労働組合との合意文書はよくよく確認を!

労働組合を有する会社においては、賞与の支給前に労働組合より賞与の要求交渉が行われているかと思います。

大手航空会社が労働組合に対して賞与0回答を行う等の報道もありましたが、新型コロナウイルスが猛威を振るう昨今の状況において、賞与として何か月分を支給するかギリギリの交渉が行われているのではないでしょうか。

本日は、労働組合との合意文書についてはよくよく確認を行う必要があるという事例として、東京都労働委員会より令和3年4月8日に報道発表された、協定書で定めらえた賞与の文言が事後的に争いになった事例をご紹介します。

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事案の概要

①協定書の締結(平成29年度冬季賞与について)

会社と労働組合は、平成30年7月7日、組合員Xの平成29年度冬季賞与について下記を内容とする協定書(以下単に「協定書」)を取り交わしました。

平成29年度の夏季賞与17万円

会社設立30周年記念支給等の3万5千円

5万円を上乗せ

②協定書締結後の交渉(平成30年度夏季賞与について)

会社は、協定書を締結した約1週間後の、平成30年8月3日の団体交渉において、組合員Xの平成30年度夏季賞与に関し、前回(平成29年度冬季賞与)の金額と同額ではなく、前年度同期(平成29年度の夏季)と同じ金額という回答を行いました。

通常の賞与分(17万円)に上乗せされた金額は、「一度限りの解決金である」ため、賞与の基準にはならないという主張です。

労働組合の主張

労働組合は、上乗せ分を含めた金額が組合員Xの平成29年度冬季賞与となるため、この金額が、以降の賞与(平成30年度夏季賞与以降)の支給額を算出する基準となると主張しました。

そのうえで、組合員Xの平成30年度夏季賞与に関する会社の回答が、支配介入・不利益取扱い・不誠実な団体交渉という不当労働行為に該当するとして、東京都労働委員会に対し救済申立てを行いました。

東京都労働委員会の判断

  • 平成29年度冬季賞与の協定書
    協定書に賞与5万円を上乗せすることは記載されているが、翌年度以降の賞与の算出については記載がない。協定書の文言から、上乗せ分が以降の賞与の支給額を算出する基準となるとの組合の主張を認めることはできない。
  • 協定書の締結に至る経緯
    労働組合は、上乗せ分も含めた賞与額を以降の賞与の支給額を算出する基準とすることを求めていた。会社も組合の要求内容に理解を示し、持ち帰り検討するとしていた。しかし、会社が、団体交渉において組合の要求内容に合意を示した事実は認められない。協定書には、翌年度以降の賞与の算出について何らの記載もされていない。協定書において、上乗せ分が平成30年度以降の賞与の支給額を算出する基準となる賞与であることについての合意があったということはできない。
  • よって、平成30年度夏季賞与に関する会社の回答は、支配介入・不利益取扱い・不誠実な団体交渉にあたらないと判断しました。

労働組合が主張する不当労働行為とは?

そもそも労働組合が言う支配介入・不利益取扱い・不誠実な団体交渉という不当労働行為に該当するとの主張とはどういった行為なのでしょうか?
労働組合法は、会社は労働組合と対等な交渉を行うよう労働組合を尊重して団体交渉を行うため、支配介入・不利益取扱い・不誠実な団体交渉という不当労働行為を禁止しました。不当労働行為に該当する判断がなされると、労働委員会が救済命令を発することになります。
本件では、会社の平成30年度夏季賞与に関する回答が、組合との妥結の趣旨を事後的に変える支配介入に当たり、また、Xが組合員であることを理由とした不利益取扱いや、不誠実な団体交渉に当たると主張された事案でした。

判断のポイント:協定書の文言

会社と労働組合の合意内容の問題が発生した場合、取り交わされた協定書の文言をどのように解釈するかが解決のための重要なポイントとなります。

本件でも、平成29年度冬季賞与の協定書が検討されました。そして、協定書には、翌年度以降の賞与の算出について何らの記載もされていないと認定されました、その結果、協定書の文言から、上乗せ分が以降の賞与の支給額を算出する基準となるとの組合の主張を認めることはできないとされました。

最後に

このように、ようやく労働組合と合意を行うことができて協定書を締結できたと思ったら、次の交渉で予想だにしない主張を受けることが現にあり得るのです。

もし協定書の文言が異なっていたら、全く異なった判断になっていた可能性がある事案でした。会社が労働組合と協定を締結するにあたり協定書の文言がいかに大事かということを実感させられます。

労働組合との協定書締結においては内容を十分にご検討いただき、少しでも疑問な点があればお気軽に弁護士までご相談ください。

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以上

文責:弁護士 根來真一郎

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。