災と認定される可能性があるため、初動段階で労災認定のリスクがないか確認することが重要です。

7. 当事務所でサポートできること

労働者の欠勤・休職の場面で、当事務所では、会社側で対応が必要な次の事項に関するご相談対応、アドバイスなどのサポートや代理人としての対応を行うことが可能です。

  • 休職の要否を含む、体調不良者への対応に関するご相談対応
  • 休職規定を含む就業規則の見直し
  • 復職に向けた対応、復職可否の判断に関するご相談対応
  • 紛争化した場合の交渉・労働審判・訴訟等の代理人対応

休職対応に少しでも不安を感じたら、トラブルが大きくなる前に、ぜひお早めにご相談ください。

8. まとめ:悩んだら弁護士に相談

休職制度は、従業員に療養と復職の機会を与える温情的な側面を持ちながらも、運用を誤ると「不当な退職」として訴訟リスクに発展する可能性もある、難易度の高い制度です。

特にメンタルヘルス不調を理由とする休職・復職の判断は、医学的な見地と法的な考慮の両方が求められます。

少しでも不安を感じられたら、トラブルが大きくなる前に、ぜひ企業法務に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

当事務所では、多数の企業様より顧問契約を締結いただいており、休職対応に関するサポートも常時行っております。休職の件でお悩みの企業様は、是非お気軽にお問い合わせください。

監修者
よつば総合法律事務所 弁護士 三井伸容

契約書チェックから紛争対応まで幅広く企業法務分野を担当し、中でも企業側の立場での労使紛争対応を中心に取り扱っています。企業内弁護士の経験を生かし、相談しやすい身近なパートナーとして企業を支えます。千葉県弁護士会所属(登録番号47463)。

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