取引先が倒産しましたが債権回収できますか?法人破産における債権回収

「取引先が倒産してしまった」「今後の債権回収はどうなるのか?」といったご相談を多くいただきます。

事業を行うにあたっては、取引先倒産のリスクは常に存在します。取引先倒産に伴う債権回収ができるかは、有する権利の内容によって異なります。

そもそも「取引先倒産で何が起こるのか?」と疑問に思われている方もいらっしゃると思います。当事務所の以前のブログで、大友弁護士が法人破産の特徴・法人破産の手続きの流れを分かりやすく解説していますので、是非一度ご確認ください。

破産における大前提

破産における大前提は、債権者に対する公平な分配です。ただし、全ての債権者が公平に扱われるわけではありません。

破産法は「財団債権」と「破産債権」を規定し、異なる取扱いを認めました。また、破産法は「別除権」「取戻権」という権利も規定しています。

財団債権

財団債権とは、破産手続によらないで破産財団から随時弁済を受けることができる債権をいいます(破産法2条7項)。

財団債権は配当を待たずに破産手続外で随時回収することができ、破産債権よりも優先されることとなります。

破産管財人報酬、従業員の給料等の破産手続開始前3カ月分等が具体例です。

破産債権

破産債権とは、破産者に対し破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であって、財団債権に該当しないものをいいます(破産法2条5項)。

破産債権は、財団債権のように随時回収することができず、破産手続における配当手続を待つこととなります。

実は、破産債権内には優先関係があり、
優先的破産債権 > 一般の破産債権 > 劣後的破産債権 > 約定劣後破産債権
の順で優先されます。

優先的破産債権とは、

破産財団に属する財産につき一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権をいいます(破産法98条1項)。

従業員の給料のうち、財団債権となる破産手続開始前3カ月分を除いた部分等が具体例です。

一般の破産債権とは、

読んで字のごとく、標準の破産債権です。

貸付金債権や、売掛金債権が具体例です。

劣後的破産債権とは、

一般の破産債権に劣後する債権をいいます(破産法99条1項)。

破産手続開始後の利息の請求権等が具体例です。

約定劣後破産債権とは、

劣後的破産債権よりさらに劣後することを当事者で約定した債権をいいます(破産法99条2項)。

劣後ローン等が具体例です。

別除権

別除権とは、破産手続開始の時において、破産財団に属する財産につき特別の先取特権、質権又は抵当権を有する者が、これらの権利の目的である財産について、破産手続きによらないで行使することができる権利をいいます(破産法2条9項)。

支払いを担保するために抵当権を設定している場合が具体例です。別除権の行使として、抵当権を実行して優先的に弁済を受けることができます。

取戻権

取戻権とは、破産者に属さない財産が破産財団にあり、破産者に占有権限がない場合、これを取り戻す権利をいいます(破産法62条)。

破産者が何らかの理由でたまたま占有していたため、破産残団として管理されてしまっているような際に、真の権利者が財産を取り戻す権利です。

法人破産における債権回収

破産法が定める権利は上記のとおりです。取引先が破産することとなった場合、持っている権利がどのような権利が確認し、対応を行っていくこととなります。

今回は難しい言葉が並んでしまいましたが、取引先が破産することとなった場合、早期の債権回収の実行が何より大事です。また、契約の際に保証や担保をきちんと取っておくことが重要になってきます。

ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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文責:弁護士 根來真一郎

※上記記事は、本記事作成時点における法律・裁判例等に基づくものとなります。また、本記事の作成者の私見等を多分に含むものであり、内容の正確性を必ずしも保証するものではありませんので、ご了承ください。